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現在、日本で最もシェアの高いオフロード型電動バイクであるサーロン。そのミドルクラスのウルトラビー、そして以前より好評のライトビーを試乗した

あるべき姿にとらわれる必要はない

スクランブラー、レゴラリータ。オフロードバイクがそんな名前で呼ばれていた時代から時を経て、2020年台のオフロードバイクは先鋭化し、ほとんどひとつの方向にまとまった感がある。セミダブルクレードルのフレームに、水冷エンジンを抱え、外装はシュラウドとフラットなシート。サスペンションもほとんど同じ形をしていて、オフロードバイクとしての「あるべき姿」が定まっている。特にセロー250が新車カタログからなくなってしまった今、トレールバイクも同じ方向を向いているように思う。

無限とホンダで進めてきたCRFエレクトリックは、既存のCRFシリーズの基本構成を踏襲しつつ、いかにエンジン車に追いつき、さらには追い越せるかを目標としているように見える。モーターのトルクはすでにエンジンを上回ることは難しくなく、馬力の面でもスペインのベンチャー企業が生み出したスタークは80馬力超えを公称しているほど。これらが現代のモトクロッサーにとって代わられる日を想像する人も少なくないだろう。

一方でせっかく電動で新たなメリットを享受できるのだから、新しい形を模索するべきだという姿勢を見せる企業も少なくない。早くから電動オフロードバイクを市販しはじめたサーロンも、そのひとつだ。日本にもすでにライトビーという車種が普及しているが、その乗り味や軽さ、構成部品はどちらかというとMTBに近く、スキルのあるライダーが乗るとまるでBMXのような動きを見せる。WEX(ウィークエンドクロスカントリー。JNCCのアマチュア版)にもこのライトビーが多く参戦しており、そのいかにも軽そうな動きに魅力されたのか、どんどん参加者を増やしている。

画像: あるべき姿にとらわれる必要はない

SUR-RON
ULTRA BEE
¥1,043,900(税込み・競技版)
¥1,098,900(税込み・公道版)

今回試乗したのは、新たに日本に上陸したウルトラビー。エンジン車の250クラスと同等のストームビーと、ライトビーの中間に位置するミドルクラスだ。0-50km/hまでの到達時間2.3秒という凄まじい加速力に、140kmという航続距離。エンジン車に親しんできた化石燃料時代のジャーナリストとして、このスペックには舌を巻く。

ミドルクラス、それでも車重85kg

車体は85kgしかない。YZ85は73kgで、YZ125は93kgのスペック値なのだが、重心バランスが優れているせいか、YZ85と同等の軽さに感じる。

軽さが生む全能感というか、なんでもできてしまいそう(とかいって、スキルが無い自分には実際にはたいしたことはできないんだけど)な感触は、YZ85を遙かに上回る。というより、あるべき姿にとらわれる必要はない、と書いたとおりでエンジン車とはまるで別の乗り物なのだと感じた。

画像1: ミドルクラス、それでも車重85kg

反面、トルクはエンジン車を上回ると書いたばかりで恐縮だけど、実際に乗ってみるとコーナリングでほぼゼロスピードまで落ち込んだところに、半クラッチを当てて立ち上がっていくようなエンジンバイク的乗り方には向いていない。特に僕はコーナリングが下手で、つい立ち上がりのエンジンパワーに頼ってしまうようなところがあるから、エンジン車よりもだいぶ遅くしか走れないな、と当初感じた。だが、軽さからくるハンドリングのよさで、ゼロスピードまで落ちていたコーナー入り口で少しずつコーナースピードを上げていくことができるようになってくると楽しくなってくる。こればかり乗っていたら、たぶんコーナリングがだいぶうまくなるんじゃないかと思ったほどだ。無駄にスピードを落とさず、遠心力を感じながらグルンと弧を描く楽しさが、わりと早い内に感じられるようになった。

サスペンションはオートバイに乗り慣れた身からすると、とてつもなくソフトに感じる。こんなもんで大丈夫なんだろうか、と不安になるほどだけど、車体が軽いからまったく問題にならなかった。85kgという車重に必要なサスというのは、こういうものなのだとあらためて思い知らされる。実際にソフトだから足で押してやるとオートバイにくらべて大きく車体が動くのだが、これこそがウルトラビーや、ライトビーの最大の特徴なのではないかと思った。オートバイを遙かに超えてボディアクションでサスを動かすことができる。よくライテク記事で「リア荷重でサスペンションを縮ませる」と書いてある時に、そんなのほとんど沈まないじゃないかと思ったことはないだろうか。サーロンならば、ちょっと意識しただけで沈むし、そのリアクションがとても素直だ。車体が軽いというのはそういうことなのだ。

