これまで巡った神社の数は1万数千社を超える神社ソムリエの佐々木優太が、バイク好きのゲストにぴったりの神社を選び、ご案内しているこの連載。今回はレーシングライダーの水野涼さんがゲストとして登場です!
まとめ:斎藤 ハルコ/写真:松川 忍
※神社境内での撮影は、特別な許可を得ています。
※この記事は、月刊『オートバイ』2024年6月号に掲載したものを一部編集して公開しています。

水野涼×佐々木優太 開運ツーリングトーク

画像: 「バイクは機械だから100%以上はない、でも人間の可能性は無限大です」(水野 涼) 「水野さんの考え方や行動力を知ってレースが観たくなりました」(佐々木優太)

「バイクは機械だから100%以上はない、でも人間の可能性は無限大です」(水野 涼)
「水野さんの考え方や行動力を知ってレースが観たくなりました」(佐々木優太)

世界に挑戦する夢のためにはこの1年、2年が勝負です

佐々木優太(以下佐々木) ところで水野さん、モテるってどんな感覚ですか?

水野涼(以下水野) いやいや、全然モテてないです!(笑)

佐々木 突然すみません(笑)。でもこれだけのイケメンで、しかも日本トップレベルのライダーなんて絶対モテるなと思って、つい聞いてしまいました。僕はもう子供3人いるし、そんなこと言ってる場合じゃないんですけどね。モテより養育費を稼がないと(笑)。でも今年40歳なんで、体力の衰えが著しくて…。

水野 でも僕も、若い時とは夢を追う感覚が変わりましたよ。5月に26歳になるんですけど、夢を追ってることに変わりはなくても、少しは将来や人生設計を考えないといけない年齢になってきたと感じます。もともと自分はずっとホンダ所属のライダーだったんですけど、今年はメーカーを移籍して、二輪レース界のレジェンドライダーである加賀山就臣代表が率いる「ドゥカティ・チームカガヤマ」から参戦すると決断した理由も、そこにあって。自分は海外志向がすごく強くて、世界で一番になりたいって目標があるんですね。全日本のタイトルは17歳(J-GP3クラス)と19歳(J-GP2クラス)の時に2回獲ってるんですけど、2回とも同じ年に、モトGP世界選手権のモト3クラス、モト2クラスにスポット参戦したんです。その年の全日本は敵なし状態だったのに、いざ世界戦に出たら全然ダメで。でもそれがショックじゃなくて、世界に出れば自分より速いライダーばかりなんだって事実が、ものすごく魅力的に思えたんですよ。

佐々木 すごい、そこで海外のレースに挑戦したい気持ちが決まったんだ。

水野 はい。で、23歳、24歳の2年間をイギリススーパーバイク選手権で走ったんですけど、またダメで、日本に帰ることになって。去年はやはり二輪レース界のレジェンドライダーだった伊藤真一監督が率いるチーム(Astemo Honda Dream SI Racing)で、ホンダ契約のライダーとして走ったんですが、世界に行くためにはやっぱり環境を変えなきゃいけないと感じたんですね。お金や安定を取るならホンダで続けた方が絶対に良かったけど、世界への可能性があるなら、ハイリスク・ハイリターンでも移籍しようと決めたんです。

佐々木 目指すは世界しかないと。

水野 ただ年齢的には、この1年か2年で世界に行ける切符をつかめなければ、自分の中の世界挑戦の夢は終わってしまいます。どんなに速くても、年齢がいってる選手は海外のチームからの需要がなくなってしまうんですよ。

画像1: 水野涼×佐々木優太 開運ツーリングトーク

佐々木 世界を走る水野選手の姿、すごく見たいです。ちなみにホンダ車からドゥカティ車に乗り変えて、どこにいちばん違いを感じましたか?

水野 ホンダに限らず国産車に言えることなんですが、国産車はフレームの中にエンジンを入れているので、エンジンの力でフレームを動かしてるような感じなんです。でも海外のメーカー、特にドゥカティはまずエンジンありきで、そこにフレームだったりタイヤをくっつけるから、エンジンそのものが走ってる感じがします。もちろん乗り味も違うし、根本のバイクに対する考え方がまるっきり違いますね。

佐々木 水野選手としては、どちらが良い悪いとか、好みではなく、勝つためにはどう扱うべきかを考えてるわけですか?

