L.マリーニがレコードブレイクでポールポジション獲得
予選はタイトルコンテンダーの2台に明暗が分かれる結果となった。
前戦の日本GPでマルティンに3ポイント差まで詰められたバニャイア。再び流れを引き戻したいところだったが、バニャイアはプラクティスの転倒が影響し予選はQ1からの出走となった。
セッション前半はQ2進出圏内となる上位2位につけていたバニャイア。後半になるとヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)が暫定トップに立つもバニャイアが上回るも、ルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)がトップタイムを更新する。
さらにチームメイトであるエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)が2番手に食い込みバニャイアは3番手に後退、Q1を3番手で終えたバニャイアはまさかのQ1敗退となってしまった。
中上貴晶(LCR Honda)は、Q1を10番手に終わりQ2進出を逃している。
ライバルのまさかのQ1敗退により、俄然有利な状況となったマルティン。しかし、予選Q2で速さを見せたのはアプリリアワークスの2台だった。
セッション序盤はアレイシ・エスパルガロ(Aprilia Racing)とマーベリック・ビニャーレス(Aprilia Racing)がワンツー体制を構築。一方、ランキング3位のマルコ・ベッツェッキ(Mooney VR46 Racing Team)は転倒を喫してしまう。日本GP後、トレーニング中に鎖骨を骨折するも、木曜日のメディカルチェックをパスしたベッツェッキ。予選でも転倒を喫し、タフな週末となってしまった。
また、マルティンもターン16で転倒。こちらはピットに戻りスペアマシンでコースに復帰し、ひとまず4番手タイムを記録する。
セッション後半に入ってもアプリリアの好調は続く。エスパルガロが暫定トップに立つと、ビニャーレスがトップタイムを更新。アプリリアのワンツーでセッションが終了するかに思われた矢先、マリーニが1分29秒978の最速ラップを更新。
レコードタイム更新となったマリーニがポールポジションを獲得。2位にビニャーレス、3位はエスパルガロが並んだ。
チャンピオンシップ争いを繰り広げているマルティンは転倒があったものの最終的に6番手で予選を終了。ここ最近の活躍を思えば不本意な結果となったが、ライバルのQ1敗退を考えれば上出来の結果と言えるだろう。
マルティンがスプリント4連勝、決勝レースを前にランキング首位に浮上!
土曜日のスプリントレースは、気温32度、路面温度59度のドライコンディションの中、13周で行われた。スタートは2番グリッドからビニャーレスがホールショットを奪いトップに浮上。マリーニ、ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)、マルティンの順でオープニングラップを終える。
また、今シーズン限りでホンダを離脱することを発表したマルク・マルケス(Repsol Honda Team)はオープニングラップで転倒、さらに2周目のターン16にはエスパルガロがブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)を巻き込み転倒を喫している。
一方、マルティンは2周目にクアルタラロをオーバーテイク。早くも3位に浮上する。先頭を走るビニャーレスは2位以下にギャップを築いていくも、勢いに乗るマルティンが2位のマリーニも攻略しトップを追う。
2位に上がり、ペースが良いマルティンは周回を重ねるごとにトップのビニャーレスとの差を詰めていく。そして残り5周でビニャーレスをオーバーテイクしトップに躍り出た。
マルティンのオーバーテイクを許したビニャーレスはマリーニの接近も許してしまう。タイヤの左側が激しく摩耗しペースが上がらないビニャーレスはマリーニ、そして4位にまで上がってきたベッツッキにもパスされ、4位に後退してしまった。
アプリリアの後退を尻目にトップに躍り出たマルティンはトップを守りきり優勝。スプリントレースで4連勝を決めた。2位はマリーニ、そして3位にはベッツェッキが入り、ドゥカティのサテライトチームが表彰台を独占する結果となった。
