文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
カンナム「スパイダーRT リミテッド / SEA-TO-SKY」インプレ(宮崎敬一郎)
バイクらしい瞬発力を備えたプレミアムモデル
カンナムのトライクは現在、大きく分けて3つのファミリーがある。身のこなしが軽く、スポーティで取り回しが軽い600ccと900ccのレイカー。強力な1330ccの3気筒エンジンを搭載し、スポーツバージョンからツアラーまで用意されたF3シリーズ。そして同じ3気筒エンジンを搭載し、豪華な装備とオールマイティな走りを提供するツアラーのスパイダーRTという構成だ。
スパーダ―RTはいわゆる最上級モデルで、スタンダードの「リミテッド」と、ウインドシールドやホイールなどをグレードアップした「SEA-TO-SKY」が用意されている。ミッションは6速のセミオートマで、レバーを使ってシフトする仕様だ。
スパイダーには何度か試乗させてもらったが、以前のモデルは少しクセのある操縦性が特徴。スポーツカートに通じる特性で、その挙動は、前後左右への荷重変化に敏感に反応し、これが良くも悪くもクセの源だった。フロントのステアはハンドルにほぼ直結していて、キックバックもあるし重い。車体が微妙にロールするだけで旋回特性も激変……これを乗りこなすのが醍醐味と言われていたが、正直、すぐには完璧に操る自信がなかった。
だが、最新のスパイダーRTはまるで違う。とてもマイルドで、ライダーの操作に従順。格段にイージーな操縦性になっている。
フロントまわりのアライメントを1世代前に一新しているが、RT独自の装備になるパワステのおかげで操舵も随分軽い。また、アンチスウェーバー(スタビライザー)を含めたセッティングも進化した。そうしたことが効いているのだと思う。割と簡単に、カートのようなダイレクトな挙動を味わえる。
ただ、激しいギャップだと前2輪のスタビリティはブレイクし、強いアンダーが出る。得意なのはやはり良路で、そこでは路面にへばりつくように曲がり、ウネリや路面のカント変化、上り下りで勝手にラインを変える悪癖もほぼ抑え込まれている。大きくなった車体を含め、いい意味で過剰過ぎた反応が穏やかになった印象だ。これがいい。
ツアラーとして見た場合、乗り心地はフロントが少し硬めだが、概ね快適。雲の上を走るような四輪の高級SUV、ではなく、バイクなみの瞬発力と機動力を持ったスポーティな乗り物だ。そして、これまでのスパイダーシリーズの中で、最も人に優しい操縦性を手に入れている。