文:太田安治
バイクの任意保険加入率は50%にも達していない!
任意保険普及率
二輪車 44.8%
自家用普通自動車 83%
対人賠償2021年3月 損害保険料率算出機構
※共済の加入者は含まない
二輪車の「任意保険」加入率は約45%! えっ!? 少なくない?
一度でも事故や転倒といったアクシデントを経験した人は、保険の重要性を知っているだろう。相手を負傷させたり、車両を傷付ければ賠償金の支払いを求められることがほとんど。被害者保護の観点から、法律によってすべての車両は自賠責保険への加入義務がある。これが『強制保険』とも呼ばれる理由だ。
しかし自賠責保険は支払われる金額の上限が決まっているから、「全然足りない」という状況が起きる。これをカバーするのが、契約者が補償内容を選んで加入する任意保険だ。自分の過失で相手を死亡させてしまった場合、賠償金1億円超えは当たり前で、5億円超えという判決も出ている。一瞬の事故でいきなり億単位の借金を抱えることになるのだ。
二輪車の任意保険加入率が約45%に留まっているのは、ライダーがこの現実を知らない、もしくは背を向けているからではないだろうか。改めて任意保険の意味を考えて欲しい。
自賠責保険と任意保険のちがい
「保険? もちろん入ってるよ」という人でも、〝自賠責〟と〝任意〟保険の区別、補償内容の違いを把握していないことが多い。単独事故や転倒で自分がケガをした場合、自賠責保険からの補償は一切ない!
自賠責保険は相手を補償する保険! 自分や同乗者、車両は補償されない
自賠責保険と任意保険の補償範囲 | ||
自賠責保険 | 任意保険 | |
対人補償 | △ 傷害120万円まで 後遺障害4000万円まで 死亡3000万円まで | 〇(対人賠償保険) |
相手方の車両や物など | × | 〇(対物賠償保険) |
自身や家族、同乗者の傷害・ 死亡など | × | 〇(自損事故保険) 〇(搭乗者傷害保険) 〇(人身傷害補償保険) |
自分の車両 | × | 〇(車両保険) |
相手方が無保険車だった場合 | × | 〇(無保険者傷害保険) |
自賠責保険は原付、オートバイを含むすべての自動車に加入が義務づけられている。無保険で運行すると1年以下の懲役か50万円以下の罰金、違反点数6点・免許停止で処罰される。また、自賠責保険は被害者一人当たりへの支払限度額がある。治療費、休業損害、慰謝料は合計120万円まで。後遺障害が4000万円、死亡では3000万円が上限だ。
自賠責保険の補償内容 | |
限度額 | |
傷害による損害 治療関係費/文書料/休業損失/慰謝料 | 限度額(被害者1名につき) 最高120万円 |
後遺障害による損害 逸失利益/慰謝料等 | 神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への 著しい障害を残して介護が必要な場合 ・常時介護を要する場合 最高4000万円 ・随時介護を要する場合 最高3000万円 上記以外の後遺障害 (第1級)最高3000万円〜(第14)最高75万円 |
死亡による障害 葬儀費/逸失利益/慰謝料 | 最高3000万円 |
今や死亡補償は1億円があたり前の時代、でも自賠責保険の死亡補償はたったの3000万円
自賠責保険(正しくは自動車損害賠償責任保険)は被害者の保護が目的なので補償対象は『対人』のみ。死亡事故の場合は慰謝料だけで2000〜2800万円、逸失利益(事故が起きなければ将来得られたであろう収入の減少分)と合わせると1億円程度になることも多い。自賠責保険での不足分や自分の損害を補填するには『任意保険』への加入が最善策。
代理店型とネット型のちがい
テレビやWEBでは掛け金の安さを謳い文句とした『ネット型』保険の広告を頻繁に目にする。補償内容が同じなら安いに越したことはないが、従来の『代理店型』保険に加入するのは損なのだろうか?
代理店型
ネット型に比べて保険料は高い! でも代理店型は対面で相談できる
ネット型
ネット型保険は安い! でもいざという時にどれだけ親身になってくれるのか不安……
掛け金の安いネット型保険と加入者により寄り添ってくれる代理店型保険。双方の特徴とは?
