文:横田和彦/写真:南 孝幸/モデル:ノア セレン
ファンティック「キャバレロ スクランブラー 500 デラックス」インプレ(横田和彦)
まるでコンペモデルのようなパワー感と爽快感
ファンティックは1968年にイタリアで創業し、翌年のミラノショーで50ccのスクランブラーモデル・ファンティック キャバレロ クロス50を発表。その後、モトクロスやトライアル競技で華々しい成績を数多く残し人気ブランドとなった。そのファンティックがリリースしているキャバレロ・スクランブラー500は、スクランブラーカテゴリーのバイクとして高い完成度を誇っている。
外観はスタンダードな構成ながらスタイリッシュ。丸みを帯びたガソリンタンクからシート、テールカウル、サイドカバーなどがバランス良く仕上っていて、長く見ていても飽きが来ない。さすがはイタリアン・デザインだと感心する。ヘッドライトやウインカーなどの灯火類はLED。倒立フォークを支えるトリプルツリーやフレームの中核部でもあるスイングアームピボットなど、走行性能にダイレクトに影響する部分には贅沢にもアルミ削り出しパーツを奢っている。
また右2本出しのサイレンサーを備えたエキゾーストはARROW製、エキパイ部のヒートガードはドライカーボン製、スロットルはドミノ製、剛性が高いテーパータイプのハンドルバーなど要所に実績があるパーツを採用。マニアが見ても納得する造り込みがなされている。
車体を起こした瞬間、大型バイクとは思えない軽さに驚く。500ccながら250cc並の車重しかないのだ。走り出すときはもちろん、駐車場から出し入れするときなどもストレスを感じないのが嬉しい。
ちょっと腰高のシートに座りエンジンを始動。軽い操作感のクラッチをつなぐと軽快なシングルサウンドに蹴り出されるように走り出す。さすが大排気量シングル、低~中回転域で図太いトルクを発生。わずかなアクセル操作だけで交通の流れに乗ることができる。そして前が空いた瞬間にアクセルを大きく開けると、ビッグシングル特有の豪快なダッシュが味わえる。これはかなり刺激的な体験だ。
スリムな車体だが剛性は高く、フルブレーキングでもヨレない。そしてハンドリングは軽快そのものだ。コーナーの入口では最大の重量物であるエンジンの存在を感じないほどクイックにバンクしていく。足まわりの設定が適切なのでコーナーリング中の姿勢も安定していて、軽量車にありがちなフラつき感もほとんどない。立ち上がりでアクセルを開けると、強大なトルクを活かして鋭くダッシュしていく。実に痛快なフィーリングだ。スクランブラースタイルながら峠道も得意ステージなのだ。
ならばオフロードが苦手かというとそんなことはなく、サスペンションの設定が絶妙なこともあって不整地での走破性やコントロール性はかなり高い。オフロードがあまり得意じゃないと自覚しているボクのようなライダーでも、不安なくダートに入っていけるほどなのだ。「スクランブラーとしてしっかり作り込んでいる」というメーカーの言葉は偽りではないと実感した。
世の中のには多くのスクランブラーモデルが存在するが、オン/オフの両立を実現できているものはそう多くはない。その中でもキャバレロ・スクランブラー500は、どちらのフィールドでも我慢せずにライディングが楽しめる存在だ。さらに車体全体のクオリティも高く、ハイレベルな完成度を誇る一台だといえるだろう。
ファンティック「キャバレロ スクランブラー 500 デラックス」注目ポイント
ファンティック「キャバレロ スクランブラー 500 デラックス」主なスペック・価格
全長×全幅×全高 | 2166×820×1135mm |
ホイールベース | 1425mm |
シート高 | 820mm |
車両重量 | 150kg |
エンジン形式 | 水冷4ストSOHC4バルブ単気筒 |
総排気量 | 449cc |
ボア×ストローク | 94.5×64mm |
最高出力 | 40HP/7500rpm |
最大トルク | 43N・m(4.4kgf-m)/6000rpm |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 6速リターン |
ブレーキ形式(前・後) | Φ320mmシングルディスク・Φ230mmシングルディスク |
タイヤサイズ(前・後) | 110/80-19・140/80-17 |
メーカー希望小売価格 | 130万円(消費税10%込) |
文:横田和彦/写真:南 孝幸/モデル:ノア セレン