2024年9月20日から22日にかけて、イタリアのロンバルディア州サン マルティーノ デル ラーゴにあるクレモナサーキットでFIM女子世界選手権(FIM Women’s Circuit Racing World Championship、以降WCR)の第4戦イタリアラウンドが行われた。

レース1はエレーラがライバルを退け優勝!

レース1が行われた土曜日は天候に恵まれドライコンディションとなった。ポールポジションを獲得したのはランキングトップのマリア・エレーラ(KLINT FORWARD FACTORY TEAM)。2番グリッドには母国凱旋となるロベルタ・ポンツィアーニ(YAMAHA MOTOXRACING WCR TEAM)がつけ、自己ベストグリッドを獲得。3番グリッドにはランキング2位のアナ・カラスコ(EVAN BROS RACING YAMAHA TEAM)がつけた。

気温23度、路面温度32度のドライコンディションの中、12周のレース1がスタート。エレーラがトップを守りターン1に侵入する中、カラスコとサラ・サンチェス(511 TERRA&VITA RACING TEAM)がともに好スタートを決め、それぞれ2位と3位に浮上する。

2位に上がったカラスコはオープニングラップのバックストレートでいきなりエレーラをパスし先頭に躍り出た。スタートで出遅れたポンツィアーニが3位に浮上、後方ではサラ・ヴァロン(ITALIKA Racing FIMLA)が転倒を喫し戦線を離脱してしまった。

2周目に入るとトップ集団のエレーラとカラスコ、3位集団のサンチェスとポンティアーニが抜け出しバトルを展開。ここではサンチェスが3位に浮上している。

画像: エレーラとカラスコの激しいバトルが繰り広げられた。

エレーラとカラスコの激しいバトルが繰り広げられた。

翌周には3位サンチェスと4位ポンティアーニが先頭争いに加わり4台によるトップ争いに。この時、ジェシカ・ハウデン(TEAM TRASIMENO)にはジャンプスタートの判定が下り、ダブルロングラップペナルティが科されている。

4周目以降もトップ集団は順位を入れ替えながら周回し、6周目終了時点でカラスコがトップ、以下エレーラ、サンチェス、ポンツィアーニという並びだった。その中でもトップのカラスコと2位のエレーラが激しくバトルを展開していたが、7周目に赤旗が掲示された。

後方でアリシア・ウィッモア(EKHMET MOTORCYCLE RACING TEAM)がターン7で転倒したためだ。マシントラブルかは定かではないが、マシンの挙動を乱し転倒したウィッモアの救助のため、レースは一時中断となった。

数分後、レースがリスタートされるとアナウンスされ、各車一斉にサイティングラップを終え、グリッドに向かう。クイックリスタートですぐにウォームアップラップが行われ、残り5周の超スプリントレースがスタートした。

オープニングラップはカラスコ、マリア、サンチェス、ポンティアーニのスタート順通りに進む中、バックストレートでエレーラがトップに浮上。一方、ポンティアーニはブレーキングで挙動を乱してしまい、10位まで後退してしまった。

これにより優勝争いは3台に絞られる格好に。ファイナルラップに入り順位はエレーラ、サンチェス、カラスコの順に。レース中何度もバックストレートでカラスコに抜かれていたエレーラは前半セクターからギャップを築こうとする。

そして勝負所のバックストレートでサンチェスとカラスコが接近。カラスコは3位ということもあり一歩足らなかったが、サンチェスがストレートエンドのブレーキングでトップに浮上した。

しかし、続く低速コーナーが続くターン10と最終コーナーであるターン11で抜群のライン取りをしたエレーラが再逆転。勝負強さを見せたエレーラがトップでチェッカーを受けた。

初優勝まであと一歩届かなかったサンチェスが2位、カラスコは3位に終わり、エレーラとのポイント差は7ポイントから16ポイント差にひらいてしまった。

トップ集団でレースを進めるも、痛恨のミスで10位に下がってしまったポンティアーニだったがそこから怒涛の追い上げを見せ、レースでのファステストラップを記録しなんと4位でフィニッシュ。母国戦で素晴らしい走りを見せ、レース2に向けても手応えとなる結果となった。

WCR第4戦 レース1結果

画像1: resources.worldsbk.com
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レース2ではまさかのドラマが! カラスコが優勝しランキングトップに浮上

日曜日のレース2も天候に恵まれ快晴。レース1の結果を受け、ポールポジションはポンティアーニ、2番グリッドにカラスコ、3番グリッドにはサンチェスがつけ、レース1で優勝したエレーラは4番グリッドからのスタートとなった。