ポイントリーダーのバニャイアは8位でフィニッシュ。この結果、マルティンが7ポイント差でポイントリーダーに立った。また、ドゥカティはコンストラクターズチャンピオンを決めている。
中上はホンダ勢最上位となる11位でフィニッシュ。ポイント獲得とはならなかったが予選から大きく順位をあげる力走を見せてくれた。
マルティンがトップ快走からまさかの転倒、バニャイアが大逆転でランキングトップに再浮上
27周の決勝レースのグリッドもスプリントと同じ並びであるため、マリーニがポールシッターに。しかし、前戦のインドGPのクラッシュに関するペナルティが残っている。
マリーニは決勝レース中にロングラップペナルティを消化しなければならない。つまり、2番グリッドスタートのビニャーレスと3番グリッドスタートのエスパルガロにとっては大きなチャンスとなる。
しかしスタートでトップに躍り出たのは、なんと6番グリッドスタートのマルティンだった。ホイルスピンが一切ない完璧なスタートで一気にトップに立ったマルティンは勝ちパターンの逃げ切り体制に入る。
また、後方13番グリッドスタートのバニャイアも好スタートを決めており、こちらも6番手につけるなど大幅にポジションを上げることに成功した。先頭のマルティンが逃げる中、2番手のビニャーレスがかろうじてついていき、トップ2が抜け出す展開となる。
チャンピオンシップでついにマルティンにトップの座を奪われたバニャイアはスプリントの不調が嘘のような追い上げをみせる。土曜日にタイヤの摩耗に苦しんだバニャイアは、決勝レースで前後ともにハードタイヤを選択。この選択が見事に当たった。
早くも2周目に4番手に浮上すると、3番手のクアルタラロも攻略し表彰台圏内に浮上。しかし、先頭のマルティンは2番手のビニャーレスに3秒差をつけており、マルティンがバニャイアに対してさらにリードを築くかに思われた。
しかし、残り15周で波乱の展開に。トップを快走していたマルティンがターン11で転倒。まさかのノーポイントでレースを終えることになってしまった。
マルティンの転倒によりビニャーレスがトップに。その後方では千載一遇のチャンスを迎えたバニャイアがペースを上げトップに急接近。そして残り8周となったタイミングでビニャーレスを攻略したバニャイアがついにトップに浮上した。
最終盤にはバニャイア、ビニャーレス、クアルタラロの3台が接近する神経戦となったが、順位は変わらずチェッカーが振られた。予選13番手からの大逆転優勝を果たしたバニャイアはマルティンの転倒もあり再びランキングトップに再浮上。バニャイアはマルティンに18ポイント差をつけ、残り5戦を戦うことになった。
2位はビニャーレス、3位はクアルタラロが入った。最高峰クラスにおいて3メーカーでの優勝という快挙まであと少し届かなかったビニャーレスだったが、アプリリアに表彰台をプレゼントすることに成功。クアルタラロも苦戦が続く中、今週末は力強い走りを見せてくれた。
中上は、転倒車が多かったサバイバルレースを生き残り11位でのフィニッシュ。ホンダ最上位とはならなかったが、チームに安定してポイントをもたらしており、今回も貴重な5ポイントを獲得している。
次戦の舞台はオーストラリアのフィリップアイランド。アジアラウンド3連戦の2戦目となる。チャンピオン争いではこれまでと一転してバニャイアに流れが傾き始めている。マルティンにとっては今回の転倒はポイントのみならず、ライバルに流れを渡してしまうという意味でも痛いものとなった。連戦の中で気持ちを切り替えられるかがカギとなるだろう。
超高速サーキットであるフィリップアイランドでは空力性能の面においてアプリリアが得意とするレイアウトだが、風が強いことが懸念される。直線スピードの優位性があり、マシンのポテンシャルが高いドゥカティ勢が今回も優位にレースを進めるのではないだろうか。
長かった今シーズンも残すところあと5戦。バニャイアの王座防衛か、マルティンが初の栄冠に輝くのか。もしかするとシーズン終了後に第15戦がターニングポイントだったと振り返ることになるのかもしれない。
2023 MotoGP 第15戦 決勝結果
レポート:河村大志