2023年6月2日〜4日にイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリでSBK(スーパーバイク世界選手権)2023年シーズンの第5戦が行われた。アルバロ・バウティスタ(ARUBA.IT RACING)は今季12レース中11レースで優勝し、チャンピオンシップ連覇に向けて独走体制を築いている。ドゥカティのお膝元であるイタリアのミサノで行われた第5戦でもイタリアンメーカーは他を圧倒する強さをみせた。

話題が豊富な第5戦

ライダーラインナップの変更やトップライダーの移籍など、第5戦を前にアナウンスが続いたSBK。まずライダーラインナップの変更に関しては、スーパーバイクでは久々の日本人ライダーの参戦がアナウンスされた。

第4戦カタルーニャでクラッシュし、頭部損傷と脳震盪の影響で療養しているエリック・グラナドの代役として、所属チームのPETRONAS MIE Racing Honda Teamは水野涼の起用を発表した。

画像: 今季は全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにAstemo Honda Dream SI Racingから参戦している水野涼。

今季は全日本ロードレース選手権JSB1000クラスにAstemo Honda Dream SI Racingから参戦している水野涼。

水野はBSB(ブリティッシュスーパーバイク選手権)での挑戦を終え、今年から全日本ロードレース選手権の最高峰クラスであるJSB1000に復帰。全日本はもちろん、BSBでの経験もある水野だが、SBKは初参戦となる。ペトロナスカラーのホンダCBR1000RR-Rを駆ることになった水野は今大会で世界最高峰のレースにデビューする。

また、Kawasaki Puccetti Racingから参戦していたトム・サイクスがチームを離脱。Puccettiとの契約が終了したサイクスは古巣であるBMWに起源付きで戻ることになった。第3戦オランダでROKiT BMW Motorrad WorldSBK Teamのマイケル・ファン・デル・マークが転倒により左大腿骨を骨折。ファン・デル・マークが復帰するまでの間、サイクスがBMW M1000RRをライディングすることになった。

また、Kawasaki Puccetti Racingはサイクスの後任に同チームに所属経験のあるティト・ラバトの起用を発表。現在MotoEを主戦場にしているラバトだが、今シーズンのSBKの残り全てのレースを同チームから参戦する。

そして来季に関するビッグニュースが飛び込んできた。なんとPATA YAMAHA PROMETEON WORLDSBKのトプラク・ラズガットリオグルがBMWへの移籍を発表したのだ。

画像: ラズガットリオグルのBMWへの移籍は驚きを持って伝えられた。

ラズガットリオグルのBMWへの移籍は驚きを持って伝えられた。

MotoGPへの転向も噂されていただけに、今回の発表は驚きをもって伝えられた。背景にはMotoGPへの転向に関して、ヤマハのサポートが十分でなはい、現在ヤマハはMotoGPで苦戦が続いているなど要因はいくつか考えられるが、現在マニファクチャラーランキングで最下位のBMWへの移籍というのは驚きだ。ただ、シャシーやパーツなど新しいものを積極的に取り入れているBMWをみると、開発にも積極的で投資もしっかり行なっている印象を受ける。もしかするとラズガットリオグルはBMWの将来性に懸けたのかもしれない。

一方、ラズガットリオグルのチームメイトであるアンドレア・ロカテッリはヤマハと2年の契約延長を発表。まだ4戦が終了した段階だが、2021年の王者がいち早く来季に向けて動きをみせた。ここから一気にライダー市場が活発になりそうだ。

ドゥカティワークスの2台が圧勝!リナルディを従えてバウティスタが今季12勝目

画像: イエローのスペシャルカラーで挑んだARUBA.IT RACINGの2台。

イエローのスペシャルカラーで挑んだARUBA.IT RACINGの2台。

土曜日のレース1は天候が晴れ、気温24度、路面温度45度の中で行われた。スタートでは15番グリッドブラッドリー・レイ(YAMAHA MOTOXRACING WORLDSBK TEAM)のエンジンがストップし、スタートディレイ。再度フォーメーションラップが行われ、21周のレースは1周減算の20周となった。凱旋レースとなったドゥカティワークスのARUBA.IT RACINGは、ドゥカティの伝統に敬意を表し、特別なイエローのカラーリングを施したマシンで決勝に臨む。

スタートはポールポジションのバウティスタがホールショット。3番グリッドスタートのマイケル・リナルディ(ARUBA.IT RACING)が2番グリッドスタートのラズガットリオグルとポジション争いを展開。ターン5まで続いた両者の攻防はリナルディが制し、早くもドゥカティワークスによる1-2体制が構築された。

トップ3が早くも等間隔となり、差が開いていく中、ダニーロ・ペトルッチ(BARNI SPARK RACING TEAM)、ジョナサン・レイ(KAWASAKI RACING TEAM WORLDSBK)、アクセル・バッサーニ(MOTOCORSA RACING)による4位争いが激化。2周目にはバッサーニがレイを捉え5位に浮上するが、そこから徐々に3台の差も等間隔になっていく。

