バニャイアがついに今季スプリント初優勝!
予選ではランキング首位のホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)が今季3度目のポールポジションを獲得。地元凱旋となるバニャイアは2番グリッドからのスタートとなった。
3番手にはこちらもイタリアンメーカーのアプリリアを駆るマーベリック・ビニャーレス(Aprilia Racing)、4番手にはここまで予選で買いに沈むものの、決勝では表彰台に乗り続けているマルク・マルケス(Gresini Racing MotoGP)がつけた。
土曜日のスプリントは気温24度、路面温度43度のドライコンディションの中、11周で行われた。スタートでは2番グリッドのバニャイアが好スタートを切りトップに浮上、チームメイトのエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)が続き、早くもドゥカティワークスの2台がワンツー体制を構築した。
さらに後方では13番グリッドスタートの(Red Bull KTM Factory Racing)が得意のロケットスタートを切り、一気に4位まで浮上。しかし、2周目にはマルケスの先行を許してしまい5位でレースを進めることになる。
一方、ポールポジションスタートのマルティンはスタートで出遅れ3位となるも、2位のバスティアニーニに仕掛けていく。3周目のターン1では2台がラインを交錯させる中、バスティアニーニが転倒、コースに復帰するもピットに戻りリタイアとなってしまった。
これで先頭はバニャイア、2位マルティン、3位マルケスと今季優勝争いを繰り広げる3名がトップ3となり、集団から抜け出す格好に。そんな中、トップのバニャイアは快調に飛ばし、独走体制を築こうとしていた。
レースの折り返しとなる6周目、マルケスがマルティンを攻略し2位に浮上すると、1秒前をいくバニャイアに迫っていく。一方、マルケスに離されたマルティンは8周目のターン1で痛恨の転倒。これまで圧倒的な勝率を誇っていたスプリントでまさかのリタイアとなってしまった。
バニャイアとマルケスの優勝争いになった終盤戦は、マルケスがドゥカティ移籍後初の優勝に執念をみせ、ギャップをコンマ7まで詰めていく。しかし、バニャイアもペースを維持し、隙を与えることなくトップでフィニッシュ。今季初のスプリント制覇となった。
マルケスは最終的に1秒差の2位。リスクを犯さず決勝に向けて弾みをつける表彰台獲得となった。
3位には驚異のルーキー、ペドロ・アコスタ(Red Bull GASGAS Tech3)が入った。トップ2とはギャップが開いてしまったが、流石の走りをみせた。
バニャイアが母国で完全優勝!バスティアニーニが続きドゥカティワークスがワンツーフィニッシュ
決勝日も天候に恵まれたイタリアGP。気温22度、路面温度40度のドライコンディションの中、23周の決勝レースがスタートした。
ターン1で激しいポジション争いが行われる中、ターン2でトップに躍り出たのはバニャイアだった。以下、マルティン、バスティアニーニ、マルケス、アコスタというオーダー。
この日のバニャイアは序盤から好調。調子の良いマルティンを彷彿とさせるハイペースで2位以下との差を広げていく。しかし、スプリントで一気にポイント差を詰められたマルティンも意地を見せ、両者の差はコンマ7秒あたりで推移していった。
以降、大きな動きはなく我慢のレースが続く。マルケスはレース中盤に3位のバスティアニーニに迫り、残り6周でついに3位に浮上。しかし、バスティアニーニには余力があり、マルケスの背後にくっついたまま勝機を伺う。
バスティアニーニは再びマルケスを攻略し3位に浮上。この勢いのままバニャイアとの差を詰めることができないマルティンをも狙えるペースで最後の力を振り絞る。
そしてファイナルラップでバスティアニーニはマルティンとの差を一気に詰めていく。その前方ではバニャイアがトップチェッカー。母国イタリアでスプリント、決勝ともに優勝し、フルポイントを獲得してみせた。
2位争いは最後にドラマが待っていた。最後まで諦めなかったバスティアニーニが、最終コーナーでマルティンをオーバーテイク。文字通りラストチャンスをものにし、2位でチェッカーフラッグを受けた。
来年のドゥカティワークスのシートをめぐり、マルティンとマルケスどちらかがファクトリー入りするであろうと言われている中、「俺もいる」という気持ちが前面に出たようなバスティアニーニの見事な走りだった。
マルティンは最終盤に逆転を許し3位。スプリントではノーポイント、決勝でもバニャイアの先行を許してしまい、ランキングでは2番手のバニャイアとの差は18まで接近。1レースで逆転可能な差にまで詰まってしまった。
2024 MotoGP 第7戦イタリアGP 決勝結果
アコスタの来季KTMファクトリー入りが決定! そしてマルティンがアプリリアに!!
レースウィークに入り、アコスタが早くも2025年シーズンからRed Bull KTM Factory Racingに加入することが発表された。ビンダーはすでに複数年契約を結んでいることから、アコスタはジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)の後釜としてチームに加入することになる。
アコスタに関しては、最高峰クラスにデビューする際に、2年目はファクトリー入りするという条項が契約の中に入っていたという話があり、この発表は既定路線といえる。
しかし、わずか7戦が終わった段階での契約終結はデビューイヤーながらここまで素晴らしい活躍をみせているからこそだろう。
そして、レースが終わりムジェロテストがスタートした6月3日、ホルヘ・マルティンが来シーズンからAprilia Racingに加入することが発表された。
来シーズンのドゥカティワークス入りを狙っていたマルティンのアプリリアへの移籍は驚きを持って報じられた。
以前からドゥカティワークスにいけなければドゥカティから出ていくとまで言っていたマルティン。ドゥカティとしてはマルティンがファクトリー入り、マルケスをプラマックというシナリオがあったのかもしれない。しかし、6度の最高峰クラスチャンピオンであるマルケスがプラマック入りで妥協するとは到底思えない。
ドゥカティとしてもマルケスを繋ぎ止めたいはず。ここでドゥカティがマルティンではなく、マルケスを選んだのか、はたまた、マルティンが来季の契約を早い段階で決めて、今季のタイトル争いに集中したいと思い、待遇などを加味したうえでアプリリアを選んだのかはわからない。
ただ、マルティンがドゥカティ陣営から離れることはこれで決定。また、正式発表はないものの、マルケスのファクトリー入りもほぼ決まったと思われる。マルティンが抜け、マルケスもこないとなると、プラマックがサテライトチームを求めているヤマハと手を結び、ヤマハに移る可能性も大いにありえる。
今季もまだ7戦しか終わっていないが、来年に向けた動きがここにきて活発になってきた。
レポート:河村大志