スタート時刻ちょうどに降り出した雨
土曜夜半からの雨も朝のうちに止み、オープニングレースのIDEMITSUアジアタレントカップこそウェット路面で行なわれたものの、その後のMoto3クラス→Moto2クラスは、雨もやみ、陽がさすようなドライ路面でのレースでスケジュールが進行した、日曜のモビリティリゾートもてぎ。
しかし、MotoGPクラスが開始される15時ごろにぽつりぽつり。このままひどくなるな、止んでくれー、との関係者の願い空しく、スタート時刻ちょうどころに雨脚が強まり始め、コースサイドにはホワイトフラッグ、つまり「ウェットタイヤ履いたマシンに乗り換えOK」のサインが出る中、フルレースがスタートしました。
好スタートを切ったのは、昨日のスプリントを勝った、絶好調男ホルヘ・マルティン(プラマックドゥカティ)。その後方にジャック・ミラー(KTMファクトリー)、フランチェスコ・バニャイア(ドゥカティファクトリー)、アレイシ・エスパルガロ(アプリリアファクトリー)が続き、まずは濡れ始めた路面をスリックタイヤでさぐりさぐり。スタートしてすぐの1コーナーでは、ヨハン・ザルコ(プラマックドゥカティ)とマーベリック・ビニャーレス(アプリリアファクトリー)が押し出されてコースアウトしてしまいます。ビニャーレスはグラベルにタイヤを取られて転倒します。
しかし、雨が徐々に強くなったことで、ほとんどのライダーが1周目終わりにピットイン。スリックタイヤからウェットタイヤを履いたマシンに乗り換えて、レースはリスタートしました。
この混乱期にはミシェル・ピッロ(ドゥカティファクトリー)、ファアビオ・クアルタラロ(モンスターエナジーヤマハ)、ステファン・ブラドル(LCRホンダカストロール)がレースをリードしますが、これはタイヤ交換しようかな、でもピット混雑してるし、このまま雨脚が弱まったらスリックで行けるかもしれないな--ってギャンブルを打った瞬間的現象。ヤマハはフランコ・モルビデリ(モンスターエナジーヤマハ)もカル・クラッチロウ(ヤマルーブRS4GPヤマハ)も、この1周目終わりにはピットに入りませんでした。
でも、あやっぱダメだ、って結局クアルタラロをはじめとしたヤマハ勢もピットへ。タイヤ交換を済ませた大多数のライダーたちによるレース・リスタートは、まずマルティン、それをかわしたアレイシがレースをリード。アレイシ→マルティン→マルク・マルケス(レプソルホンダ)→バニャイア→マルコ・ベッツェッキ(VR46レーシング)→ミラーと続きます。
この集団は、アレイシ→マルケス→ベッツェッキ→バニャイアが先行しつつ、後方から追いついてきたのがマルティン! マルティンはすぐにマルケス、ベッツェッキ、バニャイアをかわして2番手、そしてアレイシをかわしてトップに浮上。アレイシはバニャイアにもかわされて、後方からベッツェッキ、ミゲル・オリベイラ(RNFアプリリア)の追撃を受け、マルケスは7番手あたりまでさがります。うーむ、マルケスは雨でもまだマシンを思い通りにコントロールできないんでしょうか……。
トップグループはマルティン→バニャイア→ベッツェッキ、オリベイラ。しかし、レースが10周を過ぎるころから雨脚が強くなり、がぜんペースを取り戻したのがマルケスでした。
マルケスは、一度はかわされたベッツェッキに再び追いつくと、すぐにこれをパスして3番手に再浮上。ここまで雨脚が強くなると、マシンの差っていうよりライダーのスキルがモノをいうのかもしれませんね。進入でマシンをゆらゆら震わせて、立ち上がりで暴れるマシンをねじ伏せて走る「マルケススタイル」を、雨の中で久々に見たような気がしました。
さぁ雨が強くなってきた、ここからTOP3がどう詰まっていくか、それともマルティンが逃げるのか--と思ったころ、もてぎの雨が激しくなり、レースは赤旗提示でいったん中断。このタイミングでザルコが転倒、マシンを大破させていましたね。
ライダー&マシンは全車ピットに入り、来るべきレースpart2に向けてマシンのセッティングしたり、準備をしたり。
そして約20分後にピットレーン出口がオープン、再スタートへと進んでいきますが、このサイティングラップでも路面コンディションは良化せず、いったんグリッドについてウォーミングアップが再開されますが、このタイミングでも雨は降り続け、それだけならまだしも、陽も落ちてしまって暗くなり、雨も再び降り始めて視界も悪くなり、再度赤旗提示--からのレース終了が宣言されました。
レースはよほどじゃなきゃ雨でもスタートしますが、視界が悪い、つまりマーシャルのフラッグが見えなかったり、ドクターヘリが飛ぶに十分な視界がないと、レースは中止されてしまうのです。
24周のレースは12周を終わって終了。これは土曜のスプリントと同じ周回で「周回数の50%をクリアしていればレースは成立、ポイントはハーフではなくてフルポイントが与えられる」との裁定が下りました。
結果、マルティン→バニャイア→マルケスの順で表彰台が確定。走っているライダーもなんだかわからず、マルケスなんか「え?おれ?3位?」ってキョドりながらパルクフェルメに向かっていましたもんね。
「雨がひどくなってからは、しばらくバニャイアの後ろで雨の様子を見ていたんだ。ペースをどうしようか考えてたんだけど、うまくマネージできて、フロントタイヤも大丈夫だった。それでみんなに追いついて、ギャップを広げることができたんだよ」とマルティン。
絶好調男マルティン、これでサンマリノGPからの3戦6レースで優勝5回、2位1回の荒稼ぎ! 対してバニャイアは同じくこの3戦6レースで3位1回3位1回2位1回ノーポイント1回と、第11戦カタルニアを終わって50pあったポイント差が、日本GPでマルティンに25p(+スプリントで12p)、バニャイアに20p(+スプリントで7p)が加算され、ついに3pまで縮まったレースとなりました。
暫定結果
①ホルヘ・マルティン(ドゥカティ) ②フランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ)
③マルク・マルケス(ホンダ) ④マルコ・ベッツェッキ(ドゥカティ)
⑤アレイシ・エスパルガロ(アプリリア) ⑥ジャック・ミラー(KTM)
⑦アウグスト・フェルナンデス(GASGAS=KTM) ⑧ファビオ・ディ・ジャナントニオ(ドゥカティ)
⑨ラウル・フェルナンデス(アプリリア) ⑩ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)
⑪中上貴晶(ホンダ) ⑫ジョアン・ミル(ホンダ)
⑬カル・クラッチロウ(ヤマハ) ⑭ステファン・ブラドル(ホンダ)
⑮ポル・エスパルガロ(GASGAS=KTM) ⑯ミシェル・ピッロ(ドゥカティ)
⑰フランコ・モルビデリ(ヤマハ) ⑱ミゲル・オリベイラ(アプリリア)
⑲マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)
写真・文責/中村浩史