抜群のスタート決めたマルティンが得意のスプリントで優勝!
マルク・マルケス(Gresini Racing MotoGP)が実に1043日ぶりの優勝を果たした前戦アラゴン。その余韻が冷めぬ間もなく連戦となった第13戦サンマリノGPは言わずもがなドゥカティとイタリアンライダーにとって母国GPとなる。
マルケスの復活劇の裏で苦しい状況に追い込まれたのは現チャンピオンであり3連覇を目指すバニャイア。しかし、多くのファンが押し寄せたここミサノでポールポジションを獲得、しかもオールラップレコードを更新しての一番時計だった。
2番グリッドにフランコ・モルビデリ(Prima Pramac Racing)がつけた。ヤマハ、そしてプラマックでも苦戦を強いられていたモルビデリだが、2021年第4戦スペイン以来のフロントローを母国イタリアで獲得した。
3番グリッドにもマルコ・ベッツェッキ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)が入りイタリア人ライダーがフロントローを独占。さらに3名ともヴァレンティーノ・ロッシのアカデミー出身者であり、サーキットに駆けつけたロッシにとっても誇らしい予選結果となった。
ランキングトップに躍り出たマルティンは4番グリッド、速さを取り戻しつつあるペドロ・アコスタ(Red Bull GASGAS Tech3)が5番グリッド、ブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)を挟み、前戦復活優勝となったマルク・マルケスは7番グリッドからのスタートとなった。
土曜日のスプリントレースは気温29度、路面温度42度のドライコンディションの中、13周行われた。スタートではセカンドローからマルティンが好スタートを決めホールショットを奪取。バニャイアはまたしてもスタートでライバルの先行を許してしまった。
レースは序盤からマルティン、バニャイア、モルビデリのトップ3が抜け出す展開に。動きがないままレースは進んでいくが、中盤になるとモルビデリがトップ集団のペースについていけず優勝争いから脱落。
優勝争いはマルティンとバニャイアに絞られ2台はコンマ5秒以内と緊張感のある距離感でレースを進めていく。バニャイアはスプリントを得意とするマルティンに喰らいつくも、前戦アラゴンで負った怪我の影響もあり、終盤になるとマルティンとの差が広がってしまった。
一方、後方ではマルク・マルケスが躍動。ビンダーとジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)のKTM2台を攻略すると5位を走るアコスタを猛追。終盤には驚異的な走りでアコスタの背後につけたマルケスはファイナルラップでアコスタをオーバーテイク。ブレーキングではなく、260km/hが出るターン11から12の高速コーナーでアコスタを抜き去った。
スタートを決めたマルティンは結局一度もトップの座を奪われることなく完勝。第9戦ドイツGP以来の優勝で、2位のバニャイアに対しポイント差を26にまで拡げている。
バニャイアは2位、3位にはモルビデリが入り、スプリントで初の表彰台を獲得した。4位にエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)、5位にはスプリントながら4台をオーバーテイクしたマルク・マルケスが入っている。スプリントの結果を受け、ランキング3位のマルケスと4位のバスティアニーニは234で並んでおり、ランキング3位争いも激しいものになっている。
気まぐれな天候を味方につけたマルケスがアラゴンに続き連勝!
決勝日は曇り空ながらMoto3クラスとMoto2クラスはドライコンディションで行われていた。しかし、MotoGPクラス開始ごろになると小雨ではあるが雨が降り出し、スタート時にはマシンの乗り換えを許可するホワイトフラッグが掲示された。
小雨が降る中気温30度、路面温度30度の難しいコンディションの中、27周の決勝レースがスタート。
今回はバニャイアがスタートを決めトップのままターン1へ侵入し、マルティン、モルビデリのプラマック勢が続く。
5周目、ポジションを4位まで上げていたアコスタがターン14で転倒。コースに復帰するも最後尾に後退してしまった。
一方、トップ争いはバニャイア、マルティン、モルビデリがトップ集団として周回を重ねていく中、7周目のターン1でモルビデリがターン1で転倒。この頃から徐々に雨足が強まってきていた。
雨量が増えたことで各車一気にペースダウン。先頭のバニャイアをはじめ、全車転倒しないように慎重に走る中、8周目にマルティンがいち早く動いた。真っ先にピットインすると、レインタイヤを装着したマシンにスイッチ。雨がさらに強まると予想したのだ。
そんな中、バニャイアはステイアウト。しかし、急激にペースが下がり、後続が一気に追いつく展開に。この難しいコンディションで抜群の速さを見せたのは6度の世界王者であるマルク・マルケスだった。
「ちょい濡れ」という最も難しいコンディションの中、トップ集団をかき分けていき、ついに首位のバニャイアまでも抜き去りトップに浮上。持ち味を活かして一躍優勝候補に踊り出た。
急激な雨はこのまま強まるかに思われたが、その後雨量が増えることなく路面コンディションも改善。ギャンブルにでたマルティンにとって痛い結果となってしまった。結局マルティンは再度ピットに入り、再びマシンチェンジを敢行。2位からなんとラップダウンの15位にまで後退してしまった。
路面が改善したことでバニャイアのペースも戻り、トップのマルケスに迫っていく。しかし、マルケスはペースを隠し持っていた。
残り10周を切るとチャンスとばかりに猛プッシュ。一時コンマ5秒差だった両者だが、終盤にきて1.5秒差となった。
ファステストラップも出しながらも安定したペースを刻み続けたマルケスが最終的にバニャイアに対し3秒もの差をつけトップチェッカー。前戦アラゴンの復活劇からの連勝となった。
バニャイアは優勝を逃すもマルティンの自滅もあり価値ある2位、3位にはチームメイトのバスティアニーニが入っている。
ポイントリーダーのマルティンはなんとか15位で1ポイントを獲得。しかし、スプリント終了時には26ポイントあったマージンが一気に7ポイント差になってしまった。
次戦はインドとカザフスタンの中止により、ミサノでの連戦となる。今回運に見放されたマルティンだが、昨年完全優勝した得意のサーキットでもある。2週間後では同地で再び輝きを取り戻せるのかに注目だ。
2024 MotoGP 第13戦サンマリノGP 決勝結果
レポート:河村大志