チャンピオン争いは再び混戦に?
目下タイトル争いで独走しているラズガットリオグルは今大会も不参加ということがチームから発表された。タイトル争いでは大きな損失となる欠場ではあるが、ラズガットリオグルは完全復活に集中しており、次戦のアラゴンラウンドでの復帰を目指しているという。
また、チームはマーカス・レイテルベルガー(ROKiT BMW Motorrad WorldSBK Team)がラズガットリオグルの代役として参戦することも併せて発表されている。
BMW Motorrad WorldSBK Test Teamで開発ライダーを務めているレイテルベルガーは、今季参戦していたFIM耐久世界選手権が先週にシーズン終了したこともあり今大会に参加。2019年には同チームからレギュラーライダーとしてSBK参戦している経験もあることからチームとしては心強い存在と言える。
ラズガットリオグル同様、前戦フランスで右手親指の負傷により欠場していたレイもフランスに続いて欠場することになった。骨折の治療と皮膚の移植を優先し、こちらも次戦アラゴンでの復活を目指す。
ヤマハはレイの代役にヤマハのテストライダーであり開発にも携わっているニッコロ・カネパ(Pata Prometeon Yamaha)が務めることを発表した。
レイテルベルガーと同様にカネパも今シーズンのEWCを終えたばかりで、現役引退を宣言していた。今回の代役参戦がカネパにとって本当の最後のレースとなる。
また、ヤマハは今大会含め、残り4戦を戦うR1の改良版を用意。ウイングレットが追加された改良型を導入し、来季に向けてのデータを収集することが目的ということだ。
一方、フランスラウンドのスーパーポール・レースで肋骨を負傷し、レース2を欠場したバウティスタは医師の許可が下りたことで今大会から復帰を果たしている。
ペトルッチがSBK初優勝! 4カテゴリーを制した史上初のライダーに
予選であるスーパーポールではニッコロ・ブレガ(Aruba.it Racing – Ducati)がポールポジションを獲得。2番グリッドにアンドレア・イアンノーネ(Team GoEleven)、3番グリッドはダニーロ・ペトルッチ(Barni Spark Racing Team)という結果だったが、ペトルッチはFP2にレーシングラインでスロー走行をしたとして3グリッド降格のペナルティが科され6番グリッドからのスタートとなった。
気温24度、路面温度34度のドライコンディションの中、23周のレース1がスタート。ポールシッターのブレガがトップのままターン1を侵入し、イアンノーネ、そしてスタートを決めたアンドレア・ロカテッリ(Pata Prometeon Yamaha)が3番手につける。
6番グリッドスタートとなったペトルッチは2周目のバックストレートで早くもアレックス・ロウズ(Kawasaki Racing Team WorldSBK)をパスし4位に浮上した。
トップ争いに目を向けるとイアンノーネがファステストラップを刻みながら3周目にブレガをオーバーテイクしトップに躍り出る。2位に落ちたブレガは4周目に3位に上がったペトルッチにもパスされてしまう。
通常であれば中盤から後半に強さを見せるペトルッチだが、今回は序盤から速さを見せる。5周目にはトップのイアンノーネを攻略し早くもトップに浮上。ドゥカティ勢によるトップ3がレースを引っ張ることになった。
激しいポジション争いから落ち着きを見せていた8周目、2位走行中だったイアンノーネがターン7で転倒。さらに、11周目には同じコーナーで3位に浮上していたロウズも転倒を喫してしまった。
この2台の戦線離脱により3位に上がったのはロカテッリ。しかし、その背後には着実にポテンシャルを上げてきているイケル・レクオーナ(Team HRC)が迫っていた。レクオーナは12周目にロカテッリを捕らえ表彰台圏内の3番手に浮上する。
久しぶりにHRCが表彰台を獲得するのかと思われたが、背後には肋骨を負傷しながらもポジションを4位にまで上げてきたバウティスタが迫ってきた。
チャンピオンシップ争いでなんとか踏みとどまりたいバウティスタは16周目のバックストレートで持ち味である加速性能を活かしレクオーナをオーバーテイク。苦しい状況ながら3位に浮上した。
トップのペトルッチは安定したラップを刻みながら周回し、2位ブレガとの差を2秒前後にまで広げ初優勝に向けて突き進む。
そんな中、残り6周で赤旗が提示された。運営によるとラップタイムが計れなくなるというサーキット側のテクニカルな問題が発生した為の処置であったそうだ。
この時点で周回数の3分の2が完了していたため、レースは終了。この瞬間、ペトルッチのSBK初優勝が決定した。これまでMotoGP、MotoAmerica、そしてダカールラリーで優勝経験のあるペトルッチ。ついにSBKでも優勝を飾り、史上初の4カテゴリーで勝利した唯一のライダーとなった。
2位はブレガ、3位はバウティスタとドゥカティワークス勢が表彰台を獲得。レクオーナは表彰台まであと一歩の4位と今季最高位ながら悔しい結果となった。
2024 スーパーバイク世界選手権 第9戦 レース1 結果
初優勝を挙げたペトルッチが日曜日も制しハットトリック達成!
