イタリアのドゥカティ・ハイパーモタード698がいよいよ日本へ上陸。東京モーターサイクルショーを皮切りにその実車が公開される。一足先にOff1では、エンジン内部までレポート

画像1: 超絶ファンライド、ドゥカティのハイパーモタード698はどれほど我々の心を打つか

DUCATI
Hypermotard698

痛快なアスファルトダンスが、電子制御の力であなたにも!?

画像: 『Rodeoロデオ』本予告 ★ 6月2日(金)公開 youtu.be

『Rodeoロデオ』本予告 ★ 6月2日(金)公開

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第75回カンヌ国際映画祭で、ある視点部門《審査員の心を射抜いた(クー・ド・クール・デュ・ジュリー)》賞を受賞した映画『ロデオ』はご覧になっただろうか。フランスのアウトローたちをテーマとして扱った物語は、クライムアクションなこともあって映画内でのライフスタイルなど断じて奨められる内容ではないものの、劇中で描かれるアスファルトでのオフロードバイクの熱狂ぶりは凄まじいモノがあった。北米でも、欧州でも、確かに貧困層、ギャングたちによる「ストリート」におけるモトクロッサーカルチャーは存在している。

彼らがその先に見るものは、一体何なのだろうか。

画像: Ducati Hypermotard 698 Mono | Live. Play. Ride. youtu.be

Ducati Hypermotard 698 Mono | Live. Play. Ride.

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ドゥカティが提示したPVから感じ取れるのは、もしかすると映画「ロデオ」に出てくるストリートチルドレンのカルチャーの先にあるものかもしれない。アスファルト上でフロントを空高く上げ、時にスライドをキメる。あくまでサーキットでのエクストリームライドだが、要所に差し込まれるストリートのシーンでHypermotard698とストリートシーンをうまく繋げている。こんなアクロバティックなシーンを見せて、ドゥカティは一体どうしたんだろうと思っていたら、どうやらこのハイパーモタード698は冗談ではなく多くの人がウイリーやスライドができるマシンに仕上がっているらしい。

スライド・バイ・ブレーキという名称の電子制御スライドコントロールデバイスがハイパーモタード698には採用されている。技量別に4段階のスライドモードを選ぶことができ、それぞれコーナリングABSが最適に働いてスライドがしやすくなるという。同じようにドゥカティ・ウィリー・コントロールも4段階から選択できる。こちらには最高レベルに「EVO」と呼ばれるサーキット専用モードも設定されており、マフラーと専用マッピングに変えることで長距離のウイリーを可能にするとある。とんでもなくやんちゃなバイクなのだ。

スーパークアドロ=スーパービッグボア
究極のショートストローク

画像1: スーパークアドロ=スーパービッグボア 究極のショートストローク

ハイパーモタード698が発表されたとき話題になったのは、このエンジンの素性がとても個性的だったこと。何よりも116mmものボアをもつピストン、ボアストローク比1.86:1というスペックは、ウルトラショートストロークの4ストモトクロッサーですら聞いたことが無い。参考までにモトクロッサーの中でもとりわけショートストロークである2024年式KTM250SX-Fのボアストローク比は1.67:1である。

もしかしたら筆者が妄想していただけかもしれないが、誤解があるといけないので先に書いておく。このスーパークアドロ・モノエンジンは、イタリアのモトクロス選手権でヒート優勝したばかりのプロトタイプのデスモ450MX
のエンジンとはまるで血統が違うものだそうだ。スーパークアドロ・モノはあくまでレーシングエンジンでは無く、15,000km毎のオイル交換を可能にしたストリート向けエンジン。2本のバランサーシャフトが組み込まれていて、快適性も高い。

ドゥカティジャパンの森氏によれば「環境規制に合致してお客様の所有コストをあまり阻害すること無く、同時に高いパフォーマンスを達成する設計思想に基づいたエンジンです」との説明。前代未聞の超ショートストローク設計が目指したのは「単気筒でありながら実質的なレブは10,250回転。(中略)こういったハイパフォーマンスのシングルエンジンは、中速のトルクが一番厚いところと、ショートのギヤレシオを組み合わせて、パンパンパンとシフトダウン、シフトアップするスポーツライディング」だという。単気筒エンジンの「もう500回転回ってくれたら、最高に楽しそうなのに!」という不満、感じたことはないだろうか。それを解決してくれる、とてもエキサイティングなエンジンなんだろうと思うと、とにかく早く乗らせて欲しい、と前のめりにならざるを得ない。

