初心者に扱いやすく、戦闘的で、革新的で、丈夫で、誰が乗っても速い。YZ250FXの新型は熟成なんて言葉では言い表せない、次世代のクロスカントリーを提示するモデルに仕上がっていた。Off1.jpではヤマハ発動機販売の協力のもと車輌をお借りし、1年を通して徹底的にレビュー。まずはそのファーストインパクトをお届けしよう

画像1: 新YZ250FXに乗ってみた。毎年扱いやすくなると言われているが、今年はレベチです

YAMAHA

2025MY YZ250FX
¥1,006,500(税込)

ヤマハが作ってきたオフロードワールド

1913年から脈々と続くエンデューロレーサー達、その勢力図を変えたゲームチェンジャーがヤマハの4stエンデューロレーサーWR250Fだった。ヤマハがエンデューロモデルとして欧州をターゲットに開発したWRシリーズは、欧州の目の肥えたエンデューロレーサーたちの市場に投入された。YZ400Fが史上初の4stモトクロッサーとして登場した’97年から4年後、まだまだDOHC&水冷4ストレーサーの黎明期だったが、WR250Fはその高い完成度で幅広いライダー達に受け入れられていった。日本でも逆輸入車として販売されたWR250Fが増殖していき、いつしかエンデューロ会場はWR250Fだらけになった。

画像: - YouTube youtu.be

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YZ250FXというバイクは、かつて日本のオフロード界のデファクトスタンダードとして君臨したWR250Fの血脈を受け継いだバイクである。WR250Fが販売されなくなったタイミングで、YZ250Fが後方排気にモデルチェンジし、2014年にYZ250FXが鮮烈なデビューを果たす。2014年のJNCC爺ヶ岳AAGPで1〜4位を独占するという鮮烈なデビューを果たしてから早10年、今年はYZ250FXにとってのアニバーサリーイヤーであり、転換点になった。フルモデルチェンジしたYZ250FXは、それまでと次元の違うレンジの広さを持っているからだ。

画像: エンジン、フレームともにフルモデルチェンジ。吸気効率を高めた後方ダクトの樹脂製新作エアクリーナーボックス、フリクションロスが少なく丈夫になった新カムチェーン、そしてECUは国内専用セッティングである

エンジン、フレームともにフルモデルチェンジ。吸気効率を高めた後方ダクトの樹脂製新作エアクリーナーボックス、フリクションロスが少なく丈夫になった新カムチェーン、そしてECUは国内専用セッティングである

画像: FIMの新規制に伴いサイレンサーが変更。サイドカバーに新設されたスリットは、エキゾーストの熱対策とのこと

FIMの新規制に伴いサイレンサーが変更。サイドカバーに新設されたスリットは、エキゾーストの熱対策とのこと

画像: 旧型より遙かにスリムになった車体

旧型より遙かにスリムになった車体

毎年扱いやすくなると言われているが、今年はレベチです

YZ250FXは開発当初からJNCCで最も台数の多いFUN GP・Bクラスをメインターゲットにしてきた。JNCCに出るライダーの多くはレーサー慣れしていて、発表当初のYZ250FXもモトクロッサーに準ずるパワー&レスポンスを持つクロスカントリーバイク、というキャラクターであった。もちろんクロスカントリー専用にマイルドになっている部分もあったが、YZ250FXといえばモトクロッサー譲りの元気いっぱいなエンジンという印象だった。実際、鈴木健二は「全日本モトクロスのIBまでなら、戦えるくらいのポテンシャルがある」と常々言っていたほどだ。ただ一方で、この元気な特性は、レーサー慣れしていないライダーには少し手強かったようにも見えた。これは、FUN GPのBクラスに参戦するエントラントたちにかなり走れるライダーが多かったせいだと思われる。

その手強いYZ250FXが変化しはじめたのは2022年モデルからだ。エンジンのバランサー位相を変化させることで、レーサーならではの弾けるような振動が見事にまろやかになった。昔はパワーを落とす要因になるバランサーなどレーサーには不要だと思われていたが、エンジンパワーが飛躍的に上がった現代のバイクでは、トラクションの面などを考慮して振動を消した方がレーサーとして総合的な戦闘力も上がるという見解があり、昨今のエンデューロ、クロスカントリー系レーサーの振動は極めて少ない。実際、2022年モデルのYZ250FXからは「どの回転域からでも開けやすくなった」、「ぎくしゃくしづらい」と扱いやすい特性が急激に評価を向上させていった。

画像1: 毎年扱いやすくなると言われているが、今年はレベチです

今回の2025モデルは、何もせずに新車状態で乗るとこれまでより遙かに扱いやすくマイルドだ。開け始めのドンと出るレーサーらしい部分も無く、するすると前に出て行く。

「元々、YZ250FXはエンデューロ向けのマシンなのにモトクロス出身の僕でも気持ちよく走れてストレスがないマシンだと言う認識でした。パワフルでしっかり戦えるバイクだなと。これならモトクロスもいけるじゃん、って思ったほどでした。でも、この2025モデルはさらにいろんな意味で洗練されていて、いま世の中に出ているクロスカントリーバイクの中でも一番いいバイクだと思います」と2022年にYZ250FXでJNCC総合チャンピオンを獲った馬場大貴は言う。「いや、もう早くこれでレースしたいなと思いました。ノーマルでこんなに楽しいのか、っていうのが僕の第一印象です。特にウッズが面白いんですよ、ひらひらしていて軽快感がある。バイクの重さ自体はそんなに軽くなっていないのに、体感できる軽さはまるで違いますね。エンジンの扱いやすさも際立っていました。僕はみなさんより1速高いギヤでウッズを走っていると思うんですが、それでもしっかり路面に食いついてくれて、クイックに走ることができるんです。パワーが出過ぎて空転することもなく、その辺のバランスの良さが楽しさに繋がっているんだと思います。旧型は僕でも滑ってしまうような路面でコントロールに悩むことがあったのですが、2025モデルではトラクション性能が向上しています。旧型の長所を伸ばし、走りやすさをさらに極めたバイクです」