スーパーポール・レースは3番グリッドからホールショットを奪ったペトルッチがそのまま逃げ切り優勝。土曜日の勢いそのままにイタリアラウンドで連勝となった。2位はロウズ、3位はイアンノーネが入っている。
レース2のグリッドはスーパーポール・レースの結果によりペトルッチがポールポジション、2番グリッドにロウズ、3番グリッドにはイアンノーネがつけている。ラズガットリオグルがいない中、ポイントを稼ぎたいブレガは4番グリッド、バウティスタは6番グリッドからのスタートとなった。
気温28度、路面温度35度のドライコンディションの中、23周のレース2がスタート。ペトルッチとイアンノーネが好スタートを切り1位と2位でターン1をクリアする中、ロウズが出遅れ、ターン2でブレガが3位に浮上した。
なんとしても優勝したいブレガは続くバックストレートエンドでイアンノーネをパスし2位に上がりペトルッチを追う。
ブレガはファステストラップを刻むも、ペトルッチは周回を重ねるごとにブレガとの差を広げていく。その後方では4位までポジションを上げていたバウティスタがイアンノーネも攻略し3位に浮上。2位を走るチームメイトのブレガを追った。
肋骨の骨折という厳しい状況の中、バウティスタはブレガとの差を詰めていき、残り5周にはブレガの背後に迫る。ドゥカティとしてはチャンピオンシップのことを考えると可能性の高いブレガのポジションキープを指示する可能性もあったが、バウティスタは残り3周でブレガをオーバーテイク。レース終盤でポジションが入れ替わった。
そんなドゥカティワークス同士のバトルをよそに、トップのペトルッチがトップチェッカー。なんと地元イタリアラウンドでハットトリックを達成してみせた。インディペンデントチームでの3連勝は史上初である。
2位はバウティスタ、3位はブレガが獲得し、レース1同様ドゥカティが表彰台を独占した。この結果、ポイントランキングでラズガットリオグルとブレガの差は13ポイントとなった。しかし、ここで逆転できなかったのはブレガにとって誤算だったかもしれない。
一方、BMW陣営はラズガットリオグルの代役参戦を務めたレイテルベルガーに対し新たにエンジンを投入。年間6基という使用制限を超えたため、レイテルベルガーは最後尾からのスタートを強いられ、尚且つダブルロングラップペナルティが科されている。
すでにエンジンを5基使用しているラズガットリオグルのために、残りのレースをフレッシュなエンジンで戦えるようにするための戦略的なペナルティであった。
最悪の場合、今季残りのレースに参加できない可能性もあるラズガットリオグル。しかし、チームはエースライダーの復帰を信じ、できる限りの手を打った。この作戦を受け入れたレイテルベルガーの忠誠心とこの環境下でポイントを獲得してみせた技量には脱帽である。
それほどBMWにとって初のSBKでのチャンピオン獲得は悲願であり、なんとしても成し遂げたい快挙。残り4ラウンド、1戦たりとも目が離せなくなってきた。
2024 スーパーバイク世界選手権 第9戦 スーパーポール・レース 結果
2024 スーパーバイク世界選手権 第9戦 レース2 結果
レポート:河村大志