画像2: ミドルクラス、それでも車重85kg

この日カメラマンをしてくれた友人は、僕よりもよっぽど乗り物が得意で自宅に自転車用のパンプトラックを造成してしまうほど。はじめてのモトクロスビレッジでタイムアタックをして、余裕で1分切ることができるセンスフルな男なのだけれど、彼の乗り方には特にマッチしているなと思った。ガガガっとブレーキをかけて、アクセルを豪快にあけてスライドしながら立ち上がっていくようなワイルドな乗り方とは無縁のバイクなのだ。ジャンプもオリンピックで見るBMXよろしく、向こう側の斜面にぴたっと走行ベクトルをあわせて、プッシュして加速するのが気持ちよくて楽しくて、スマートだ。僕にはできないけど。

今回試乗したコースはMTBダウンヒルで全日本チャンピオンの経歴をもち、JNCCでシングルゼッケンをつける内嶋亮が運営しているダイナコパーク。モトクロスコースと言うよりは、BMXパークに近いような構成をしている。カメラマンの友人は「自転車向けにパンプトラックがあったら、もっと楽しめたと思う。そのくらい僕らの知ってるオートバイとは違うよ。路面のうねりにぴたっとあわせて走ることが、すごく気持ちよく決まる」と言う。

ライトビーにも改めて乗ってみた

試乗会場にはストームビー、ライトビーもあったので改めてライトビーにも試乗させていただいた。マーケットに出始めてすぐの印象は、あまりにオートバイと違う乗り味にどう使えばいいのだろう? と思っていたけれど、これは段々日本のサーロンファンによって解決されている。どう乗るのが楽しいのか、SURRON Test Ride Crewの原田氏に聞いてみよう。

画像: バイクショップJon itの代表、原田氏。はやいうちからサーロンの楽しさに目をつけ、今ではサーロンの伝道師である

バイクショップJon itの代表、原田氏。はやいうちからサーロンの楽しさに目をつけ、今ではサーロンの伝道師である

「まず、音がないことって素晴らしいんです。僕らWEXに出たりしているんですが、サーロン同士だとバトル中に会話ができちゃうんですよ。ふざけながら友達と競っていると、ホントにバイクと違う楽しさに驚くと思います。それと、とにかく軽さは武器ですね。バイクではできないことがたくさんあります。たとえばちょっとしたきっかけを使ってジャンプした先に石ころを発見したとするじゃないですか。バイクなら間に合わないけど、サーロンだと空中で誰にでも車体をすっと寝かせることができ、回避できるんです。どんどん仲間が増えているし、オートバイと競っても楽しめることが理解されてきましたね。

あと、ウッズはエンジン車とはまるで別モノですよ? エンデューロバイクではとてもまわってこれないような難しいウッズも、こいつらだと笑って帰って来れます。つまりトレイルがイージーになるし、それがとても楽しいんです」

画像: ライトビーにも改めて乗ってみた

というわけで、ダマされた気になってライトビーでかなり難しめのウッズに入ってみた。原田氏のおっしゃる通りで、これはもう電動オフロードバイクにしかできない遊びだと感じた。エンジン車より速いとか、そういう次元では語れないものだ。軽さもある、穏やかな出力特性のおかげもある。細かい切り返しもなんということはないし、木の根の連続するような難しいセクションも、斜面にあわせてタイヤを転がすことを意識するだけで、すっと走破できる。たぶんエンジン車で入っていったら、帰ってこれないだろうし、路面もかっぽじって傷めてしまうはず。電動オフロードバイクが、こうもトレイルと相性がいいのかと驚いた。E-MTBでも、もちろん自転車でも、こうはいかない。

電動オフロードバイクは、クリーンだから自然との相性がいい。そんなことは言われなくてもわかる。でも、それ以前に純粋に乗り物として自然の地形と相性がよいのだ。トレイルを走るなら、小型からミドルサイズの電動オフロードバイク、これを疑う余地はなさそうだ。