画像2: スーパークアドロ=スーパービッグボア 究極のショートストローク

その象徴的な姿がこれだ。あまりにショートストロークなので、クランクウェブの間をピストンスカートが通るのだという。

画像3: スーパークアドロ=スーパービッグボア 究極のショートストローク
画像4: スーパークアドロ=スーパービッグボア 究極のショートストローク

シリンダーブロックが存在しない“縦割”のエンジンであるところも面白い。ドゥカティはV4以外縦割エンジンで、組み立てコストを抑えているとのこと。オフロードバイクではその名を潰えてしまったフサベルが縦割エンジンを採用していた。エンジン全体の組み立ては容易で精度も出しやすいが、その代わりにピストンの交換をするのに腰下を割る必要がある。このハイパーモタード698のエンジンは、659ccながら10,000rpmを超える超高回転エンジンなのにバルブクリアランスチェックは30,000km毎でOKだというのだから、よほど耐久性に自信を持っているのだろう。参考までに申し上げておくと、デスモ450MXは外見から判断するにオーソドックスな“横割”エンジンでシリンダーブロックらしきものが見て取れる。

デスモの優位性はどこにあるか

デスモドロミックはアイデンティティとしてモトクロッサーにも搭載されたドゥカティをドゥカティたらしめている機構だ。Off1を愛読いただいているコアなオフロードバイクフリークのみなさんには、もしかするとあまり馴染みが無いかも知れないので、説明させていただく。

デスモというのは、強制開閉バルブ機構のことだ。一般的なDOHC、SOHCは吸排気バルブをバルブスプリングの力でバルブシートに押しつけている。バルブ開閉時にカムあるいはロッカーアームが、バルブを押し、スプリングがバルブを戻す。超高回転時にスプリングがカムの動きについていけなくなってバルブの開閉タイミングがずれたり異常な動きをすると、ピストンとバルブが当たってエンジンブローしてしまうわけだ。デスモはバルブスプリングの力でバルブを戻すのでは無く、戻し用のカム山で戻し用のロッカーアームを動かして機械的にバルブを戻す。理論的には超高回転までバルブシステムが耐えてくれるのである。

画像: デスモの優位性はどこにあるか

しかし、オフロードフリークのみなさんにとってデスモの優位性はむしろ低中回転域にあるのではないだろうか。一般的なエンジンのバルブスプリングは高回転に耐えるよう相当な反力を持っていて、これがエンジン内部で大きなフリクションになっている。一方でデスモにはそれがない(というと語弊があって、戻し用ロッカーアームとシムの間に生じる極わずかなクリアランスを埋めておくために、弱いスプリングが入っている)。一般的なエンジンのヘッドからタイミングチェーンを外して手でカムを回そうとしても到底無理だが、デスモのエンジンはスルスルと回るほどフリクションに違いがある。デスモのスタッフ曰く「このフリクションの違いは、低中回転で優位性があります」とのこと。話を戻すと、デスモ搭載のエンジンは低中回転域ほどするすると回る。フリクションがほとんど無いということは、ストール耐性が強く、さらにトルクフィーリングもいいはず。これはオフロードバイクにとって、とてもいい方向に作用するのでは無いだろうか。

ハイパーモタードに土の匂いは一切しない。だが…

画像1: ハイパーモタードに土の匂いは一切しない。だが…

ハイパーモタード698のシュラウドを見ると、上下で物理的に分割されていてとてもスタイリッシュだ。ラジエターが1枚で横付けだからできるレイアウトだろう。

画像2: ハイパーモタードに土の匂いは一切しない。だが…

フレームはエンジンを吊り下げ、アンダーフレームを無くしたトレリスフレームを採用する。

画像3: ハイパーモタードに土の匂いは一切しない。だが…

美しいスタイリングはさすがドゥカティだと頷くばかりだが、土の匂いは一切しない。ドゥカティ本社もダートについて一切のPRをしていないし、そもそも土の上を想定したモーターサイクルではないのである。

90年台にドゥカティは欧州で流行っていたシングルレース向けにスーパーモノというマシンを生産している。550ccながら70HP以上の出力を誇り、市販化が待ち望まれていたがついに一般人の乗れるものにはならなかった。このたびのハイパーモタード698よりも先に、スーパークアドロ・モノエンジンが公開されたことはとても意味深である。ドゥカティファンの多くが「これはスーパーモノの再来か!」と期待に胸を膨らませた。ハイパーモタード698というマシンは、Lツインを搭載したハイパーモタード950や796同様に根っからのロードマシンとして期待されているし、実際にそのPVを見る限りアスファルトを誰もが自由自在に走ることが出来る最高のファンマシンに仕上がっている。これはこれでとても面白そう、まるでダートライディングと同じようなエキサイティングな楽しさがありそうだと感じる。それにこのマシンを通じて、将来市販されるであろうデスモ450MXに思いを馳せることも出来そうだ。

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