2024年2月の発売開始以来、多くのスポーツバイクユーザーに支持されているブリヂストンのスポーツタイヤ「BATTLAX HYPERSPORT S23」。今回はそのフィーリングを改めて試すべく、月刊オートバイのメインテスター宮崎敬一郎が走行。メインステージは富士山周辺のワインディング。果たして、その印象は?

素直さと粘り着くようなグリップ力は、まるでセミレーシングタイヤ

タイヤの剛性バランスが良くなったんだろう……リーンさせる時の手応えは直立近辺からフルバンクまでほぼ一定。生み出す旋回性との兼ね合いも極めてニュートラル。スポーツタイヤにしてはセルフステアが強く付くことも無く、安定したコーナリング特性を作り出してくれる……装着車との相性はすこぶる良好だ!

標高700~800mの高地でスポーティな機動をやってみたんだが、東京・新橋の編集部で空気圧を車両の指定空気圧に合わせたままの状態で全く問題がなかった。撮影のため、かなり念入りに走り込んだので、当然空気圧が上がりすぎて、接地感もいくらか希薄になっていく。そんな時でも、同クラスの他のタイヤよりもその低下率が随分穏やかで少ない。

さらに、その後空気圧に関してノーメンテでスポーツランを繰り返しても、峠道レベルではトレッド面の傷み(異種コンパウンドの接合部での段付き摩耗やアブレーション)も少ない。それでいて十分に暖まったS23のグリップ力は粘り着くような粘着質の感触。まるでセミレーシングタイヤのソレだ。

これならちょっとしたツーリングから峠道、コースでのスポーツライディングまで、そこそこ以上の耐久性とグリップ性能を堪能しながら楽しむことができるはずだ。

画像: 撮影日の外気温は30℃ほど。

撮影日の外気温は30℃ほど。

装着車はスポーツネイキッドの「SpeedTriple1050 RS」!

装着車のトライアンフは120度等間隔の3気筒エンジンから150馬力を発揮するスポーツネイキッドモデル。このRSグレードはリヤのオーリンズサスなど上等な足回りにプラスして、セミレージンググレードのハイグリップタイヤをOEM装着される、その上級バージョンだ。

装着車は非常に程度のいい個体で、外観、それに走りに関わる機能パーツのヤレはほぼない状態。流すようなツーリングペースの峠道では初期旋回力が甘く、ダラダラした曲がり方をする。これはデビュー時からの特性だ。そして、意識して高荷重を掛けるハードなスポーツランや高速ワインディングではコンパクトな車体を活かしてグイグイと曲がる。

つまり乗り手の意思によってその顔を大きく変えて対応する、ワイドレンジのスポーツバイクといっていい。
 
S23は非常にニュートラルな特性を持っているのだろう。そんなスピードトリプルをかつて試乗した時のOEMタイヤと全く同じハンドリング特性を示した。ビックリするほど当時のインプレに符合する感触だったのだ。

画像: タイヤの特性から、今回は大排気量のスポーツネイキッドを選択して試乗してきました。

タイヤの特性から、今回は大排気量のスポーツネイキッドを選択して試乗してきました。

上質なのフロントの「3LC」構造とリヤの「5LC」構造

今回そんなバイクで峠道メインで試乗をやってみたわけだ。多くのライダーと同じく、標高やタイヤ温度に合わせて空気圧を調整するようなことはしてないし、少しその空気圧を下げて接地面の拡大や路面追従性をかさ上げすることもしていない。

また、そういったことをしなければまともに峠道で遊べない……などと感じるほどの極端な特性変化は無かった。コレもスゴいことだ。

この酷暑の日本だ。先にも書いたが、熱による著しい内圧の上昇で多少はフロントの節度が軽くなりかけ、リヤも調子に乗って開けまくっているとスライド気味になってしまうことがあった。だからといっていきなりゴマカしが効かなくなるタイヤではないのだ。滑り始めは穏やかだし、タイヤが跳ねたり(ホッピングやチャタリング)もしない。空気圧が上がってしまってからもかなりの時間、峠道を走り続けてみたんだが、さほどペースを落さずに走り続けることができた。

