モトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ」決勝日。日本代表チームはB決勝へ進み、まずはA決勝進出への1枠を競うこととなった
クラッシュから始まったB決勝。望みは2人の追い上げに
日本チームは土曜日に行われた予選で19位と同点の31ポイントを獲得したが、惜しくも20位となりB決勝へとコマを進めた。B決勝に進んだチームの中では一番予選通過に近い位置にいた日本だが、下を見ると1ポイント差でニュージーランド、5ポイント差でスウェーデン、6ポイント差でラトビアがついており、A決勝進出への1枠を勝ち取ることは容易ではないと予想できた。予選終了後、日本チームのライダーへのインタビューによると、スタートの反応や1コーナーの処理は上手くいき、課題は深くて長いわだちの攻略とのこと。チームとしても、スタートから前に出ることができればA決勝へ進出できる可能性は十分にあると話し、まずは全員スタートで前に出ることに注力してレースに挑んだ。
なお、日曜日はコース整備が入り、土曜日にできたわだちは平らに整地されていた。しかし、路面の柔らかさと雨が降った影響で、練習の時点で再び多くのわだちが作られたという。
いよいよ迎えたB決勝。グリッドはチームで話し合い、チーム内で一番調子良く乗れていた横山がイン側、大倉は真ん中、そして渡辺はアウト側から攻めていく作戦でスタートした。「スタートから前に出て、A決勝に進む」。強い気持ちを持って挑んだ日本だったが、1コーナーに差し掛かる場面で大倉が前を走るライダーのリヤタイヤに引っかかり転倒。身体を強く打ちつけ、そのままリタイヤとなってしまう。一方、横山はスタートで出遅れるも1コーナーで上手く抜け出し1周目を10番手あたりで通過。渡辺は18番手付近を走行するも、他者との接触で転倒し、20番手以降からの追い上げとなった。
大倉が抜けたことにより、日本チームの決勝進出は横山と渡辺2人の追い上げにかかっていた。レース時間は20分+2周、荒れた路面に転倒するライダーも多く見られる中、横山は安定した走りで着実に順位を上げ、6位でフィニッシュ。渡辺は追い上げを図るも、転倒時にハンドルが曲がり上手く乗り切れず、27位でレースを終えた。結果、日本は合計33ポイントで8位。チームラトビアが優勝を果たしA決勝へと進出した。
横山は「A決勝に進むことはできませんでしたが、個人的には全ての力を出し切ることができたので悔いは残っていません。450ccのライダーを抜くことが難しくて、追い上げに時間をかけてしまいましたが、6位まで上がることができたのは自分にとって今後につながる結果だと感じています」と前向きに振り返る。
しかし課題も多く見えてきた様子。すでにその意識は来年のネイションズに向けられていた。「決勝に進んだトップライダーの走りを見て、こんなにスムーズに走れるのかと思いました。ただ、これを自分達もやっていかないといけない。予選を通過するには彼らのようなライディングをしないといけないなと改めて思いました。引き続きスピードを上げる練習をしつつ、転倒をしない安定した走りを常にしていけるように頑張ります」(横山)
一方、リタイアとなった大倉は、悔しさを滲ませていた。
「スタートを決めて前に出て、A決勝に進むんだという強い気持ちを持って挑みました。ですが、スタート直後にクラッシュして、その時にきつく叩きつけられたことで再スタートができませんでした。前回出場させてもらった2022年よりは自分の走りに成長を感じられたし、シーズンオフに行った海外トレーニングでの経験が生かされたと思います。この経験がなかったら予選で20位以内すら届かなかったと思います。ただ、やはり決勝に繋げられなかったことは反省していますし悔しいです。僕が予選でもう1つでも上の順位でゴールできていれば、B決勝のスタートで転倒しなければ、と課題が多く残るレースでした。自分は2回目の参戦で、今回も決勝に行くことが叶わなくてすごく悔しいので、ぜひまた来年も本メンバーに選んでもらえるように頑張ります。海外との差を埋めるためにも積極的に海外トレーニングに行って、世界の走りを学んで、自分がそのレベルに近づけていけるように取り組んでいきたいと思います」(大倉)
今回急遽参戦となった渡辺。怪我明けということもあり、本調子じゃない中でのレースを振り返る。「コースの難易度はこれまで経験したものとは比べものにならないほど難しくて、まずコース攻略に手こずってしまいました。怪我明けで自分自身ベストな状態ではなくて、そのことを頭ではわかっていましたが、自分の思ったようなライディングができず、もっとチームに貢献したかったという思いがあります。ただ、実際にMXGPクラスで走らせてもらって、ウォームアップや予選、B決勝で世界各国の強豪と走ることができたのは自分にとって勉強になりましたし、刺激をもらいました。来年はしっかり予選通過できるように、世界で戦えるように、自分自身成長して頑張ります」(渡辺)
なお、グローブが脱げるという衝撃の転倒シーンについて聞くと、「グローブはいつのタイミングで外れたのかわからなくて、気づいたらハンドルに刺さっていました……。グローブをつけ直す手間もあってリスタートに時間がかかってしまいましたね」と語った。
オーストラリアが初優勝
ジェット・ローレンスvs.ティム・ガイザーのぶつかり合い
A決勝はまずMXGPとMX2の混合で行われるレース1が行われた。ホルヘ・プラドがスタートからトップを走行するが、2番手につけたティム・ガイザーが序盤でパス。その後独走状態に持ち込み勝利を果たした。続くレース2(MX2+MX OPEN)では、ルーベン・フェルナンデスがレースをリードしていくが、すぐにジェット・ローレンスがトップに立ち、そのまま差を広げて優勝を獲得する。
最後のヒートとなるレース3(MXGP+MX OPEN)では、各レースで優勝したガイザーとジェットが競い合う。序盤はイーライ・トマックがトップを走行するが、後方からガイザーやハンター・ローレンス、ジェットが追いかけ、ガイザーがトマックをパス。さらにレース終盤にはジェットがガイザーに迫りトップを奪取する。ジェットがレースを制したかと思われたが、最終ラップのフィニッシュ直前でガイザーが前に出る。あわや接触寸前のアタックに見ていた観客も熱狂。そのままガイザーが優勝を勝ち取った。
なお、3レースを終え優勝したのはチームオーストラリア。最後まで接戦であったが、レース3でジェットが2位、ハンターが4位に入賞する強さを見せ、チーム初となる勝利を飾った。
強豪が揃う中、髙木は11位。Yamaha YZ bLU cRU スーパーフィナーレ125cc決勝
6日日曜日にはMXoNと併せて行われている「Yamaha YZ bLU cRU スーパーフィナーレ」の125ccクラスの決勝が行われた。
125ccクラスに出場した髙木碧(たかぎあおい)は決勝で序盤から11番手につける。その後も順位を落とすことなく、一時は10番手にポジションを上げるが、結果は11位でゴール。MXGPの125EMクラスの上位ライダーなど強豪が多く揃う中、世界の舞台でもその強さを発揮し11位に入る大健闘を見せた。