気温26度、路面温度31度のドライコンディションの中12周目のレース2がスタート。

2番グリッドのカラスコが好スタートでトップに浮上すると、エレーラも続き2位に上がりカラスコを追う。ポンティアーニは少し出遅れ3位。

スタートではカラスコとエレーラが飛び出すも、ポンティアーニがトップ2に追いつき、4位のサンチェスもここに加わり4台によるトップ集団が形成された。

画像: タイトルコンテンダーの2人に地元のポンティアーニが勝負を挑む。

タイトルコンテンダーの2人に地元のポンティアーニが勝負を挑む。

5周目にサンチェスが離され、優勝争いはカラスコ、エレーラ、ポンティアーニの3台に絞られた。しかし、7周目にはサンチェスが再び追いつき四つ巴の戦いとなる。

各周ともバックストレートでの順位変動があり、トップ争いを繰り広げる4台はこのストレートエンドのブレーキングやライン取りを考えながらファイナルラップに入っていった。

勝負の分かれ目でもあるストレートに差し掛かった4台は、お互いのスリップストリームを利用しながらバトルを展開。この勝負所でドラマが起こった。

ストレートエンドのブレーキングでイン側を締めたエレーラがトップを奪取するかに思われた。しかし、ブレーキングで止めきれなかったサンチェスがエレーラに衝突。なんとランキング首位のエレーラがまさかの転倒ノーポイントとなってしまったのだ。

2台の接触を避けたカラスコがトップチェッカー。エレーラがノーポイントに終わったことで、カラスコがランキング首位に浮上し、9ポイントをリードする格好となった。

2位には地元戦となったポンティアーニが自身初となる表彰台を獲得。3位にはこちらも初の表彰台獲得となったテイラー・レルフ(TAYCO MOTORSPORT)が入っている。

平野ルナは粘りの走りでポイント獲得もレース2では自身初の転倒リタイア

平野ルナ(TEAM LUNA)はこれまで未経験のサーキットでのレースの中、ミスなく走り切りポイントも獲得するなど与えられた環境の中で最大限の結果を残してきた。

そんな平野にとってこれまで以上の成績が期待できるレースを迎えることになる。ここクレモナはシーズン前の公式テストで走ったサーキットだからだ。

とはいえ、このテストでもさまざまなトラブルに遭い、走れたのはウェットでの走行のみ。十分にマイレージを稼ぐことはできなかったが、それでも一度走ったサーキットだけにさらなる上位進出を狙っていたのではないだろうか。

ハーフウェットとなったフリー走行では全体9位と上々の滑り出しを見せた平野。しかし、予選ではセットを外してしまい下位に沈み、新しいセットを試すも予選は21番手に終わってしまった。

また、ウェットだったフリー走行を除けば平野の直線スピードは下から2番目とかなり遅い。長いバックストレートがあるクレモナではレースでのバトルにおいてもかなり不利なため、決勝でも苦戦が予想された。

しかし迎えたレース1。平野はスタートを決め18位にポジションを上げると、赤旗後の再スタートでもスタートで順位をあげ、最終的に14位でチェッカー。

赤旗中断中に少しセットアップを変更したことがさらなるポジションアップに繋がった。厳しい環境の中、見事入賞を果たしポイントを獲得してみせた。

日曜日のレース2でも後方21位からのスタートも、しっかりスタートを決め17位にポジションアップ。ライバルの転倒もありポイント圏内である15位を走行していた。

しかし、4周目に今季初の転倒を喫しレース2はリタイアに。平野にとって4ラウンド8レース目にして初めての転倒となってしまった。

画像: 今季残りのレース参戦も決まった平野。残り2ラウンドでの活躍が楽しみだ!

今季残りのレース参戦も決まった平野。残り2ラウンドでの活躍が楽しみだ!

幸い大きな怪我はなく、ピットに戻った平野。レースではライバルと競っており、攻めていたという。転倒という残念な結果に終わってしまったが、攻めた走りができたのは、これまでそういった走りができなかったことを考えると前向きな要素なのかもしれない。

実はフロントアクスルシャフトが初期不良で歪みがあったり、リアフェンダーを紛失し、スペアがない状況だったりと現地入りの段階でトラブルに見舞われていた。シーズンを通して厳しい戦いが続く中でも最大限の結果を残しているだけに、レースに集中できる環境下での平野の走りが見たい。

今シーズンのフル参戦が決まり、残り2ラウンドを戦う平野。10月11日から13日にかけて行われるポルトガルのエストリルで行われる第5戦での活躍に期待したい。

WCR第4戦 レース2結果

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レポート:河村大志

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