画像: フロントにはコーナリング時のグリップ力向上と、リニアなハンドリング特性を実現する3分割トレッド(3LC)を採用。

フロントにはコーナリング時のグリップ力向上と、リニアなハンドリング特性を実現する3分割トレッド(3LC)を採用。

画像: リアには様々なスポーツ走行シーンにおいて、理想的なグリップ性能を実現する5分割トレッド(5LC)を採用する。

リアには様々なスポーツ走行シーンにおいて、理想的なグリップ性能を実現する5分割トレッド(5LC)を採用する。

フロントは耐摩耗性に富むセンターコンパウンドとトリモチのように路面を捉えるサイドコンパウンドの複合構成「3LC(3 Layer Compound)」。リヤはセンターとそのサイド、さらにその外側とコンパウンドの機能が違い、コシのあるセンターと柔らかい…大袈裟にいうとスポンジのようなささくれ方をするセンターよりサイド。さらにその外側にはやはりトリモチのようにネチネチと路面に接するハイグリップコンパウンドが組み合わされている。

このジャンルの高性能スポーツタイヤが実用性を考慮しつつよく採用する構造だ。でも、この「S23」は複合技術がスゴい。

フロントもリヤも、かなり苛酷な条件で酷使したんだが、コンパウンドの継ぎ目に段差はできていなかった。もちろん指で触っても解らない滑らかさだ。ただ違うのはサイド部の指が貼り付くように活性化したコンパウンドや例のスポンジのように変形してモノを包み込むような第二コンパウンドの不思議な感触。

このスポンジのようなパートがあるのに、その角度までリーンした時に違和感を感じない。内圧上昇による接地面積の減少、面圧上昇によるピンポイント変形などを吟味されたタイヤのケーシング剛性が常態を維持したまま支えているのだとしか考えられない。

画像: ワインディング走行後のフロントタイヤ。荒れはほぼ無い。

ワインディング走行後のフロントタイヤ。荒れはほぼ無い。

トータルバランスで勝負してる!

S23はストリート系のスーパースポーツ対応タイヤS22の後継モデルだ。もうデビューして月日も経っているのでタイヤ情報も多く紹介されている。なので、ここでゴタゴタと細かい構造紹介を書き連ねることはやめておきたい。基本的には従来モデルのS22を踏襲した構造なんだが、細かく様々な走りに関わるパートがクレードアップされている。それを細かく知りたければブリヂストンのホームページを見るのがいい。どんな紹介記事より正確に簡略紹介されている。 ここでは、このデタラメに使い勝手のいいオールマイティスポーツタイヤの走りに関わるポイントだけ、ざっくりと紹介させてもらった。

画像1: トータルバランスで勝負してる!
画像2: トータルバランスで勝負してる!
画像: 溝の中にある「ディフレクター」によって排水性を高める仕組み。2021年発売の「T32」に二輪車用としては世界初搭載となった「パルスグルーブ」が「S23」にも搭載されている。

溝の中にある「ディフレクター」によって排水性を高める仕組み。2021年発売の「T32」に二輪車用としては世界初搭載となった「パルスグルーブ」が「S23」にも搭載されている。

実際のところ、新型のXSR900などのOEMタイヤとして採用されていて、すでにその試乗時に経験したタイヤだ。街乗りから峠道まで見事なまでに使い勝手がいい。決して目を三角にしてスポーツに挑むタイヤではないが、いざとなれば、コースでビッグスポーツバイクの走りにも対応するオールマイティタイヤだ。

よくできたタイヤだと思う。

画像3: トータルバランスで勝負してる!

写真/南孝幸

BATTLAX HYPERSPORT S23サイズ表

画像: 状況を選ばずハイグリップ!!「BATTLAX HYPERSPORT S23」再検証!

(フロント)
120/70ZR17 M/C (58W) TL ¥27,830

(リア)
160/60ZR17 M/C (69W) TL ¥37,400
180/55ZR17 M/C (73W) TL ¥41,140
190/50ZR17 M/C (73W) TL ¥42,130
190/55ZR17 M/C (75W) TL ¥43,010
200/55ZR17 M/C (78W)TL ¥45,650

BATTLAX HYPERSPORT S23 公式サイト

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