ネット型(ダイレクト型、通販型とも呼ぶ)保険は、WEBサイト上もしくは電話で加入者自らが見積もりから加入手続きまで行う。保険料が安い理由は、代理店を通さないので人件費などのコストが抑えられるからだ。
対して、代理店型(従来型、店舗型など)の保険は、プロの保険募集人が店舗内や、または自宅や職場まで出張してきて補償内容の詳細な説明、相談、加入手続きまで行う。また、実際に利用したことがある人からは事故時の対応に差があるという意見もある。ネット型保険は事故の際にサポートセンターに連絡して、決められた担当者が相手方と交渉する。もちろん担当者との対応も自分でやらなければならず、交渉内容に不満などがあったとしたら、自分で担当者とやりとりする必要がある。その分、保険料が安いのが特徴。
代理店型は事故の際、サポートセンターに連絡する人よりも代理店に連絡する人のほうが多く、保険会社との間に代理店が入ることにより、保険会社との交渉や困った際の相談に乗ってくれるなど、細やかな対応が特徴。
以上のことから、任意保険の内容をしっかり理解していて、事故の際の流れもわかっている人なら、保険料が安いネット型でもいいだろう。だが初めて任意保険に加入するという人は、代理店が契約者に寄り添って処理、手続きなどをサポートしてくれる代理店型のほうが安心だ。
プロが教えるバイク保険のおすすめプラン
一般総合バイク保険おすすめプラン | |
対人賠償 | 無制限 |
対物賠償 | 無制限 |
人身傷害 | 3000万円 |
特約 | 人身傷害諸費用 弁護士費用 |
任意保険の補償対象と金額は自分で選ぶ
任意加入の自動車保険で、最優先するのは被害者保護を目的とした補償。怪我、後遺症、死亡に関する対人賠償と、相手の自動車などの物に関する対物賠償だ。この2つは高額になりやすいので、迷わず『無制限』を選ぶべき。自分に関する補償は種類が多いが、最低でもケガの治療費や休業損害、逸失利益を補償する『人身傷害』への加入を薦める。修理代などを補償する『車両保険』は掛け金に割高感があり、加入率は2%に満たない。
20等級 | 11等級 | |
30歳 | 3万2470円 | 4万2810円 |
40歳 | 3万1340円 | 4万1200円 |
50歳 | 3万1830円 | 4万1910円 |
60歳 | 3万3080円 | 4万3670円 |
65歳 | 3万4790円 | 4万6070円 |
70歳 | 3万8150円 | 5万800円 |
75歳 | 4万1940円 | 5万6130円 |
等級と年齢で保険料はこんなに変わる
保険料は加入者の年齢と等級の組み合わせで決まる。年齢は40〜50歳代が最も安く、若年層や高齢者ほど高い。等級は6等級から始まり、事故がなければ段階的に等級が上がって保険料の割引率が増える。逆に事故があると事故内容によって1〜3等級下がって割増または割引率が減る仕組み。上限の20等級になると最大63%も割引になるが、最初の2年間は割引率が低く、ネット保険との差が大きい。自分の保険料を正確に算出しておこう。
任意保険の豆知識
間違った申告をすると保険が支払われないかも……
任意保険は補償の種類が多岐にわたるだけではなく、加入者の年齢、補償される運転者の範囲(本人限定〜限定なし)、車両の使用目的を申告して契約する。申告内容に誤りや虚偽があると保険金が支払われないこともある!
弁護士特約は必ず加入しよう
停車中に追突された、信号無視の車に衝突された、といった被害者(ここでは保険に加入しているライダーと仮定)に過失がない『もらい事故』は被害者から加害者への賠償が発生せず、被害者側の保険会社は示談交渉を代行できない。また、相手が任意保険未加入で、損害賠償請求に応じないこともある。こうした場合に頼りになるのが、法律相談から交渉までの弁護士費用を補償される弁護士費用特約。加入を強く推奨する。
友人のバイクを運転中に事故を起こしたら、どうなる?
友人・知人のオートバイを借りて運転中の事故は、そのオートバイが任意保険に加入していなければ必ず加入している(はずの)自賠責保険が被害者に対して適用されるのみ。これを補填するのが『他車運転特約』で、借りたオートバイを自分が契約しているオートバイと見なし、自分が加入している任意保険の条件に従って対人、対物、人身傷害、自損傷害などの補償を受けられる。
レジャー? 業務? 使用目的を偽ったら
保険会社によっては『使用目的』を申告する必要があり、基本的には「日常・レジャー」「通勤・通学」「業務」の3つに分けられる。通勤・通学と業務は年間を通じて月15日以上使用する場合。これ以下なら保険料の安い日常・レジャーでの申告になる。ネット保険では「年間走行距離」の申告を求めるところもあり、申告より大幅に上回ると告知義務違反として保険金が支払われないこともある。
『ファミリーバイク特約』とは?
オートバイ/自動車の任意保険に付加できるのが『ファミリーバイク特約』。対象は排気量125cc以下の原付二種/一種だけだが、車両ではなく被保険者に掛ける形なので、自分だけではなく家族の所有車、借りたバイクも対象。特に複数のファミリーバイクを所有している人には魅力的な特約だが、主契約以外の1台を長く乗るという人なら個別に任意保険に加入した方が安上がりになるケースもある。
車両保険で盗難は補償してくれない
自動車の車両保険は修理代金の補償のほかに『盗難補償』が付くが、オートバイは盗難に遭いやすい現実もあり、盗難の損害を対象外とする保険会社が多い。車両保険の加入率が自動車の63.8%に対してオートバイは1.8%しかないのはこれが要因。盗難補償が必要なら、車両の盗難や破損に特化したネット保険、メーカー系ディーラーやオートバイ販売店が独自に扱っている専門の保険に加入しよう。
『車内外身の回り品特約』の注意点
あまり知られていないのが『車内外身の回り品特約』だ。契約しているオートバイで外出または日常保管中に、事故や盗難によって発生した個人の身の回り品の損害を補償する。ただし条件や対象が保険会社によって異なり、車両に固定されているテールボックスやパニアケースの中身(カメラなど)は対象になるが、簡単に外せるタンク/シートといったバッグ類と中身は対象外になることが多い。
文:太田安治