マルティンがレコード更新のスーパーラップでポールポジション獲得!
オーストラリアGPの初日終了後、ドルナは決勝日の悪天候を考慮しスケジュールの変更を発表。MotoGPクラスの決勝を土曜日に、土曜日に行われるスプリントレースを日曜日に移動させたのだ。発表当初、スケジュールの変更はMotoGPクラスのみだったが、決勝日は全クラススタート時間を1時間前倒しで行われることが発表された。
予選日は上空に雲が覆う中スタート。予選Q1にはランキングトップのバニャイアが出走。前戦インドネシア同様、Q1から上位進出を狙う。
バニャイアとQ2進出を争ったのはマルク・マルケス(Repsol Honda Team)とアウグスト・フェルナンデス(GASGAS Factory Racing Tech3)の2台。前半はフェルナンデスがトップタイムをマーク、バニャイアは2番手につけるもマルケスが僅差で3番手につけており、油断のできない状況が続く。
バニャイアはルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)の背後でアタックを開始。最終コーナーではマリーニのスリップをうまく使い1分28秒160のトップタイムを叩き出した。
最終的にバニャイアのタイムを上回るライダーは現れずバニャイアのトップ通過が決定。Q2進出可能な2番手にはフェルナンデスのタイムを上回ったマルケスが入り、次に駒を進めた。
最後、バニャイアは自己ベストを更新することはなかったものの、Q1トップの座は維持。無事に予選Q2へと駒を進めることができた。また2番手にはフェルナンデスの後ろで引っ張ってもらいながらのアタックでタイムを縮めたマルケスが入った。
また、日本人ライダーの中上貴晶(LCR Honda)は、Q1を11番手で終えQ2進出を逃している。
ポールポジションが決まる予選Q2はいきなりマルティンがレコードに迫るタイムを更新。そこに初日総合トップにたったブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)、そしてバニャイヤが続く。
マルティンは他車にスリップストリームを利用されるもお構いなし。ポールポジションが決定的とも言える1分27秒246をマーク。コースレコードを更新し、2番手にコンマ4秒の大差をつけてポールポジションを獲得してみせた。
2番手ビンダー、3番手バニャイアは変わらず。タイトルコンテンダーの2名がフロントローから決勝に挑むことになった。
バク宙パフォーマンス復活!ザルコが最高峰クラスで初優勝達成!!
発表どおり土曜日に開催された決勝レースは曇り空の中、27周で行われた。
スタートでは順位に変動なくクリーンな出だしとなったが、オープニングラップのセクター4でジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)がバニャイアをパスし3位に浮上。しかし翌周のホームストレートエンドでバニャイアがストレートスピードを活かし2位に返り咲く。
一方、トップのマルティンは勝ちパターンの独走体制を築くべく序盤から逃げにかかる。そのマルティンを追いたいバニャイアだったが、マルク・マルケスやフェビオ・ディ・ジャナントニオ(グレシーニ)とのバトルによってマルティンを逃してしまう格好となった。
2位ビンダー、3位バニャイアの順でレースが進む中、前戦自己最高位となる4位を獲得したディ・ジャナントニオがバニャイアを捕らえ3位に浮上。
4位に交代したバニャイアはマルケス、ヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)の接近を許し、前を追うことができない。
レース中盤になると2位ビンダーとディ・ジャナントニオ、さらにバニャイアとマルケスを抜いたザルコも近づき、2位争いが激化。
周回数が残り10周を切った中、ディ・ジャナントニオがホームストレートでビンダーをオーバーテイクし2位に浮上。しかし、ビンダーも離されることなくついていき、残り5周でディ・ジャナントニオを抜き返し2位を奪い返す。
激しいバトルを繰り広げる2位集団だが、トップのマルティンとの差が急激に縮まっていく。実はマルティンはソフトタイヤを選択しており、レース終盤にはタイヤの摩耗が激しくグリップが急激に落ち始めていた。同じソフトタイヤを選択したマルケスも序盤の3位争い以降、大きく順位を下げているのをみると、ソフトタイヤの選択にはリスクがあったようだ。
残り2周、バトルを繰り広げる2位集団はザルコが2位、バニャイアが3番手に上がりファイナルラップに突入。
トップでラストラップを迎えたマルティンだったが、タイヤが完全に終わってしまっており、ターン4でザルコに捕えられると一気に5位に後退。目の前の優勝が遠のいていく。
チームメイトをオーバーテイクしたザルコがそのまま逃げ切りトップチェッカー。最高峰クラス参戦120戦目にしてついに初優勝を達成した。
ウイニングラップには優勝パフォーマンスであるバク宙を披露したザルコ。実に7年ぶりのパフォーマンスにファンからは大きな拍手が送られた。
多くのライダーを相手に冷静なレース運びを見せたバニャイアが2位。5位フィニッシュとなったマルティンに対し、チャンピオンシップポイントではその差を27にまで広げることに成功した。そして3位にはこちらも自身初のMotoGPクラスでの表彰台獲得となったディ・ジャナントニオが入った。
初優勝に7年かかったザルコ、来季のシートを失ったディ・ジャナントニオ、苦労人の2人が表彰台で心温まる笑顔をみせてくれた。
2023 MotoGP 第16戦 決勝結果
悪コンディションを考慮し、スプリントレースは中止に
日曜日は朝から大雨と強風に見舞われ、Moto3やMoto2の決勝レースでは転倒者が相次ぐ事態となった。
スプリントレース直前に行われたMoto2クラスの決勝レースは天候の悪化により赤旗が掲示され、レースが中断。周回数は3分の2を消化していなかったが、コンディションの改善が望めないことからレース終了。ポイントは半分が付与される処置がとられていた。
続くMotoGPクラスでもレース開催は危険と判断され、グリッドにマシンが並ぶことなくキャンセルされることが発表されたが、サーキットに訪れたファンにライダーがファンサービスを実施。写真撮影やサイン、レーシングギアをプレゼントしたりと、ライダーたちは各々ファンに感謝の気持ちを伝えていた。
気温が12度と観戦する立場であれば心が折れそうになるコンディションで、レースが中断と残念な結果に終わった今年のオーストラリアGP。しかし、ライダーたちのファンサービスがあり、サーキットには暖かく優しい笑顔で溢れていた。
次戦は10月27日から29日にタイのチャン・インターナショナル・サーキットで行われる第17戦タイGP。流れに乗りつつあるバニャイアがチャンピオンを手繰り寄せるのか、はたまたマルティンの逆襲があるのか。アジアラウンド3連戦の最終戦も目が離せない!
レポート:河村大志