水野 そうですそうです! どちらが良いとか悪いじゃない。もちろん自分の好みのセットアップのスタイルはあるけど…極論、バイクってセッティングしなくても乗れるんですよ。ただそれでは自分の100%の力を発揮できないデメリットがあるから、みんなセッティングするわけです。でもバイクは機械だから、どんなにセッティングを重ねても100%以上の性能は出せません。対して人間は無限大に成長していくので、100%以上の力を引き出すためのセッティングはあるんです。

佐々木 なるほど! マシンに魔法は起きないってことですね。

水野 そう、機械にミラクルは起きないけど、レース中の人間にはミラクルが起きるんです。たとえば人間は危険を感じた瞬間、すべてがスローモーションになると言いますよね。あれって本当で、転ぶ瞬間は時間がものすごくゆっくりに感じられるんです。そんなすごいことが起きるくらい、人間の能力には無限大の可能性がある。それを引き出すためにはマシンのセッティングや、メンタル的なことも含めて、いくらでもやりようがあるんですよね。それこそあらゆるスポーツで、世界で戦う選手ほどメンタルトレーナーを付けているのも、競技を突き詰めていくほどに、メンタルが占める割合が大きいからだと思います。

画像2: 水野涼×佐々木優太 開運ツーリングトーク

佐々木 そういえば今回の事前アンケートをいただいた時に、僕はきっとチャンピオン獲得とか、自身のレース活動についての目標が書かれてるだろうと思ってたんです。でも実際は「自身の活動を通じてオートバイの楽しさを伝えたい」とか「オートバイは危険という先行イメージを変えたい」という、二輪業界そのものが盛り上がってほしいという目標や願いでしたね。

水野 たぶんイギリスで2年間レースをやるまでは、とにかく自分のことだけ考えていたんです。でもイギリスに行って、ライダーとお客さんとの距離の近さを感じたりするうちに、モータースポーツというより、バイクに対する考え方のベースが、日本とは全然違うと感じたんですね。イギリスだとバイクはクルマみたいに誰もが使うもので、敷居も高くないし、危ないものって感覚もない。みんなで乗って盛り上がれる、楽しい乗り物なんですよ。その感覚を2年間体験して日本に帰ってきたら、バイクがニュースになるのは事故のことばかり。もちろんバイクが危なくないとは言わないし、クルマと比べてリスクが高いこともわかるんですけど、その危険性ばかりフォーカスされるのはなぜなんだろうと思ったんです。自分はバイクにもっと良い部分もいっぱいあるよってことを、いちプロレーサーとしても、いちバイク乗りとしても、広くアピールしていきたいなって気持ちはすごく強くありますね。

佐々木 僕は今日、水野選手が普段からレースのためにジムに通ったり、トレーニングをされてると伺って思い出したのが、僕が本やメディアに向けた文章でよく決めに使う〝神社は心のジム〟って言葉なんですよ。たとえば明日引っ越しって時に、前日に1日だけジムで筋トレしても、重い荷物を運べる筋肉は絶対つかないじゃないですか。普段からジムに通って用意してる人だけが、明日引っ越しですと急に言われても「いけます! 」って言える。僕は神社に対しても同じ考え方で、参拝の時に一礼するから偉いんじゃなくて、神社での振る舞いを普段からずっとやり続けられる人に運が開けてくる思っているんです。それくらい普段からの準備や意識は大切で、僕が出会ってきた世界や日本のトップを走る方々は、どの業界でも間違いなくそれができてる方ばかりです。もちろん水野選手も同じだと思いますし、そうやって目標のために普段から時間を費やしている方を神社にご案内できて、神社ソムリエとしても幸せでした。今ものすごく、水野選手が走るレースを観に行きたいです! (笑)

水野 うわぁ、嬉しいです。絶対に勝ちますので、ぜひ観に来てください!

まとめ:斎藤 ハルコ/写真:松川 忍
※神社境内での撮影は、特別な許可を得ています。
※この記事は、月刊『オートバイ』2024年6月号に掲載したものを一部編集して公開しています。

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