今季からSBKに参戦し、これまでの最上位の4位を走っていたペトルッチだったが、残り6周のターン8でまさかの転倒。上位フィニッシュのチャンスだったが、痛いリタイアとなってしまった。

スタートを決めたバウティスタは僚友リナルディに5秒以上の差をつけ今季12勝目。2位には今季最上位でのフィニッシュとなったリナルディが入り、母国イタリアでドゥカティが1-2フィニッシュを達成した。3位にはラズガットリオグルが入り、ペトルッチの転倒によりポジションを上げたバッサーニが4位にフィニッシュ。バウティスタが1年契約を延長した一方、来季のドゥカティワークスの1席をかけた戦いを行なっているリナルディとバッサーニ。ここまで苦戦が続いたリナルディだが、ワークス加入初年度にここミサノでダブルウィンを達成した得意のコースでバッサーニより前でフィニッシュした。これからさらに激しくなるであろう来季のワークスのポジションをかけた戦いにも注目だ。

レース中盤から一騎打ちが続いていたレイとドミニク・エガーター(GYTR GRT YAMAHA WORLDSBK TEAM)の5位争いはレイに軍配。6連覇した王者の意地をみせた。

画像: Race1では1-2フィニッシュというこれ以上ない結果をもたらしたARUBA.IT RACING。

Race1では1-2フィニッシュというこれ以上ない結果をもたらしたARUBA.IT RACING。

2023 スーパーバイク世界選手権 第5戦エミリアロマーニャ レース1結果

画像: 2023 スーパーバイク世界選手権 第5戦エミリアロマーニャ レース1結果
画像1: resources.worldsbk.com
resources.worldsbk.com

バウティスタが破竹の3連勝

画像: 2番グリッドスタートのラズガットリオグルがドゥカティ勢に挑むも・・・

2番グリッドスタートのラズガットリオグルがドゥカティ勢に挑むも・・・

日曜日の午前に行われたスーパーポールレースは10周のスプリントレース。この超スプリントレースはバウティスタとラズガットリオグルの一騎打ちとなった。

スタートで上位勢に動きはなかったが、後方でターン2でドミニク・エガーターとレミー・ガードナーのGYTR GRT YAMAHA WORLDSBK TEAMの2台が転倒。そしてターン4の侵入でラズガットリオグルがバウティスタをパスしトップに浮上する。

その後ラズガットリオグルとバウティスタは順位を入れ替えながら周回を重ねていくが、残り4周のターン8でペトルッチとイケル・レクオーナ(TEAM HRC)が転倒。このアクシデントで赤旗が提示され、レースは5周目の順位で終了することが宣言された。

赤旗によって終了したレースはバウティスタが優勝。ラズガットリオグルが2位、3位にリナルディが入っている。バウティスタとの接近戦を演じ、勝てるチャンスがあったラズガットリオグルにとっては悔やみきれない結果となったが、絶好調の王者バウティスタが運を引き寄せる格好となった。

そして迎えたレース2。21周で行われえたレース2は2番グリッドスタートのラズガットリオグルがホールショットを奪いトップでターン1に侵入。さらにターン4の侵入でリナルディがバウティスタを捕え2位に浮上。しかしバックストレートで2位を取り戻したバウティスタがトップの座を取り戻すべくラズガットリオグルに迫る。

続く2周目のターン8でラズガットリオグルをオーバーテイクしたバウティスタ。前に出られてしまうと勝負権がなくなってしまうラズガットリオグルだったが、ドゥカティのスピードになすすべなく2位に後退。そこにバウティスタのチームメイトであるリナルディが迫り2位争いが激化。

そして残り6周のターン1。ブレーキング時にラズガットリオグルのリアタイヤとリナルディのフロントタイヤが接触しリナルディが転倒クラッシュ。2位をかけた激しいバトルは接触での幕切れとなってしまった。

一方トップのバウティスタを阻むものなど何もなく、ここミサノでもハットトリックを達成し驚異の10連勝となった。2位にラズガットリオグル、3位にはリナルディの転倒もありバッサーニが入っている。今回初のSBK参戦となった水野はレース1とスーパーポールレースで完走、レース2ではリタイアに終わっている。

2023 スーパーバイク世界選手権 第5戦エミリアロマーニャ スーパーポールレース結果

画像2: resources.worldsbk.com
resources.worldsbk.com

2023 スーパーバイク世界選手権 第5戦エミリアロマーニャ レース2結果

画像: バッサーニが3位表彰台を獲得。リナルディのクラッシュもあったが、レイとの4位争いを制しての素晴らしい結果だ。

バッサーニが3位表彰台を獲得。リナルディのクラッシュもあったが、レイとの4位争いを制しての素晴らしい結果だ。

画像3: resources.worldsbk.com
resources.worldsbk.com

レポート:河村大志

This article is a sponsored article by
''.