画像2: 毎年扱いやすくなると言われているが、今年はレベチです

電子制御によるモードの作り込みで、さらに扱いやすくセローのようにもなる

2024モデルのYZ450FXから、マッピングがユーザーフレンドリーになっている。それまでは4×4マスの燃料、点火タイミングマップをユーザー側でいじれるだけだったのが、単純に7段階でマイルド→アグレッシブのプリセットが用意された。450ccもあるとそもそものトルクが強大過ぎて違いがわかりづらかったのだが、新型YZ250FXの7段階プリセットはセッティングの差がとてもわかりやすい。最もアグレッシブなモードにすれば、昨年モデルと同等のパワー&レスポンスを発揮する。この2025モデルからFIMの新音量規制に対応したマフラーになっていて本来はパワーダウンするはずが、エンジン側の進化によって同等まで引き上げられている。これだけでもすごいことだ。逆に一番マイルドなモードにすると、セローに毛が生えたくらいまでレスポンスがおさえこまれ、初めてレーサーに乗る人でも怖くないレベルになる。

画像: 左手スイッチボックスに集約されたモードスイッチ&キルスイッチ

左手スイッチボックスに集約されたモードスイッチ&キルスイッチ

さらにトラクションコントロール(TC)が優秀で、これまたレンジがとても広い。現代の4ストレーサーではTCが当たり前になってきているが、これらは市販車のTCのようなものでは無くあくまでレーシングTCだ。ライダーのレベルや用途を加味し、TCの介入をかなり控えめにしたものばかりだし、むしろそれが評価されてきた。だが新YZ250FXは、最も強いTCにした場合の介入率を大幅に上げていて、ガレ場などでスロットルを全開にしても回転数は上がらずスルスル確実に登っていくようになる。

馬場は電子制御に対して「TCを効かせて走るとモトクロスコースでは少し物足りなさを感じたんですが、ガレではとても優秀でした。まったくリアタイヤが空転する気配がないんですよ。TCは3段階に切り替えられるんですが、最大に効かせるとまったく別のバイクになります。さらには、マッピングでパワーを抑えたモードにするとトレールバイクのようにパワーが抑えられるし、今回の2025モデルは自分で設定できる振り幅が大きいですね。パワーがありすぎて怖いというライダーにもおすすめできる。

ちなみに難しめで路面がフカフカのヒルクライムにもチャレンジしてみたのですが、かなり良かったんですよ。TCを効かせるとしっかり上ってくれました。トルクが抜けちゃって、諦めないとだめかもって雰囲気になっても粘ってくれるんですよ。うまくなった気になれますね! ハードエンデューロも出ちゃおうかなと思ったほどです」とコメントをくれた。

画像: 電子制御によるモードの作り込みで、さらに扱いやすくセローのようにもなる

コンパクトで軽く、そして10mm低い

「同じ車体を共有している昨年のYZ450FXに乗っていた方であれば、そのスリムさはわかりやすいんじゃないかなと思います。4ストって幅が広くてどっしりしてるイメージなんですが、2025YZ250FXではそのあたりが気になりませんね。あまりにも自然に乗れるので、そういえばフレーム新しくなったんだ、とあとから気づくほどナチュラルな印象で、ライダーに馴染みやすいんです。曲がりやすさや、ひらひらしたフィーリングはスリムな車体によるところが大きいんじゃないかなと思いました」と車体まわりも好印象だ。馬場はババナショックスというサスペンションプロショップを経営しているが「これは良くできていて、あまりモディファイする場所がないくらいですね……。僕らの仕事はサスペンションをノーマルから少し強めにしてローダウンするような加工をすることが多かったのですが、今回は逆に柔らかめにしてもいいかもなと思いました。モトクロスコースをしっかり走り込んでも、大きめジャンプの着地くらいしか物足りなさを感じないんですよ。いつもは自分のマシンは4つほどバネレートを上げているんですが、今回のは1レートも上げれば十分だなと」と苦笑いするほど。

画像: エンジンハンガーはYZ250Fと比べてもあえて剛性をアップしてある。ギャップなどでよりサスペンションを動かす設計思想によるものだ

エンジンハンガーはYZ250Fと比べてもあえて剛性をアップしてある。ギャップなどでよりサスペンションを動かす設計思想によるものだ

「これだけ完成度が高いマシンだと、JNCCのようなレースではライダーたちのレベルをひとつ上げることになりかねないなと思いました。全体的に少しペースが上がってもおかしくないですよね。マッピングがとにかく効くので、これをレース中にうまく使うのも面白そうです。僕がもしFUN GPに出るなら、好きなマッピングを1つ入れておきながら、もう1つはTCをマックスに効かせた設定にしておいて、難所がきたらモードを切り替えてクリアする、みたいな使い方をすると思います」

レーサーはあくまでレーサーらしく、パワフルでビギナーまでは想定しない……そんな不文律は、電子制御の登場で書き換えられたように思う。上級者から初級者までをもカバーできる懐の深さが、2025YZ250FX最大の武器だった。もしかすると馬場の言う通り、JNCCのレベルは上がってしまうかも知れない。しかし、これだけ懐が深ければ様々なオフロードライダー、いやオンロードライダーさえも虜にして初級者層を増やし、クロスカントリーシーンに新たなインパクトを与えてくれる可能性だってある。市場に投入され、ユーザーたちからの声が届くのがいまからとても楽しみだ。

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