スタイリッシュで速いライディングノウハウ。新しい乗り方を模索する乗り物

画像1: スタイリッシュで速いライディングノウハウ。新しい乗り方を模索する乗り物

特徴的なリアの足回りをみてみよう。チェーンラインがエンジン車と逆側に設定されているのは、モーターの駆動をハーレーのようにプライマリ・セカンダリギヤを介して減速しているからだと推察される。電動バイクはエンジン車よりもギヤ比を低くする必要があり、プライマリ・セカンダリギヤを介さずに設計すると巨大なスプロケットを装着することになってしまうのだが、うまくそれを回避したようだ。このメカニズムは、ライトビーにも見られるもの。

画像2: スタイリッシュで速いライディングノウハウ。新しい乗り方を模索する乗り物

また、ウルトラビーはセカンダリギヤがスイングアームピボットと同軸の設計になっている。同軸レイアウトはエンジン車でも何度か例があり、アンチスクワット効果によるパワーロスを嫌ったものだったが、エンジン車の場合はあまりに通常のレイアウトと動きが違うことにライダー側が対応できず、現在はほとんど採用されていない。

19インチの細いタイヤを採用したこと、そして同軸ピボットを採用することでモーターの出力を出来る限りパワーロスなく路面に伝えることで、電費をなるべく向上するような狙いもあるのだろうが、このことによって生まれているエンジン車と違ったサスペンションフィーリングは、前述したとおり好印象に感じる。これはエンジン車とは違った乗り方をするものなのだと。

シート、シュラウドにかけてはとてもスリム。むしろ最初はニーグリップの感覚にとまどうほどだった。すぐに慣れるけど、もしかするとニーグリップをあまり意識しないほうがいいのかもしれないなとも感じた。

ダウンヒルチャンピオン経験者でありJNCCトップランカーの内嶋亮によれば「自転車は見てわかるとおり挟み込むタンクがないので、ニーグリップできないし、しません。僕はダウンヒルでもシューズとペダルを固定するビンディングを使わずにフラットペダルを使うため、足の裏とハンドルしかマシンに接していないんです。いかにマシンの中心を捉え続けるかどうかが大事なんですよ。サドルを内ももで触ったりして、ある程度ニーグリップらしいことはするのですが、根本的にその行為はバイクのニーグリップとは違いますね。そもそもニーグリップは、加速時やギャップで必要なものなので、自転車であまり必要にはならないんですが、そういう乗り方に慣れきっている僕は、オートバイでもあまりニーグリップをしない乗り方をしています。MTBやBMXライクな乗り方なんです。

この10年くらい、イーライ・トマックが出現してからだと思うのですが、AMAライダーの乗り方もBMXやMTBに近いものになっていると思います。フロントをあげたままギャップをキャンセルしたりしますよね。あんな乗り方は、昔はバイクではできないものでした。こういう動きをオートバイでやろうとするのはとても難しいんです。車体が重いので、エンジンとボディアクションをうまく使う必要がある。ところが、ライトビーやウルトラビーは車体が軽いので自転車的な乗り方がやりやすいんです。少しうまい人なら、ボディアクションだけでこなせるようになりますね」とのこと。FMXライダーのアクセル・ホッジスのようなスタイリッシュなライディングも、BMXやMTBの乗り方に近い。可能な限りリアタイヤを路面に接地させることで、スムーズかつ無駄のない加速をするだけでなくカッコイイ。レースだけでなく、フリーライド的な要素もそこにはある。もちろん、自分はそんな乗り方には遠く及ばないのだけれど、いつかひょいっとウィールタップを何気なしに織り交ぜたりできるようになったら、ステキだろうなぁ、と思う。

画像: 無理矢理軸をずらそうとしてみたりする。もしかしてこれなら、ジャンプでひねれるのか?(れない……)

無理矢理軸をずらそうとしてみたりする。もしかしてこれなら、ジャンプでひねれるのか?(れない……)

ウッズでのあまりに高い走破性や、トレイルとの相性のよさ、そしてこのBMX/MTBライクな性格。電動バイクは自転車寄りの乗り物だというつもりはないけれど、自転車のような楽しみをミックスできる乗り物だということはできる。もしかしたら、ウルトラビーやライトビーでは、さらに乗り込んでいくことで今までに見えなかったオフロードライディングが見えてくる……かもしれない。

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