『バーグマン400』まで続くスズキの“ビッグスクーター”の歴史
スクーターの利便性と大排気量のゆとりある走りをハイブリッドした「ビッグスクーター」。
現在スズキにも『バーグマン400』がラインナップされていて、高級感のある佇まいとツーリングでも頼もしい安定した走行性能で海外でも高い人気を誇っているモデルです。
今回はそんな「バーグマン」シリーズに至るまで、スズキから生み出された「ビッグスクーター」の歴史をご紹介します!
「スカイウェイブ」シリーズに始まるスズキのビッグスクーター史
1997年時点で軽二輪クラスの約4分の1を占めていた250ccスクーター市場にスズキから初めて投入されたのが1998年8月に発売された『スカイウェイブ250』。
1990年~2010年頃に流行したビッグスクーターブームに乗じてリリースされました。
最上級スクーターとしてのステイタス性を感じさせる上質なスタイリングを採用。A3サイズのアタッシュケースを収納できるシート下トランクスペース、フロント収納スペースなど、ライバルスクーターに負けない利便性を持ち合わせていました。
最高出力23PSを発揮するSOHC4バルブ単気筒エンジンは力強い走りを実現。
695mmという良好な足つき性と前後連動式ディスクブレーキによる高い制動性により扱い易さも両立し、安定性に寄与する13インチホイールとリンク式モノショックリアサスペンションを採用し、快適な乗り心地も実現しました。
「スカイウェイブ」は「上空波、最上空波、上空へ送られる(発信する)無線波」という意味で、「新しい商品性(コンセプト)を発信したい、伝えたい」と言う気持ちを込めて命名されたそうです。
ちなみに「スカイウェイブ」シリーズは輸出仕様としては「都会の男」という意味で「バーグマン」と名付け販売されたので、『スカイウェイブ250』が現在の「バーグマン」シリーズのルーツと言えるでしょう。
そして『スカイウェイブ250』の上級モデルとして2ヵ月遅れた1998年10月に登場したのが『バーグマン400』の祖となる『スカイウェイブ400』です。
スズキ初の400ccスクーターで、ゆとりのある高速クルージングや加速性能を求める要望に応え、1軸バランサーにより低振動化を実現した最高出力32PSを発揮する400cc水冷式SOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載。
『スカイウェイブ250』と並び、ビッグスクーターブームの中高い評価を得たモデルでした。
そんな初代『スカイウェイブ250』、『スカイウェイブ400』の登場から4年後の2002年、2台ともにモデルチェンジを受けます。
スタイリングは2灯式マルチリフレクターヘッドランプに5本スポークホイールに改められ、リアスポイラーも装備し、よりスポーティーなデザインに進化しました。
そして、このモデルチェンジで国産スクーターとしては初めて“フーエルインジェクション”が搭載。
これにより優れた走行性能に加え、始動性や燃費性能も向上しました。
またこのモデルチェンジの際、当時の量産スクーターとしては最大排気量にあたる650ccエンジンを搭載した『スカイウェイブ650』もラインナップに追加!
新設計のエンジンは水冷式の4気筒DOHC4バルブを採用し、街中から高速道路まで余裕のある走りを実現。
パワーモード変更機能により「パワーモード」、「ノーマルモード」の他5段階のマニュアル変速も可能!
量産二輪車初の電子制御式CVTシステムも装備し、ツーリングでのスポーティーな走りも楽しむことが出来ました。
スタイリングも最上級モデルらしい美しくも堂々としたスタイリングとなっていて、2005年にはABS、電動格納ミラー、電動可動式スクリーンなどまるで車のような高級装備を搭載した上級機種『スカイウェイブ650LX』も追加されました。
そして2006年、『スカイウェイブ250』と『スカイウェイブ400』に更なるアップデートが加わります。
スタイリングは更に洗練されたものとなり、新開発のフューエルインジェクション式水冷単気筒エンジンにより2人乗りでも力強い走りを実現。
高剛性の新設計フレームと更なる追従性を追求したリンク式リアサスペンションに乗り心地もより快適になりました。
ライダーへの走行風をスムーズにする新形状の大型スクリーンも心地の良いライディングをサポート。
『スカイウェイブ400』は2014年モデル、『スカイウェイブ250』は『バーグマン400』に引き継ぐまで細かなマイナーチェンジを受けながら、2017年の生産終了まで販売されました。
2013年には2002年に登場してから初めて『スカイウェイブ650』がフルモデルチェンジ。
凛々しさと上品さを表現した美しいスタイリングにアップデートされ、スズキのフラッグシップスクーターとして扱い易く進化しました。
電動格納式ミラーや電動可動式スクリーンの標準装備に加え、アナログ式メーターとマルチファンクション液晶を組み合わせたインストルメントパネルなど機能を充実。50PSを発揮する650ccエンジンもフリクションロスの低減やCVT制御の改良などにより、先代モデルより燃費性能が約19%も向上しました。
フローティング式を採用したブレーキには小型・軽量化したABSも標準で装備されました。
そして、スズキのビッグスクーター史において忘れちゃいけない存在……。
『ジェンマ』だァッ!
