マエヒロドーム
2023年のモーターサイクルショーでお披露目されたマエヒロテント。
ツイッター(今はXっていうのかな)で、デイトナ公式のブース撮影風景の画像がアップされてて、そこで初めて見たのよね。
いや興奮したね。食い入るように動画をチェックしたよね。
自分は前室が広くないとイヤなんだけど、コールマンのツーリングドームでは前室サイズがちょっと物足りないし、オガワのステイシーIIでは全体的にでかすぎるし、ってことでずっとワンポール使ってるのよ。ワンポールは容積の半分が前室になるからね。
ただワンポールだとやっぱ上がすぼまってて圧迫感がちょいとある。そこはまあ特に問題でもないんだけど、何より困るのが、自立しないから目的のキャンプ場がウッドデッキだと使いにくいのよ。
そこで、この新型テントですよ。ワンポールの前室容積を越えるレベルの広い前室。ソロテントなのに2ルーム。さらに完全自立式。
こういう言い方して良いのかわからないけど、最初の印象としては「小さいステイシーだ! 理想的!」って感激したのよ。
そんなマエヒロドーム。最初はクラウドファンディングでデビュー。そしたらわずか5日で完売。やばいよね。みんな気になってたんだね。
そしてついに一般販売開始。
自分もゲットしたので、ねっとりと紹介していくよ。
フライはこだわりの20Dリップストップナイロン(Silicon/PU)
マエヒロドームのスペックを見た時に、一番気になったのがフライ素材。
20Dリップストップナイロンでシリコン/PUコーティングなのよ。
「リップストップ処理をしたナイロン繊維で軽さが20D。防水についてはシリコンコーティングに裏面ポリウレタンコーティング」ってことね。
これ見ただけで軽量化への開発陣の意欲とか想いが伝わってくるよね。スペック見た時に「山岳テントかな?」って思ったもん。
大きな前室を持つということは、テント全体におけるフライ部分の比重が極端に大きいわけで。そこで、フライに軽量高性能高コストな素材を取り入れてるんじゃないかな。
先走っちゃったけど、まずはテントの素材についてちょっと解説を。
ナイロンとポリエステル
ポリエステルはキャンプ用テントで一番メジャーな素材。吸湿性が低くて乾きも早い。あと、コスト面が非常に優秀。
それに対してナイロンは、山岳テントなんかでよく使われてて、強度があるため軽く仕上げやすい。さらに伸縮性があるので結果として破れにくい。そして高コスト。
ただポリエステルが重い素材ってわけじゃなく、十分に軽量な素材なのよ。それ以上にナイロンが優秀、って感じ。
20D(デニール)とは
20Dってのは20デニールの略。デニールってのは、編んでいる糸を9000m伸ばした時の重さが1gで1デニール。ストッキングとかタイツと同じ単位。マエヒロの場合20Dなので、9000m伸ばした時の重さが20g。
参考までにステイシーIIやツーリングドームのフライは、75Dポリエステル。ドームルームが72Dナイロン。UL(ウルトラライト)といって、軽量さが求められる山岳テントの場合は、だいたい10Dから30Dくらいのナイロンが主流。
もちろんデニールが低ければ薄手になるので、収納性も高くなるぞ。
リップストップ
繊維を見ると格子状になってるじゃん。これがリップストップ。格子状にした強度の高い糸が組み合わせられることで、強度の高さやほつれにくさを実現してるのだ。
コーティング
一般的なテント生地の防水処理は、ポリウレタンコーティングが主流だったんけど最近注目を浴びてるのがシルナイロン。ナイロンにシリコンを浸み込ませたものね。高機能テントの主流になりつつある手法なんだけど、表面がつるっつるになるのでユーザー自身でシーム処理をする必要があったりとかいうデメリットも。
デイトナアウトドアの公式サイトをみると、マエヒロドームのフライ素材については「Silicon/PU」ってかいてある。
これは、ナイロンをシリコンコーティング(シルナイロン)したうえで、裏面をポリウレタンコーティングにしてるってこと。シルナイロンの耐水性や強度と、ポリウレタンの使いやすさを両立させてる良いとこどり。
フライ開口部は3カ所
テントの出入り口は3カ所設けられてる。前室の左右と正面ね。
ただ、左右の開口部については各々形状が違うので注意。
こちら側は、1本のファスナーが、くの字というかL字状に開く方。
