2023年11月26日、MotoGP第20戦バレンシアGPがリカルド・トルモ・サーキットで行われた。3カテゴリーで唯一最終戦までチャンピオン争いがもつれ込んだMotoGPクラス。フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)とホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)のドゥカティ同士の戦いがついに決着を迎えた。

ビニャーレスがレコードブレイクでポールポジション獲得!

画像: 母国スペインで久しぶりの予選最速タイムを記録したビニャーレス。

母国スペインで久しぶりの予選最速タイムを記録したビニャーレス。

最終戦の予選ではバニャイアがQ1から出走というサプライズがあった。ライバルのマルティンが順当にQ2進出を果たしているため、ポイント差があれど後方からのスタートは避けたいところだ。

バニャイアがセッション序盤からトップタイムを出していく中、アレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)がトップに立つ。3番手には僅差でアウグスト・フェルナンデス(GASGAS Factory Racing Tech3)が続くなど、バニャイアにとっては油断ができない状況。

混雑を避けるべくライバル勢より早めにコースインしたバニャイアはすかさず暫定トップに再浮上。 アタックを続けタイムをさらに更新したバニャイアは目論見通りQ1をトップで通過した。2番手にはアレックス・マルケスが入り、こちらもQ2進出を決めている。

日本人ライダーの中上貴晶(LCR Honda)は6番手にとどまりQ1敗退となってしまった。

Q2ではブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)が1回目のアタックで暫定のトップに立つ。バニャイアは前半アタックを行わずセッション後半に賭ける。

そのバニャイアはQ2後半にトップタイムをマークしマルティンにプレッシャーをかけていく。そんな中、バニャイアのポールポジションを阻止したのがマーベリック・ビニャーレス(Aprilia Racing)だった。

ビニャーレスはレコードタイムを更新する1分28秒931を記録し暫定トップに。そのままセッションが終わり、ビニャーレスのポールポジションが決定した。

Q1からの出走ながらもバニャイアが2位、3位にはマルティンのチームメイトであるヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)がつけた。

マルティンはマルク・マルケス(Repsol Honda Team)と接触しそうになるなどタイム更新ならず6番手。追いかける立場のマルティンにとっては非常に厳しい結果となってしまった。

画像: Q1からの出走もきっちり2番グリッドを獲得したバニャイア。チャンピオンに向けて視界良好。

Q1からの出走もきっちり2番グリッドを獲得したバニャイア。チャンピオンに向けて視界良好。

マルティンが希望をつなぐスプリント9勝目! 14ポイント差でラストレースへ

画像: 意地の走りで希望を繋げたマルティン。スプリントでは9勝目となった。

意地の走りで希望を繋げたマルティン。スプリントでは9勝目となった。

13周で争われるスプリントレースは、2番グリッドのバニャイアが好スタートでトップに出るもビニャーレスが奪い返しオープニングラップが終了。

2番手に落ち着いたバニャイアだったが、ポジションを上げてきたマルティンやビンダーたちとバトルを展開。マルティンとのバトルで接触があったバニャイアは5番手に後退してしまう。

バニャイアとのバトルを制したマルティンは先行するトップのビニャーレスと2番手のビンダーにも迫っていく。

一方、後退したバニャイアはリズムが乱れたのかトップ集団から離される展開になってしまった。

中盤に差し掛かろうとするタイミングで2番手ビンダーがトップのビニャーレス攻略に動く。6周目には抜きつ抜かれつのバトルを演じ、7周目にビンダーがトップに浮上した。

トップに立ったビンダーだったが、ラインをはらませてしまうミスを犯してしまう。2番手に上がったマルティンがその隙を見逃さずビンダーをオーバーテイク。ついにトップに躍り出た。

マルティンはビンダーを引き離すことができず接近戦のまま終盤へ。しかし、ビンダーに隙を与えなかったマルティンがトップチェッカー、望みを繋げるスプリント9勝目を挙げた。

2位にはビンダー、そして3位には今季限りでホンダを離れるマルク・マルケスが入った。

バニャイアはリスクを犯さず5位でフィニッシュ。これで両者のポイント差は14になり、タイトル決定は決勝まで持ち越されることになった。

画像: 3位には今季限りでホンダを離れるマルク・マルケスが入り、地元のファンの前で笑顔を見せた。

3位には今季限りでホンダを離れるマルク・マルケスが入り、地元のファンの前で笑顔を見せた。

マルティンが転倒でタイトル争いは決着! バニャイアが優勝で連覇達成!

