試乗コースはあいにくのウェット……
試乗時のコースはあいにくのウエット。しかし、そこで光ったのがハンドリングの素直さだ。カウルという重量物がなく、グリップ位置が近いため、ハンドリングはR25よりも軽く、車体が短かくなったように感じる。切り返しでもハンドルに手を添えているだけで、腰で操るような感覚だ。これなら混雑した市街地でも、タイトターンの連続する峠道でも、気負わずリズミカルに走れる。
しかも前後タイヤ、特にフロントの接地感が高く、安心して攻め込めるのも特徴。ウエット路面でもグリップ状態が高い精度で伝わってくるし、滑り出しも穏やかで恐怖感がない。ウエット路面でもフルバンク近くまで持ち込めたのは、このヤマハらしい接地感重視のハンドリングあってこそだ。
同条件で試乗したMT-03も車体に関してはまったく同じだが、70ccの排気量差でパワー/トルクが2割近くアップしたことでトータルな運動性能はより軽快だ。極低回転域での粘り、低回転から中回転にかけての力強さが大きく増していて、街乗りなら3速ホールドで事足りるほど扱いやすい。
42PSというピークパワーはフルサイズの400ccスポーツモデルに及ばないものの、165kgの軽い車体がそれをカバーし、ゼロ発進や中間加速はフルサイズ400モデルと互角だし、最高速も180km/hに迫る。車検の手間や税金などの維持費が250より高いというネガ要素はあるが、より乗りやすく速い相棒を望むならMT-03の方がいいだろう。
試乗前に、商品コンセプトが『大都会のチーター』と聞いたときは今一つイメージが湧かなかったが、なるほど、このMTは「R25/R3をネイキッドに仕立てただけ」のオートバイではない。MTシリーズの一員らしく、れっきとしたストリート指向の別車種として完成されていた。
文:太田安治 / 写真:赤松孝、南孝幸
webオートバイ記事公開日:2019年1月21日
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