反対側はこんな感じでファスナーが2カ所設けられてる。この開き方にはもちろん意味があって、オプションのタープポールを使用することでタープとして使用できるのよ。
左右開口部の違いをうまく活かすためにも、設営時には左右の向きを意識しておくと良いよ。
正面出入口も2カ所のファスナー。こちらもタープとして活用できるよ。
ベンチレーターは前後方向に1カ所ずつ
結露を避けるためにも、必須な装備。
気になったので、フライ重量を測ってみたところ、実測で約1142グラムだった。
インナーはかなり広くて快適
インナーは、ドームテントらしく、圧迫感の少ない球状。
適当に張ってもフレームとの隙間は十分にあり、フライと接触することもなさそう。接触しちゃうと結露が流れ落ちてきちゃうからね。
そういえば、開発者インタビューにもフライとインナーが接触しないよう、何度かやり直したようなことが書いてあった。
公式サイトでは一人用と書いてあるけど、幅が120cmあるのよね。個人的には1~2人用という認識で良いんじゃないかなと思う。ちなみに120cmってのは、ツーリングドームと同等な数値。
コットを置いてみたけど、余裕だった。
インナーの下部は耐水圧3000mmのポリエステル68D。ベンチレーションに近い上部はメッシュにすることで通気性を確保して、下部は風が入り込んで寒くなるのを防ぐ、とことなのかな。
インナーにはスタンディングテープが設けられていて、これが完全自立のキモになるってワケ。
完全自立なのがどれくらい凄いかというと、これくらい凄い。
注意
完全自立であることを強調させるために組み立てた後に移動させていますが、本来の想定される扱い方ではありません。
フレームなど各部が破損する恐れがあるので、くれぐれも真似はしないでください。
インナー重量は約756グラムだった。
ポールはA7001
A7001は7000系アルミ合金ってやつ。亜鉛とマグネシウムを配合したアルミ合金で、強度も軽さも優れてる。
自分がこれまで使ってたドームテントはグラスファイバーポールなので、アルミというだけですごく嬉しい。グラスファイバーだと重いし、ガラス繊維が出てくるとチクチクしてもうたまんないのよね。
重量は専用収納袋を合わせて約994グラム。袋をなくせばちょっとだけ軽くなるかもだけど、収納がとっても面倒になるのでオススメできない。
収納時のコンパクトさと収納袋にこだわりあり
2ルームテントなのに収納サイズはわずか11.2リットル
収納サイズは幅44cmで直径18cm。デイトナアウトドアの製品は46コンセプトっていって、幅46cm以内に収めてるアイテムが多いのよ。
せっかく外寸があるので、わかりやすくするために体積にしてみよう。
円筒の体積は半径×半径×円周率×幅なので円周率を3.14として、9×9×3.14×44=11190.96。
つまり約11.2リットル。めっちゃコンパクト。形状にもよるけど、普通サイズのサイドバッグに納まっちゃいそう。
愛用してる2wayシートバッグがH170×W440×D300mm。マエヒロ収納時の直径が18cmだし、2wayシートバッグの高さ170mmってのは外寸なので、高さ方向は厳しいけど入るか試してみよう。
ちょっと窮屈だけど一応入って、ちゃんと蓋も閉めることができた。
もっとも、実際に2wayシートバッグでキャンプいくなら、小物をシートバッグに入れてテントは上に積んで固定するかな。せっかく収納袋にウェビングもあるしね。
ちなみにちょいちょい参考に出してるツーリングドームSTは幅49cmで直径19cm、つまり約13.9リットル。ステイシーIIは幅52cmで直径19cmなので約14.7リットル。
どちらも名作と呼ばれるにふさわしいテントだけあって、収納も相当にレベルが高い。特にステイシーIIのコンパクトさはまじですごいんだけど、ただマエヒロがそれ以上にヤバイ。マジヤバイ。
収納袋のウェビングが便利
収納袋は2カ所のベルトを使ったコンプレッション機能アリ。これがあるとないとでは大違いなのよね。
あと、特長的なポイントとして、ウェビングが縫い付けられてる。テントを積載するときにウェビングを通すことで固定が凄く楽になるのよ。これは目から鱗。
素材は150Dポリエステルと、かなり厚手の生地を使ってる。単純にスペック上の軽量化を狙うなら収納袋を薄くするのも手なんだけど、破れたら困るしね。自分が過去に使ってきたテントでも、2回くらい収納袋が破れてる。
