7月5日から7日にかけて行われた第9戦ドイツGPは前半戦を締めくくる1戦となる。約1ヶ月のサマーバケーションに入るため、チャンピオンシップのみならず、ライダーの精神面でも後半戦に影響を及ぼすため重要なレースでもある。前半戦最後の1戦は今シーズンを象徴するようなトップ争いとなった。

2025年のラインナップは22名中12名が決定

ここ数週間で大きく動き出した2025年シーズンのライダー市場。アレイシ・エスパルガロが今シーズン限りでレギュラーライダーを引退することを発表して以降、ホルヘ・マルティンのアプリリア移籍、マルク・マルケスのドゥカティーファクトリー入りなど2025年に向けて市場が一気に動き出した。

また、ドゥカティのサテライトチームとして現在チャンピオン争いを繰り広げているPrima Pramac Racingがヤマハと複数年契約を締結。ヤマハのセカンドファクトリーチームとして2025年から新型「YZR-M1」で参戦することになった。

これにより、ドゥカティ陣営が8台体制から6台体制に縮小し、ヤマハは2台体制から4台体制に拡大。2025年からは参戦する全てのメーカーがサテライトチームを持つことになる。

エネア・バスティアニーニがTech3、マルコ・ベッツェッキがAprilia Racingにといった具合にメーカーを跨いでの移籍も多く、ここ数年で1番の変化が起こっている。

残る枠はあと10。すでにMotoGPクラス昇格を決めているフェルミン・アルデゲルの所属先や、Repsol Honda Teamの残り1枠に誰が収まるのか、中上貴晶の契約延長があるのかなど来年に向けてのライダー市場からまだまだ目が離せない。

2025年 MotoGPラインナップ一覧(7/7現在)

◾️Ducati Lenovo Team
・フランチェスコ・バニャイア
・マルク・マルケス
◾️Gresini Racing MotoGP
・アレックス・マルケス
・TBD
◾️Pertamina Enduro VR46 Racing Team
・TBD
・TBD
◾️Aprilia Racing
・ホルヘ・マルティン
・マルコ・ベッツェッキ
◾️Trackhouse Racing
・TBD
・TBD
◾️Red Bull KTM Factory Racing
・ブラッド・ビンダー
・ペドロ・アコスタ
◾️Red Bull KTM Tech3
・エネア・バスティアニーニ
・マーベリック・ビニャーレス
◾️Monster Energy Yamaha MotoGP Team
・ファビオ・クアルタラロ
・TBD
◾️Prima Pramac Racing
・TBD
・TBD
◾️Repsol Honda Team
・ルカ・マリーニ
・TBD
◾️CASTROL Honda LCR
・ヨハン・ザルコ
◾️IDEMITSU Honda LCR
・TBD

J.マルティンが得意のスプリントで優勝! M.オリベリラが今季初表彰台ゲット!

画像: フランスGP以来、スプリントで優勝を果たしたマルティン。

フランスGP以来、スプリントで優勝を果たしたマルティン。

シリーズで最も全長が短く、珍しい左回りのサーキットであるザクセンリンク・サーキット。右回りのコーナーがわずか3つしかないため、タイヤの右側が冷えやすく、初日から転倒が相次ぐ事態となった。

また、前戦オランダGPで激しいクラッシュに見舞われたアレイシ・エスパルガロ(Aprilia Racing)は右手第5中手骨を単純骨折していることが判明。オランダGPの決勝を欠場し回復に努めていたが、フリー走行1でコースインするも右手の痛みが激しいことから、今大会も欠場することを決断した。

ザクセンリンクにおける絶対的な存在といえばマルク・マルケス(Gresini Racing MotoGP)だろう。通算11度の優勝を誇る得意のサーキットで念願の今季初優勝を狙うマルケスだったが、初日のフリー走行1でハイサイドを喫し転倒。左手の人差し指を骨折し、胸部の打撲という厳しい幕開けになってしまった。

マルケスは怪我を負ったこともあり、Q1で一周のみのアタックに全てをかけたが、ステファン・ブラドルにレコードラインを防がれてしまい、Q1敗退。なんと13番グリッドからのスタートを強いられることになってしまった。

ブラドルには予選後、3グリッド降格のペナルティが科されている。

そんな絶対王者の不調をよそに、今年のタイトルコンテンダーは好調をキープ。ランキング首位のホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)がポールポジション獲得、ランキング2位のフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)は4位につけている。

ランキングトップの2台に割って入ったのはトラックハウスの2台。ミゲール・オリベイラ(Trackhouse Racing)が2位、ラウル・フェルナンデス(Trackhouse Racing)が3位と今季最高成績でフロントローに並んだ。

土曜日のスプリントは気温30度、路面温度44度のドライコンディションの中、15周で行われた。

スタートでは2番グリッドスタートのオリベイラがホールショットを奪うも、ターン2からターン4にかけてバニャイアが絶妙なラインどりでトップに躍りでる。

ここ数戦ではバニャイアの独走がパターン化されていたが、この日はマルティンが意地を見せた。

3周目にマルティンはバニャイアを攻略しトップに浮上。さらにオリベイラも続きバニャイアは3位に後退。バニャイアの背後には予選9番グリッドからスタートした僚友のエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)が接近し、ドゥカティ3台とアプリリア1台のトップ集団が形成された。

画像: ドゥカティ3台を相手に1人アプリリアで前戦するオリベイラ。

ドゥカティ3台を相手に1人アプリリアで前戦するオリベイラ。

レース中盤までこの4台でレースを引っ張っていたが、終盤に差し掛かるとマルティンがペースを上げ逃げにかかる。独走というわけではないが、着実にギャップを広めていき、終盤には2位以下に1秒以上の差をつけた。

