文・写真:西野鉄兵
ホンダ「CL500」渥美半島ツーリングレポート
「CL250」との明らかなちがい
「これが500の感じなのか!」。これまでしっかりと体感したことのなかった471cc・2気筒エンジンのパワーは、必要にして充分で、首都高では余裕たっぷりだ。
用賀から東名高速になり、車線も増え、流れはスムーズになる。時刻は午前10時前、のんびり起きて、だらだら支度していたら、中途半端な時間の出発となった。
「CL500」は「CL250」とメインフレームを共有し、車格やシート高は同じ数値。車両重量はCL500の方が20kg重いが、それでも192kgに納まっている。
CL250と比べれば、たしかにずっしりとした感じを受けるが、走り出してしまえば、重さは気にならない。それよりも、ゆとりあるパワーにありがたみを覚える。
180度クランクを採用したこの2気筒エンジンはスムーズに回転数が高まっていく。鼓動感を強調するのではなく、爽快感を表現している味付けだ。最高出力は46PSを発揮する。
数カ月前に同じ東名高速を「CL250」で走った。そのときは一番左の走行車線に自然と選んでいた。この「CL500」は中央車線を走りながら、ときに追い越し車線に出るのがまったく億劫ではなく、むしろそれが楽しい。いいペースで距離を稼げる。
東名高速の下り線は大井松田IC~御殿場ICの区間で右ルート・左ルートに分かれる。左ルートに行けば、定食の盛りがいい食事処がある鮎沢PAに寄れるのだが、今日は気づくと右ルートを選んでいた。
右ルートは左ルートを見下ろす形になり、眺めも少しいい。トラックが少なく、流れも速い。ここのところ西へ向かうツーリングは小排気量車ばかりだったので新鮮な気持ちだ。
朝から蒸し暑かったが、箱根の北部を抜ける山間のこのエリアは、少しだけ空気が冷たい。メッシュジャケットとメッシュグローブの穴から風が吹き抜けていく。
120km/h巡航の快適さ
新東名に入ると、特別な規制もなくすぐに制限速度が120km/hになった。「CL500」にはタコメーターが備わっていないので、回転数は分からないものの、ずいぶんと余裕がある感じだ。6速100km/hから、そのまま120km/hまで上げるのに気合いも覚悟もいらない。
「CL250」では90~100km/hがもっとも快適に感じたが、この「CL500」は110~120km/hが絶妙にちょうどいい。まだまだ最高速は出るのだろうが、そこそこのパワーを気持ちよく使って、力強く突き進んでくれる。単気筒と異なり、息苦しさがないのもいい。
それは疲労感の軽減にも繋がった。水分補給のためにネオパーサ駿河湾沼津に数分だけ寄ったが、その後は一気に遠州森町PAまで走った。編集部を出てから250kmほど移動している。
昼食をとったのち、浜松いなさJCTから三ケ日JCTを経て東名に戻り、豊川ICを下りて一般道に入った。「CL250」のときよりも静岡県の東西の長さがグッと短くなったように感じる。
燃費のよさにも満足
満タンから300kmほど走ると、メーターが給油を勧める表示に変わったので、ガソリンスタンドに入った。307.9km走り、給油量は10.28L、実測燃費は29.9km/Lとなった。メーターに表示される平均燃費計は29.8km。ほとんど誤差がない。しかし、惜しい。ほんのちょっと気をつかえば30km/L超えもできただろう。
豊橋の街中に入ると路面電車が走っていた。どこか懐かしい雰囲気は昔から変わらない。黄色の矢印信号を見ると、何だか嬉しくなる。
街を抜けて海岸線を目指していると、もわっとする緑の香りと土の匂いが潮風に乗ってきた。夏の半島の匂いだ。
夏の渥美半島
すぐに海に出た。渥美半島に着いた!
海水浴にはまだ早かったのか、渋滞にあうこともなく、すんなり来れた。
しかし暑い。バイクを下りると汗がどっと噴き出す。腕時計に備わっている気温計は39.3度。この日、愛知県が日本列島でもっとも暑かったようだ。
海っぺりの脇道はフラットダートだった。CLだとためらいなく進んでいける。スタンディングもしやすく、ちょっとした段差は楽しいと思えるほどで、スクランブラーらしさはしっかりと備えている。
海岸線の国道42号線を走っていると、ひまわり畑があらわれた。夏真っ盛り、元気よく咲き誇っている。観光客がいるものの、みなさんひと目見てクルマに戻っている様子。私も同じようにCLのもとへ戻って、さらに進む。
それにしても「CL500」のこの“500”というサイズのバイクは不思議だ。サイズは「CL250」と一緒なのに、とってもパワフル。乗るまでは、「どうせだったら750ccとかせめて650ccとかあったらな」なんて思っていたのだが、650ccクラスよりもいっそう扱いやすい“500”は、希少な存在なのだと考えをあらためる。
高速道路と一般道を半々程度、どちらもじっくり楽しみたい、という人にはうってつけだろう。また街乗りメインでときにはロングツーリング、という使い方をする人にもいい。中途半端な排気量と捉えるか、絶妙にちょうどいい排気量と捉えるか。
渥美半島の突端となる伊良湖岬。ここにある道の駅 伊良湖クリスタルポルトは、渥美半島の旅のゴールに相応しい。エアコンの効いた館内で、紙コップ自販機の氷入りコーラを飲んだ。
ここからは、三重県鳥羽や、三河湾の篠島を経て知多半島の師崎へとフェリーで渡ることもできる。
バイクに乗り始めたばかりの十代の頃、伊良湖から鳥羽へ渡って伊勢神宮に向かった。それから高野龍神スカイラインを走り、高野山金剛峰寺にも行った。使い捨てカメラで撮った写真が実家に残っているかもしれないが、記憶は断片的なものしか残っていない。
20年も経てば、ほとんど忘れてしまう。「CL500」で2024年の夏に伊良湖に来たことを記録するため、なるべく記憶しておくために、デジタルカメラのシャッターを切った。
その後のツーリング
翌日は、愛知県豊川市にあるSOTOブランドで有名な新富士バーナーの工場を見学。その後、せっかくここまで来たのだからと名古屋の知人に会いに行った。もう一泊して、2泊3日で総走行距離は870kmとなった。
帰り道は燃費を意識した走行で、31.5km/Lを記録。リラックスした姿勢で乗れるため、ノンカウルながら高速道路の移動は快適だった。CL250もいいバイクだけど、高速道路を使う長旅ならやっぱりCL500がいい!
ホンダ「CL500」主なスペック・燃費・製造国・価格
全長×全幅×全高 | 2175×830×1135mm |
ホイールベース | 1485mm |
最低地上高 | 155mm |
シート高 | 790mm |
車両重量 | 192kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 |
総排気量 | 471cc |
ボア×ストローク | 67.0×66.8mm |
圧縮比 | 10.7 |
最高出力 | 34kW(46PS)/8500rpm |
最大トルク | 43N・m(4.4kgf・m)/6250rpm |
燃料タンク容量 | 12L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 27° 00′ |
トレール量 | 108mm |
タイヤサイズ(前・後) | 110/80R19M/C 59H・150/70R17M/C 69H |
ブレーキ形式(前・後) | シングルディスク・シングルディスク |
乗車定員 | 2人 |
燃料消費率 WMTCモード値 | 27.9km/L(クラス3-2)1人乗車時 |
製造国 | 日本 |
メーカー希望小売価格 | 86万3500円(消費税10%込) |