あと、大事なポイント。収納のしやすさ。
収納袋がタイトすぎる設計だと撤収がつらいんだけど、比較的ゆとりのある設計なので、収納時はそこまでシビアに畳まなくても大丈夫。
ちなみに重量は思ったより軽くて約107グラム。モンベルのコンプレッションスタッフバッグMサイズが110グラムなので、重量的には十分軽いといえるんじゃないかな。
付属のペグはアルミ製のV型
V型ペグ
付属品のアルミVペグ。21本入ってる。
内訳としては、インナー(及びスタンディングテープ)で6本使用。フライシートで9本、張り綱(ガイロープ)で6本使用するよ。
1本あたり約11グラムなので、21本で約231グラム(+収納袋)。
グランドシートは別売りなので注意
グランドシートは別売りオプションで専用サイズが用意されてる。
純正オプションだけあって、インナーのハトメと一緒にポールを刺すことでズレずに設置できるようになってる。
サイズ的には寝室部分のみを守る形式。
結露防止とかの観点でいえばもちろんそれでなんの問題もないんだけど、前室に荷物を置いたりくつろぐなら、大きいサイズのグランドシートにするのもアリ。
マエヒロドームのオプション
正面と横の開口部をタープとして活用するために、ポールも別売りされてるよ。120cmと130cmがあるけど、大きな違いは継ぎ数。
120cmは3本継なので、本数が少ない分から断面積が少なくできる。130cmは4本継なので、全長を短くできる。
長さと断面積のどちらをよりコンパクトにしたいかで選択できるようになってるってわけね。
マエヒロの広い前室ならスーパーカブが入るんじゃなかろうか
さて、ここからが自分的な本題。
マエヒロの広大な前室なら自分のスーパーカブ90が入るんじゃなかろうかと。
バイクと一緒に寝るってのもロマンだし、雨の時にバイクを避難させられるって凄く良いじゃん。
いきなり試してフライを破ってもアレなので、まずは数値から追っていくよ。
参考にしたのはデイトナアウトドア公式サイト。
寸法は上記キャプションの通りで、形状はこんな感じ。
前室の横幅が2200mmで、高さが最大点で1430mm。奥行きが1300mmだけど、カブの幅はそんなにないのでよっぽど大丈夫でしょ。
カブ90の全長が1805mmで高さが1015mm。数値をもとに画像を重ねてみたらこうなった。
やや厳しそうではあるけど、スタンディングテープの枠内には入ってるし、そもそも少しくらいならフライに引っかかっても大丈夫じゃないかな。
よほど突っ張ったら諦めるけど、いけると信じてやってみよう。
フライを掛ける前に前室部分に入れてみた。思ったより余裕そうじゃん。
当初はセンタースタンドを想定してたけど、サイドスタンドで前室形状に合わせた方がゆとり作れそう。
さて、フライを掛けてみるよ。
入りましたわ。
バイクを置く位置やハンドルの切り方でちょっと試行錯誤したけど、最終的にフライに干渉せずに入りましたわ。
寝室から見るとこんな景色。いいね、バイクとキャンプ。
これなら長期間のキャンプツーリングで雨が降っても安心。
バイクが邪魔で出入りしづらそうに見えるけど、その点は割と余裕。
バイク置いたままコット出し入れできるくらいのゆとりアリ。
ただ、出入りするのは余裕だけど、くの字型ファスナーの側から入ると、ファスナーを閉じる時にしんどい。2本ファスナーの側から出入りした方が良いよ。
もう一点注意したいのは、シートバッグとかを隙間におくと、さらに出入りが厳しくなるのは想像に難くない。
でも、バイクをテントに入れるという浪漫の前には、些細なことよね。
ちなみに、入れる時のポイントは「寝室側にサイドスタンドを出す」ことと「ハンドルを右に切っておく」ことの2点。これでかなり違ってくるよ。
今後の要望
正直、キャンプツーリング用のテントとしてはほぼ完ぺきじゃないかな。
前室の広さは圧倒的だし、収納性、軽さともにとてつもなくハイレベル。設営も簡単だしカブも入るし。
一点だけ今後に期待したい点があって、それは「オプションとしてフルクローズインナーを発売してほしい」ってこと。
秋の高原とか、冬キャンプだとやっぱフルクローズできると安心感が違うよね。ただそうなると重さと収納性が多少犠牲になるのが悩ましいところ。
レポート:若林浩志