「低く流れるフォルムが未来的な印象の都会派スクーター」をコンセプトに開発されたスタイリングが特徴で2008年に登場したビッグスクーター。
「2人で乗ること」にこだわり、ライダーとパッセンジャーの一体感を重視したフルフラットシートや、跨ったままヘルメットの収納ができるフロントラゲッジスペースなど、デートやショッピングなどに役立つ利便性を備えます!
250cc水冷単気筒DOHCエンジンも低・中速トルクを重視したもので、街中でも快適な走りを実現していました。
個性的なスタイリングでひと悶着あったと聞く『ジェンマ』ですが、個人的にはかなり推しモデル!
正直今でこそ欲しい! なんなら毎日これで通勤したい感まであります!
……話を戻して2014年、ついに「バーグマン」の名を冠した 『バーグマン200』が登場します!
「スカイウェイブ」シリーズに共通する独立2灯型ヘッドライトとテールランプを採用した、上品でスポーティーなスタイリングを採用。
力強さと滑らかさを両立した200cc水冷式SOHC4バルブ単気筒エンジンは最高出力19PSを発揮。
装備重量は161kgと、乾燥重量で193kgだったスカイウェイブ250の3代目よりも大幅に軽量になり、車体もコンパクトで扱い易くなりました。
左右の足元付近を絞り込んだカットフロアボードの採用と735mmの低いシート高設定も相まって、通勤や普段使いでも高い快適性を発揮しました。
多機能メーターやフルフェイスヘルメットが2個入る41Lの大容量シート下収納スペースなど高い機能性も『バーグマン200』の大きな魅力でした。
残念ながら2021年のカラーチェンジを最後に生産終了していますが、スズキのビッグスクーターを語る上で外せないモデルのひとつでしょう。
そして2017年、現在唯一の400ccモデル『バーグマン400』が登場。
『スカイウェイブ400』の全面改良モデルとして登場し、名称はスズキの大型スクーターモデルのグローバルブランドとなった「バーグマン」に変更されました。
スカイウェイブシリーズの精悍なスタイリングを継承しながら、よりスリムでスポーティーなデザインへと進化しました。
400ccの水冷式エンジンは低・中速トルクが向上し、素早いスロットルレスポンスと力強い加速を実現。
高速クルージング、ワインディングもタンデムで余裕をもって楽しめるパワーと扱いやすさを持っています。
走行性能だけでなく、42Lの大容量シート下収納、大きなフロント収納ボックス、DCソケットなど便利な機能が充実。
タンデムツーリングでも扱い易く上質で快適な走りを楽しめる『バーグマン400』は欧州でも高い人気を博していて、スズキのラインナップの中で唯一のラグジュアリースクーターとして確固たる地位を築いているモデルです。
(下に続きます)
ビッグスクーターブームを駆け抜けた「スカイウェイブ」シリーズと、その性能・機能やスタイリングが現在まで受け継がれている「バーグマン」シリーズ。
「昔は街中ビッグスクーターがたくさん走っていた」と聞かされても今ではピンときませんが、最近プライベートであまりバイクに乗らなくなった(仕事でばかりバイクに乗ってる)ことから思っていることがひとつあります。
「ビッグスクーター、アリじゃないか?」
荷物はシート下に入るし雨風の影響は少ないし、パワーあるから幹線道路や高速道路も楽だし……。
自分もそろそろかな~。
一度試乗した『バーグマン400』はとても気に入っているバイクので、これから末永く続いてほしいカテゴリーです!
【文:石神邦比古(モーターマガジン社)】