文・写真:西野鉄兵
展望台で素敵な昼食を
さっぱりしたところで、手ごろな目的地を探す。南信州の旅の醍醐味は、やはり展望スポットめぐりだー! ということで、行ったことのない「極楽峠」へ。阿智村と下條村の間に位置しているらしい。月川温泉から30kmほどだ。
昨日よりも蒸し暑い。道路に設置されたデジタルの温度計は29℃と示している。早く山に上がりたい。
案内板を発見した。なんだか恐ろしく味わい深いテイストに仕上がっている。熊注意の看板もあらわれはじめた。
林間を抜けると道はさらに細くなり、勾配がきつくなって、標高が上がっていく。舗装は綺麗だけど、落ち葉や松ぼっくりがちらほら。ブラインドコーナーの連続で純粋に走りが楽しめる道とはいいがたい。峠道を走っている間は、本当に展望が開けるかは分からない。
だがそれがいいじゃないか。この先にきっと待っている。
ほーら、どやっ!
標高1283m。南アルプスと中央アルプスをいっぺんに望む大パノラマだ。
昨日訪れた高嶺展望台と同じく、頂上から向こう側は通行止めになっていたため、実質的にピストン道だった。それゆえに、またしても貸し切り状態。
こんな場所では何を食べても美味しく感じる。ちなみにヤマザキのコッペパン・シリーズはいつどこで食べても、何味を食べても、毎日食べても美味しく感じる。つまり、極楽峠で食べるコッペパンはめちゃくちゃ美味い。
小一時間滞在するも、誰も現れず。完全に貸し切りでのんびりとランチを楽しむことができた。もう今日は大満足。すでに14時を過ぎていて、さらに遠くへ向かう気は起きない。
昨日と同じ阿智村のスーパー「PIA」で買い出しをして、キャンプ場へと戻った。
連泊キャンプだからできること
連泊キャンプでは、自分のテントの前に戻ってくる瞬間がとくに好きだ。すっかりキャンプ場に馴染みきって「ただいまー」と自宅に帰ってきた気持ちになれる。そうすると、2日目は初日よりもぐっすり眠れる。
明日は早朝から行動したいので、今晩は焚き火はしない。朝の時点で焚き火台はしまっている。少し片づけておくと、撤収が楽になる。
あとはちょいとビールを飲んで星を眺めるだけ。と思ったら、雲がかかり出した。ラジオをつけると首相が石破さんに決まったということが分かった。
連泊キャンプで、もっとも気がかりなのはスマホやモバイルバッテリーの充電が切れることだ。その点ラジオは乾電池だけで情報が得られて、通信料もかからない。あらためてラジオの偉大さを感じた。
いま愛用している東芝のTY-JKR5はかなり気に入っている。IP54等級相当の防水・防塵仕様。白色LEDライト付き。単四乾電池2本で動かせるほか、手回しハンドルで内蔵コンデンサに電力を貯めることができる。蓄えた電気は、スマホに送ることも可能!
このラジオも含め、キャンプ道具が一式入ったシートバッグは、いつも自宅のすぐ持ち出せる場所に置いている。ライダーのキャンプセットは、そのまま適度なサイズの防災セットにもなる。
今日のメインディッシュは、「遠山とりじん(350g)」。昨日のぶたじんと同じ値段だったが、こちらの方が量が多い。ニンニクと味噌がほどよく効いたスタミナ焼きだ。片栗粉をつけて揚げれば、から揚げにもなるらしい。
鍋をつつきつつ、とりじんを食べて、発泡酒を一本飲んだらまだ17時30分。雲が厚みを増してきた。今晩は星空の期待はできない。
ラジオを切ると、川の流れと虫の音が響き渡る。昨日は見える範囲にキャンパーがいなかったが、今日は3組ほど訪れていた。ただ声や物音は届かない。爆音の放屁も自由、音もニオイも届かない。
「あー、やることないなー」
このツーリングに出かけるため、3週間ほど前から、仕事を前倒しに押し込んできた。普段より1.2倍ほど加速して感じた日常から、急にダラついた一日となった。今日は65kmしか走っていない。
眠気はないので、真っ暗な夜空を眺める。
こんな時間を過ごしたかったんだ。