「優しさがレースに出てるって昔めちゃくちゃ言われてました」私が最終戦でお話しを聞いて凄く印象に残っている言葉!
2023年ST1000クラスで戦っていた#2 TOHO Racingの國峰琢磨選手に「みんなからどんなキャラクターと言われることが多いですか?」と聞くと「“優しい”しか言われない」に続いた言葉でした。
私のイメージですがライダーはみんな負けず嫌い。タイヤやマシンは優しく丁寧に扱わなければならないけれど、どちらかと言えば優しいとは真逆なタイプなのではないか?!という偏見がありました。
しかも、今年のST1000は全日本ロードレースで一番面白いと言われるくらい、毎レース見所も多く、盛り上がっていたクラス。その中で#32 SDG MOTOR SPORTS RT HARC-PRO.の榎戸育寛選手とチャンピオン争いをし、バチバチな熱いバトルを繰り広げ、レースを盛り上げていた姿を見ていたのでそんなイメージはありませんでした。
2023年度 全日本ロードレース選手権シリーズランキング表 ST1000クラス
順位 | 氏名 | TEAM | 合計P | 第1戦 | 第3戦 | 第6戦 | 第7戦 | 第8戦 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 2 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 渡辺 一馬 | Astemo HondaDream SI Racing | 97.0 | 16.0(3) | 20.0(2) | 13.0(4) | 25.0(1) | 23.0(2) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 荒川 晃大 | MOTOBUM HONDA | 92.0 | 9.0(7) | 10.0(6) | 20.0(2) | 25.0(1) | 28.0(1) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 國峰 啄磨 | TOHO Racing | 77.0 | 25.0(1) | 16.0(3) | 16.0(3) | 20.0(2) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4 | 榎戸 育寛 | SDG Motor Sports RT HARC-PRO. | 76.0 | 10.0(6) | 25.0(1) | 25.0(1) | 16.0(3) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5 | 高橋 巧 | JAPAN POST HondaDream TP | 64.0 | 11.0(5) | 11.0(5) | 11.0(5) | 11.0(5) | 20.0(2) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
6 | 高橋 裕紀 | JAPAN POST HondaDream TP | 61.0 | 13.0(4) | 9.0(7) | 10.0(6) | 13.0(4) | 16.0(3) |
國「優しさがレースに出てるって昔めちゃくちゃ言われてました。そこが変われるように頑張ってはいるんですけど...。岡山は良くはないですけど、まぁあぁいうこと僕したことなかったので、まぁ1つこう...コワさというか、ライダーとしてそういうのを出せたので」と、振り返ると成長した1年になったそうなのです。
その優しいと言われてきた國峰選手ですがタイヤにも優しいですかと質問をしてみると
「去年は優しくなかったんですよ、タイヤに。なので今年タイヤに優しくできるようにセッティングを大幅に変えました。それによって、レースをああして戦えるようにはなりました! そこはホントにもう勉強...勉強というか去年の反省をいかせてるんです」と、まさかのここでも成長ができたというお話を聞く事ができました。
実はインタビュー中に笑顔だったのはこの会話の時だけ。國峰選手はネガティブボーイだそうで、お話を伺うと、出てくる言葉がほとんどネガティブ。
「走り以外で誰にも負けてないことはありますか?」と聞くと即答で「全然ないんですよね」と。でもその後に「あ!足の短さだったら誰にも負けないですね、はい。これはもう有名ですよ」とまさかの返答に驚きました。
他にもこんな感じで自虐ネタ多めな國峰選手でしたが、会話をすると喋り方や言葉の選び方からもみんなから"優しい"と言われる事に納得でした!
また、鈴鹿サーキットで10月14•15日に行われた全日本ロード選手権最終戦を観ていた方は知っていると思うのですが、スタートからバトルが多く、ひと時も目が離せない展開をしている中で2周目Hitachi Astemoシケインでトップにたった國峰選手を追いかける形でインに飛び込んだ榎戸選手が國峰選手に接触をしながら転倒。この2人が最終戦前のシリーズランキング1、2位でどちらかがチャンピオンを獲るのではないかという期待が高まっていたので、このシーンはかなり衝撃的な場面でした。
また、最終戦の前戦である岡山大会では國峰選手が榎戸選手に接触し2人ともリタイアという真逆の事が起こっていた事もあり、この最終戦についてや榎戸選手とのライバル関係についても聞いてみました。
梅「最終戦を終えて今の心境を教えてください?」
國「そうですね...まぁ、前回(岡山大会)僕も似たような事をしてますし...その榎戸選手に対してっていうのはないですけど...やっぱその...お互い、わざとでもないですし、その真剣に紙一重で走っている中で起きた事なので、そこはなんもないですけど、まぁ最終戦もうちょっとレースしたかったなって。正直ラスト1周2周は、みんなもう気持ちの勝負なんで、どうなろうとしょうがないと思っていたんですけど、まさかこんなに早く終わるとは正直思ってはいなかったんで...ただ、そうですね。最終戦...気持ちよく...2.3周ですけど、すごくこう...まぁ今回乗れてるなという走りが、最後にちょっとだけですけど出来たんで、悔いはありますけど...」
梅「でもシーズン通しても今年いい走りが沢山ありましたよね!」
國「そうですね、ただ優勝が1回だけなんで...去年も2位で今年もいろんなメーカーにチャンピオンTシャツとか作ってもらって1回も着たことないんで、迷惑しかかけてないんで、ちょっとそろそろ...ってか、こんなに獲れないのかと思うくらいやっぱり僕は...。悔しいし、本当とことん獲れないんで...やっぱりそろそろ、自分自身も変わってきた部分もあるんで、弱かった部分が強くなってはいるんで、来年チャンスがあれば"来年に今回の結果を繋げたい"」
梅「来年めちゃくちゃ期待しています!今年でいうとやはり榎戸選手には負けたくないという思い、ライバル視は強かったですか?」
國「あの〜、正直僕ら幼馴染みたいな感じでちっちゃい頃から一緒で、なおかつもうホント誕生日も1日違いだし、しかもなんか体型も似てるんで...だからまぁ、今回お互い2レースともこういう結果になってお互い...まぁチーム同士はあれだとしても、ライダー同士ではそこまでの『クソー!』ってならないですけど、まぁその『もうちょっとこうすれば良かったじゃん』とかそういうくらいで、ギクシャクはなくて、前回でいえば『もうチャンピオン争いは...2人にしようよー』とか話してて。まぁ、でも今回もあの間ずーっと2人でいたんで...育寛もめっちゃ謝ってくれてましたし、なんでそういう気持ちはないですけど、でもお互い負けたくない気持ちは強いですし。
まぁ、なんだかんだいって僕と育寛って今年以外同じクラスで戦った事がないんで...スポットでJSBではありますけど。だから今年こう...久々に一緒に走れて楽しさはありますね」と語ってくれました。
このお二人は8耐では同じチームで戦う仲間。そして全日本では幼馴染で似ていると言われていたライバル! そんな関係性からも今年のバトルに対する想いが走りに現れていたようにみえました。
榎戸選手はライダーとしてこの最終戦で引退という事をシーズン終了後に発表しましたが、最後に一緒にバトルをし、國峰選手としてはランキングこそシリーズ3位と下がってはしまいましたが、お話しを聞くととても充実し、もう気持ちが来年に向かっているようにみえました!
走りでもライダーとして強くなったという手応えも感じた1年だったそうなので2024年は更に"國峰啄磨選手"に注目してみたいと思います。