マルティンはギャップを守り切りトップチェッカー。フランスGPでの優勝以来、約2ヶ月ぶりのスプリント優勝となった。

画像: 終盤に課題があったマルティンだったが、今回はその終盤でギャップを築き優勝。

終盤に課題があったマルティンだったが、今回はその終盤でギャップを築き優勝。

2位には予選の好調をキープしたオリベイラが入り今季初表彰台を獲得。怪我やチームが変わるなど大変な時期を過ごしたオリベイラだったが、本来の強さを発揮しドゥカティワークス2台を退けてみせた。

バニャイアはバスティアニーニを従え3位でフィニッシュ。10ポイントまで詰めていたマルティンとの差はこの時点で15ポイント差に広がってしまった。

画像: マルティンとしては落としたくなかったスプリントでの優勝。決勝でもトップを死守できるか。

マルティンとしては落としたくなかったスプリントでの優勝。決勝でもトップを死守できるか。

ザクセンリンクマイスターであるマルケスはスタートでポジションをあげると、周回を重ねるごとにポジションを回復。ファイナルラップの最終コーナーで6位のマーベリック・ビニャーレス(Aprilia Racing)を捕らえわずか1000分の3秒差で6位を獲得した。

バニャイアが4連勝でランキング首位に浮上! マルケス兄弟が揃って表彰台

画像: 接近戦が多かったドイツGP。

接近戦が多かったドイツGP。

晴天で気温の高かったスプリントに比べて涼しくなり観戦しやすい気候に恵まれた決勝日。気温20度、路面温度32度のドライコンディションの中、30周で決勝レースが行われた。

スタートはマルティンがホールショットを奪い、オリベイラ、バニャイアが続く。スプリントのようにマルティンに逃げられたくないバニャイアは早々にオリベリラを攻略すると、マルティンに仕掛けていく。

しかし、マルティンはトップの座を守り切り、レースをリード。バニャイアは2位に甘んじることになるが、順位を上げてきたフランコ・モルビデリ(Prima Pramac Racing)にも先行を許し3位に後退してしまう。

その後方ではマルク・マルケスが得意のザクセンリンクで躍動。後方からのスタート、体調も万全ではない中、6位までポジションアップした。さらに、トップ集団も狙える距離感でレースを進めていく。

ここまで速さをみせているプラマック勢がレースを引っ張る中、レースの折り返しとなる15周目にバニャイアがモルビデリを攻略し2位に浮上。以降、モルビデリはペースが上がらず、17周目にはアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)にもパスされ、表彰台圏内に落ちてしまった。

モルビデリの背後にはマルク・マルケスが急接近。22周目のターン1でモルビデリがラインを外してしまい大回りになる中、マルケスがインに飛び込んでいく。しかし、レーシングラインに戻ってきたモルビデリと接触し、体制を崩し、ギャップが開いてしまった。

画像: 無類の強さを誇るザクセンリンクで驚異的なパフォーマンスを見せるマルク・マルケス。

無類の強さを誇るザクセンリンクで驚異的なパフォーマンスを見せるマルク・マルケス。

しかし、この接触でマルケスにスイッチが入る。諦めずモルビデリとのギャップを詰めていったマルケスが残り5周でモルビデリをパスし4位に浮上。さらに3位を走る弟アレックスの攻略に動いていく。

優勝争いは残り2周でまさかの事態に。なんと先頭のマルティンがターン1で転倒を喫してしまったのだ。

レースの大半でこう着状態だった上位2台だったが、中盤から後半にかけてタイヤを温存し、終盤にコンマ1秒ずつ詰めてマルティンにプレッシャーをかけていたバニャイア。

チャンピオンの老練なテクニックと精神的追い込みがマルティンのミスを誘ったのかもしれない。しかしながら、マルティンにとって痛恨のノーポイントとなってしまった。

マルティンの自滅もあり、バニャイアは余裕を持ってトップチェッカー。4連勝を飾り、ランキング首位に浮上。最高の形で前半戦を締め括った。

画像: 王者の強かさを見た決勝レース。ついにバニャイアがランキング首位に浮上した。

王者の強かさを見た決勝レース。ついにバニャイアがランキング首位に浮上した。

マルティンの離脱により2位に上がったアレックス・マルケス。3位のマルク・マルケスに2秒のギャップを築いていたが、兄マルクが驚異的な追い上げをみせ、なんと弟アレックスをオーバーテイクし、土壇場で2位表彰台を獲得した。

後方からのスタートに加え、左人差し指の骨折、そして胸部の打撲という極めて厳しい状況の中での2位表彰台獲得。ザクセンリンクの王は強靭な精神力と卓越した走りを披露してみせた。

3位にはアレックス・マルケスが入り、マルケス兄弟が2人揃っての表彰台を獲得。兄弟2人が揃って最高峰クラスの表彰台獲得は、1997年イモラGPの青木宣篤氏と青木拓磨氏以来、27年ぶりの快挙となった。

画像: 決勝レースでは6戦連続でドゥカティが表彰台を独占している。

決勝レースでは6戦連続でドゥカティが表彰台を独占している。

苦戦が続くホンダ勢だが、中上貴晶(IDEMITSU Honda LCR)がホンダ最上位の15位でフィニッシュ。貴重なポイントを持ち帰っている。

今大会で今シーズンの半分が終了。サマーブレイクを挟み、MotoGPは8月2日開幕のイギリスGPから再開となる。

2024 MotoGP 第9戦ドイツGP 決勝結果

画像: resources.motogp.com
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レポート:河村大志

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