文・写真:西野鉄兵
無限鍋とぶたじんと日本一の星空
15時30分、長野県阿智村のキャンプ場「天魚(あまご)パークランド」に到着! 本日の走行距離は362km。
標高は900mほどらしい。ネットで検索して写真を見た際は、いまいち広さがよくわからなかったのだが、かなり広かった。敷地全体も広いが、1区画のスペースが異様に広い。バイクなら5台5張+中央に宴会場を作れそうなサイトを、贅沢にひとりで使う。
しかもこれで月曜から木曜は500円~、金・土・日曜は1500円~。1日あたり大人1人1000円の利用料をプラスして、今回は木・金の2泊のため計4000円也。
設備は水場とトイレがある。トイレは綺麗で、ウォシュレットが完備されている。入浴施設はないものの、普段からリッチなところを利用しない身としては、大満足だ。
というのも、このキャンプ場を探し当てるのには、けっこう時間を使った。ここ阿智村は、環境省に認められた“日本一の星空の村”というキャンパーには最高にグッとくるキャッチコピーを持つ。
それゆえにキャンプ場は多いのだけど、お値段お高めな場所が目立っていた。もともと私は「宿に泊まるより安いから」とキャンプを始めたクチ。正直同じ料金なら、いまでも宿に泊まりたい。
無事、暗くなる前に設営を完了した。我が新居はデイトナのマエヒロドーム。自分で実際に立ててみると、これまで使ってきたテントよりもだいぶ広く、「もうこれ、家じゃんよ」と豪邸具合に興奮する。
あとは火をおこして、調理をしながら、星を待つのみだ。
鍋に水を入れ、鍋キューブとカット野菜を投入。その後ベーコンとウインナーを入れて完成。調理時間は約10分、実作業は約1分。到底この量は一気に食べきれないし、ウインナーはまだ大量に余っている。これを2日間かけてダラダラ食べる。鍋はいい。
次にメインディッシュの遠山ぶたじん。簡単に言えば、豚のスタミナ焼き。はじめから味が付いているため、焼けば完成だ。
あたりが暗くなってきた。火の通り加減がいまいち分からないので、フタをして煮ながら焼く。調理時間は10分かからず、実作業は約1分。
さあ宴だ、宴だ。37歳独身男ソロツーリングライダーの宴だ宴だ。1本目はキャンプとの相性抜群なアサヒスーパードライの生ジョッキ缶。飲み終えれば、小さなゴミ箱として活用できる。喫煙者には灰皿としても人気だ。
開けるときは注意が必要。ハイテンションでよし飲むぞー! と勢いよく開けると、さんざんシートバッグの中で振られたがゆえ、1/3ほど野に放つこととなる。今日もすっかり忘れていた。風呂上がりに冷蔵庫から取り出したときと同じように開けたら、手とシャツがびしゃびしゃになった。
それでもビールは美味いし、ぶたじんも美味い。気温が下がってきて、温かい鍋のスープもちょうどいい。鍋キューブは山ほど残っているから、スープはなんぼでも飲める。それが無限鍋のありがたさだ。
20時前、ついにそのときは来た。
星!
まだ日中は暑かったし、半月が山の向こうに出ているようで、マックスパワーにはほど遠いと思うけれど、満天の星空だ。
20代の半ば頃、ひとりで首都圏のプラネタリウムをめぐることにハマっていた時期がある。まわりはカップルや家族ばかりで、最初は妙に緊張したが、そのうち誰も私のことなんか見ていないと気づき、いろいろなところへ足を運んだ。
星は好きだったが、天体に詳しくなりたいとかそういう意識はなく、いまも知識はない。ただあの癒しの空間が好きで、ほぼ毎回、後半は熟睡していた。熟睡するために行っていたともいえる。わざわざ休日に家から出て、寝に行くというのは、いま考えてもアクティブなんだかダラけているのだかよく分からない。謎の趣味だったと思う。
ちなみにおすすめは、渋谷駅からすぐそばの「コスモプラネタリウム渋谷」。ここの解説員の方は「星が好きで好きでたまらない」といった星への愛がにじみ出ていて、寝るときもあったが、夢中で聞き入ることも多かった。上映終了後にコンサートのような拍手が起こっていたのも、あの名解説ならではなのだろう。
朝早かったのにも関わらず、解説がないからか、眠気がやってこない。2本目から発泡酒を飲んで、焚き火燃やし切りゲーム(極限まで燃えカスをつくらず薪を完全燃焼させるひとり遊び)をしていると、雨がぽつぽつ降ってきた。当然ながら星はもう見えない。もともと雨予報だったので、数時間でも見られただけラッキーだ。
バイクよし、道よし、展望スポットよし、ぶたじんよし、キャンプ場よし、星見れた、最高の一日、これにて1日目、完ッ!!