日本から唯一の参戦となる平野ルナに注目!
2輪レースにおいて初めての試みとなる女性のみの世界選手権は、2018年のSupersport300チャンピオンのアナ・カラスコや、マリア・エレーラといった実力者の参戦も決まり注目を集めていた。
そんな中、日本から参戦を決めたのが全日本ロードレース選手権でST600クラスに参戦していた平野ルナだ。平野の海外でのレース経験はEWC(世界耐久選手権)2019-2020シーズンの第2戦セパンのみで、海外レースのフル参戦は今回が初となる。
ライバル勢は各ラウンドで使用されるサーキットでの走行経験が豊富で、チーム体制も構築し、YAMAHA YZF-R7での走り込みも十分に行われていたようだ。
そんな中、平野はマシンもサーキットもタイヤも初めて尽くし。手配してもらったメカニックとは開幕前に行われたクレモナ・サーキットでの公式テストで顔合わせとなるなど、まさに単身で乗り込む形となった。
開幕前のテストではステアリングステムが曲がっており、調整に時間を費やすことに。また、初日は後半から雨が降ったため、ドライでのテストを行うことができなかった。
2日目にようやく走り込むことができるようになったが、十分な準備ができないまま開幕を迎えることに。
それでも全日本ではスプリント、鈴鹿8耐やセパン8耐では耐久レース、排気量も1000ccまで乗りこなしてきた平野だけに、今回の挑戦も期待せずにはいられない。
日本で成長した平野が世界でさらなる飛躍を遂げようとしている。日本の代表として戦う彼女の姿に注目だ。
初レースは赤旗2回の大荒れに!
ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリが舞台となった開幕戦のエミリア-ロマーニャラウンド。
スーパーポールではマリア・エレーラ(KLINT FORWARD FACTORY TEAM)が記念すべき初のポールシッターとなった。2番グリッドにはサラ・サンチェス(511 TERRA&VITA RACING TEAM)、3番グリッドにはアナ・カラスコ(EVAN BROS RACING YAMAHA TEAM)。サンチェスはいきなり2強に割って入ってみせた。
12周の決勝は気温28度、路面温度38度のドライコンディションの中レースがスタート。エレーラが先頭のままターン1に侵入する中、カラスコが2位に浮上。後方ではいきなりオーネラ・ウンギャホ(YAMAHA MOTOXRACING WCR TEAM)とテイラー・レルフ(TAYCO MOTORSPORT)が転倒を喫してしまう。
2周目には早くも先頭集団が抜け出し、交互にファステストラップを出し合う激しい優勝争いに。そんな中、6周目のターン16でミア・ルーセン(RUSTHEN RACING)が転倒し、赤旗が出され、レースは中断となる。
ルーセンは脳震盪により病院に搬送された。このアクシデントによりレースは中断、午前に行われていたレース1だったが、午後に再開されることがアナウンスされた。
スケジューリングされて現地時間16時に再開となったレース1は残り5周の超スプリントで行われた。オープニングラップでは再び接触・転倒があり、再び赤旗に。今回は中断時間が短く、各車サイティングラップとウォームアップラップをこなし、3度目のスタートを切った。
レースの注目点はエレーラとカラスコによる激しい優勝争いとなった。毎周リードチェンジを繰り返しながら走る両者の戦いはファイナルラップでエレーラがカラスコとのバトルを制しトップチェッカー。記念すべき初レースをポールトゥウィンで飾ってみせた。
2位にカラスコ、3位にはサンチェスが入った。平野は19番グリッドからのスタートだったものの、決勝では印象的なパフォーマンスを披露。レースで順位を上げていった平野は14位でフィニッシュし、ポイントを獲得してみせた。
前方でライバルの転倒があり、集団ごと出遅れてしまった平野だったが、その中でも着実にポジションを上げていき、初戦で見事な走りで2ポイント獲得となった。
World WCR 開幕戦レース1結果
激戦を制したエレーラが連勝でチャンピオンシップをリード
日曜日に行われた決勝も気温26度、路面温度40度と快晴。前日と同じくドライコンディションの中、12周の決勝レースがスタートした。
前日に優勝し、今回は4番グリッドスタートだったエレーラが好スタートを切り2位に浮上。2周目にはカラスコを捕らえ早くもトップに浮上する。
エレーラとカラスコがバトルを繰り広げていたこともあり、3位のサンチェスと4位のベアトリス・ネイラ(AMPITO / PATA PROMETEON YAMAHA)の4台による優勝争いとなった。
エレーラとカラスコが毎周リードチェンジを繰り返す中、8周目のバックストレートエンドでサンチェスが隙をつきトップに浮上。しかし、エレーラとカラスコも意地を見せ、すかさずトップを奪い返す。
4台の激しいバトルも最終盤になるとエレーラとサンチェスの優勝争い、カラスコとネイラの3位争いにグループが分かれ、ファイナルラップに突入。
サンチェスはコース終盤の勝負どころであるターン14でエレーラを捕らえ、土壇場でトップに浮上。しかし、最終ターン16でエレーラがサンチェスのインに飛び込みトップに再浮上。コントロールラインに僅差で飛び込んだ2台だったが、エレーラが逃げ切り連勝、開幕ラウンドを完全制圧してみせた。
激しい優勝争いを演じたサンチェスが惜しくも2位、カラスコはネイラとのバトルを制し3位で表彰台を獲得してみせた。
21番グリッドスタートだった平野はレース2でも健闘。レース1同様ポジションを5つあげ、16位でフィニッシュ。ポイント獲得まであと一歩だったが、見事な追い上げを見せた。
YAMAHA YZF-R7とピレリタイヤという未知数の組み合わせに、初めてのサーキットで平野はウィークを通して最もポジションをあげたライダーとなった(計10ポジションアップ)。
経験値がない分、2レースをしっかり走り切り、マイレージを稼いだことは大きな進歩であり、その中でも結果を残したのは現状を考えるとベストな結果だったのではないだろうか。
7月12日から14日に行われる次戦のイギリスラウンドでも未経験なサーキットでの戦いになるが、フリー走行での順応、セットアップを見つけることができれば、より上位でのフィニッシュが見えてくる。
平野の走りは順位以上に世界で戦える可能性を見せてくれたと感じた。
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World WCR 開幕戦レース2結果
レポート:河村大志