スーパースポーツ選手権で日本人初のチャンピオン、そして最高峰スーパーバイクへ
今季からスーパースポーツにステップアップを果たした岡谷は1999年生まれの23歳。ポケバイ、ミニバイクを経て2014年にロードレースにステップアップ。2018年には国内最高峰の全日本ロードレース選手権J-GP3クラスに参戦すると開幕戦でいきなりデビューウィンを達成。センセーショナルなデビューウィンを含む3勝をマークしランキング2位を獲得し、ルーキーオブザイヤーにも輝いた。
翌年岡谷は主戦場を海外に求めた。スーパーバイク世界選手権と併開催している2つ下のカテゴリーであるFIMスーパーバイク世界選手権World Supersport300クラスに日本人として初の参戦を果たした。
ルーキーイヤーから一貫してカワサキのNinja 400を駆り、2年目には同クラスで日本人初のポールポジションを獲得。優勝も果たすなど同カテゴリーで記録ずくめの活躍を見せた。
3年目には年間ランキング5位を獲得、4年目となる2022年シーズンは怪我の影響で2戦を欠場するも年間ランキング7位でシーズンを終えた。
日本人未開の地であったWorld Supersport300クラスで道を切り拓いた岡谷は2023年シーズンから一つ上のカテゴリーであるスーパースポーツ世界選手権にステップアップする。
Kawasaki ProDina Racingからの参戦となる岡谷は、拠点をスペインに移し2023年シーズンを迎える。シーズン前に行われた数少ないテストでも岡谷は転倒することなく、順当にテストプログラムをこなしデータ収集に努めている。スーパースポーツデビュー戦に向けて視界良好と言っていいだろう。
目標はもちろんチャンピオン獲得、そして最も上位のカテゴリーであるスーパーバイク世界選手権にステップアップし、数多くの才能ある日本人ライダーでも獲得できなかったチャンピオン獲得を狙っている。
シーズン途中からの参戦のため、来年に繋がる走りを見せて欲しいところだ。
天才ノリックの血を受け継ぐ阿部真生騎が世界戦デビュー
ロードレースファンにとって特別な存在「ノリック」。ノリックこと阿部典史がこの世を去って早16年となる今年、ノリックの忘れ形見である阿部真生騎がスーパースポーツ世界選手権にデビューする。
3歳の頃に父親を交通事故で無くした阿部は幼少期にバイクに乗ることはなく、本格的にバイクに乗るようになったのは13歳の頃だ。周りは幼い頃からポケバイやミニバイクの経験者ばかり、遅れを取り戻そうと、阿部は高校に進学せずバイクの世界に飛び込み腕を磨いていった。
ST600の地方選を制した阿部は、2021年から全日本ロードレースのST600クラスをメインに戦っている。
様々なカテゴリーを経験したとはいえ、バイクに乗り始めてわずか5年で世界選手権に参戦が決定したときは、驚きを持って報じられた。
世界への挑戦を意識し始めたきっかけは、ヴァレンティーノ・ロッシが主催するヤマハVR46マスターキャンプへの参加が大きな要因だ。ヤマハVR46マスターキャンプとは、ロードレースの伝説であるロッシが若手ライダーの育成を目的とする施設に1週間参加するプログラム。
プログラムをこなし、父に憧れたスーパースターのロッシとの対面を果たすなど世界との距離を縮めていった阿部は2023年からスーパースポーツ世界選手権への参戦を発表した。
この決定にはキャンプのプログラムでの阿部のダートトラックの速さが関係者の目に留まったからだという。バランス感覚、バイクの正しい扱い方が求められるダートは、ロードレースを戦っているライダーもトレーニングに取り入れている。そんなダートトラックでの阿部の速さはトレーニングを行っているライダーに比べても最も速いという。
さらに、ピレリタイヤへの合わせ込みも問題なく解決できたというところも期待せずにはいられない要素だ。
今年はVFT Racing Ymahaから参戦。2022年の12月からスペインに拠点を移し、精力的にトレーニングに励んでいる。
ともに海外に拠点を移し、着実に準備を進めてきた岡谷と阿部。2人の参戦により、これまで以上にスーパースポーツというカテゴリーに注目が集まりそうだ。岡谷、阿部が参戦するスーパースポーツ世界選手権第3戦TTアッセンは、2023年4月21日から23日にかけて行われる。
レポート:河村大志