画像: 運命の最終戦がスタート。抜群のスタートを決めたバニャイアがトップでターン1を通過。

運命の最終戦がスタート。抜群のスタートを決めたバニャイアがトップでターン1を通過。

決勝前に行われた朝のウォームアップではビニャーレスのマシンから白煙が上がるトラブルが発生。すぐに白煙が収まったため走行を続けたビニャーレスだったが、オレンジボール旗を無視したと判断されてしまい、3グリッド降格処分となってしまった。これによりバニャイアがポールポジションからスタートすることになる。

スプリントから一転、バニャイアに追い風が吹くなか、27周の決勝がスタート。ポールポジションからのスタートという有利性を活かしたバニャイアがトップでターン1をクリア。しかし、後方では6番グリッドスタートのマルティンが好スタートを決め、ターン2では一気に2番手にまで浮上。いきなりタイトルコンテンダー2人による直接対決の構図が出来上がった。

勝つしかないマルティンはバニャイアを攻め立てていくが、4周目にアクシデントが発生する。ターン1のブレーキングでマルティンがバニャイアと僅かに接触しコースオフ。これによりマルティンは一気に8番手までポジションを落としてしまった。

画像: スリップストリームにつき過ぎたか、行き場がなくなりコースオフしてしまうマルティン。

スリップストリームにつき過ぎたか、行き場がなくなりコースオフしてしまうマルティン。

そして6周目、追い上げを見せていたマルティンだったが、ターン4でマルク・マルケスのインに入るもラインが重なり接触。両者転倒でリタイアとなり、ゲームオーバー。この時点でバニャイアのワールドチャンピオンが決定した。

チャンピオン決定を優勝で飾りたいバニャイアだったが、KTMのビンダーとジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)が接近。2台の先行を許したバニャイアは3番手で周回を重ねていく。

しかし、ビンダーはブレーキングミスを犯し後退、さらに残り9周で先頭のミラーがターン11で転倒してしまい、バニャイアは再びトップに立つことになった。

2位にはザルコが僅差でつけるもギャップは変わらず周回を重ねていく。そんな中、残り5周で3番手に浮上してきたファビオ・ディ・ジャナントニオ(Gresini Racing MotoGP)がさらにペースを上げトップ2に接近。

ポールポジション、スプリント優勝、そして決勝レースでも優勝を果たし勢いに乗るディ・ジャナントニオは残り2周のターン11でザルコをパスし2番手に浮上。最終周にはトップのバニャイアの背後につけるも追い上げはここまで。

バニャイアはトップのままトップチェッカー。最高峰クラス連覇を優勝で飾った。

画像: 「師匠」ヴァレンティーノ・ロッシも愛弟子バニャイアの連覇を祝福。

「師匠」ヴァレンティーノ・ロッシも愛弟子バニャイアの連覇を祝福。

ディ・ジャナントニオはターン11、そしてホームストレートでも首を横に振っており、ドゥカティ陣営からの「お達し」があったのかもしれない。そんな中でも後半戦の活躍は見事なものだった。

最終レースでも光る速さを見せたディ・ジャナントニオだったが、レース終了後にタイヤの最低内圧ルールに違反していることが発覚。1回目の違反はお咎めなしだが、2回目の違反だったため3秒タイム加算のペナルティを受けてしまった。

今季後半戦から導入されたタイヤの最低内圧の規定は、スプリントでは最低30%、決勝レースでは最低50%以上は、最低内圧を上回った状態で走行する必要があるというもの。2024年シーズンからは1回目で「失格」という厳しい裁定になることが決定している。

画像: 最終戦もドゥカティが表彰台を独占。今季を象徴するような結果となったが、ディ・ジャナントニオの降格で3位にはビンダーが入っている。

最終戦もドゥカティが表彰台を独占。今季を象徴するような結果となったが、ディ・ジャナントニオの降格で3位にはビンダーが入っている。

これによりディ・ジャナントニオは4位に降格、2位には3位でチェッカーを受けたザルコ、そして4位でチェッカーを受けたビンダーがそれぞれ1つポジションが繰り上がる結果となった。

中上は苦しい中でサバイバルレースを生き残り12位入賞。ホンダ勢唯一の完走を果たし2023年シーズンを終えている。

画像: 圧倒的な速さでシリーズを席巻したDucati Lenovo Team。

圧倒的な速さでシリーズを席巻したDucati Lenovo Team。

2023 MotoGP 第20戦 決勝結果

画像: resources.motogp.com
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レポート:河村大志

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