みなさま大変遅くなりました……。YZ250FXを世界初レースデビューさせた編集部の顛末記です。ごゆるりお楽しみください
450→250に乗り換えたら、250がおもちゃのように感じられた話
これまでヤマハ発動機販売さんにお借りしたYZ450FXの連載をしてきたOff1編集部稲垣だが、いよいよそのヨンゴーをお返ししてYZ250FXに乗り換える日が来た。実際のところヨンゴーはとてもいいバイクだったように思う。書いてきたことはすべて真実で、ヨンゴーは決して乗りづらくなんかない。重くもないし、どっかんパワーでどっかにいっちゃうこともない。僕の思いとしては、ただただヨンゴーに乗り切れなかった自分が悪い。でも、そもそも楽しかったんだからいいじゃないかサンデーライダーなんだもん、ということだ。はっきり言ってずっと乗ってていいよ、と言われたらそのまま乗り続けたかったくらいヨンゴーに乗ってる自分に陶酔できたし、日に1〜2回だけ訪れるちょっとだけ開けられるタイミングには、他のバイクでは絶対に味わえない快楽があった。ヒーローズアダルト(関東で開催している草モトクロス)では初めてライツノービスの表彰台に乗れたしな!
まぁ、いい。ともあれ2024年後半から編集部には2025年モデルのYZ250FXがやってくることになった。思い返せばニーゴーに初めて乗ったのは長野県GAIAでおこなわれたメディア試乗会だった。例年とは違って全メディアの台数分、新型YZ250FXが用意されていて乗り放題、という凄まじい力の入れようであった(編集部注:最近はメディア試乗会の規模が小さくなりつつある現実があります)。日本のオフロードバイクシーンをYZ250FXが文字通り席巻しているさなか、フルモデルチェンジが敢行されたとあって、僕らオフロードバイクメディアからすると「これ以上いったいどこを良くしたんだ!?」と色めき立ってしまう。まだ僕が新型に触れてもいないうちにアドバイザースタッフとして会場にいた開発ライダーの鈴木健二さんが「ジャンキーはヨンゴーに乗ってたんだから、今度のYZ250FXの乗りやすさには他の人より感動すると思うよ。マップ変えたらトレールみたいに扱いやすいんだよ」と言ってきた。この「マップを変えたらトレール(セローとまで言う人もいた)のようになる」という耳障りのいいフレーズは時々使われる売り文句みたいなもので、僕からすると「またまた。健二さん、そんなわけないっしょ」と返すほか無い。だいたいYZ250FXのエンジンは、AMAでも凄まじいパワーを引き出せると評判のYZ250Fのエンジンだ。くそでかいレッドバッドのラロッコズリープだって飛び越えちゃうのだ。セローになるわけないじゃん。
とは言っても、僕はYZ250FXの元気なエンジンが好きだ。スロットルをひねると弾けるような音と共に鋭いレスポンスが楽しめる。オフロードレーサーはこうじゃなくっちゃな、と思う。扱いやすければいいってもんじゃないんだよ。レーサーのプリミティブな楽しみは、扱いづらいが乗りこなせたときの快感にある。最近、乗る回数が増えてきた僕もようやくそういうことを思うようになってきた。ところがだ。新型YZ250FXときたら7段階のマップを最強にすればこれまで以上に走るし、最弱にすれば”本当に”セローに毛が生えたくらいに扱いやすくなる(マッピングは従来通り4×4の格子で燃調・点火タイミングを3次元的にいじることもできるが、単に「マイルド↔パワー」の1次元のレベル別でプリセットされたマップを選ぶこともできる。トラコンも4レベルにプリセットされている)。おまけに、僕にはこの最弱のモードがとても調子が良かった。アクセルを開けても身体が置いていかれることなく、積極的にいいポジションに入っていけるから、すべてがスムーズ。身体が先行することがこんなに気持ちいいことなのかとびっくりした。ラップタイムも最弱モードの方が1秒ほど速い。レーサーの優れた足まわりに、思い切り扱いやすいエンジン。これこそがオフロードレーサーの大多数へのベストアンサーであることは、長くレーサーに乗ってきたオフロードホビーライダーのみなさんなら疑いはないはず。YZ250FXの最弱モードはまさにそれである。そして、僕も結局のところフルパワーをまったく乗りこなせない万年ビギナーなのだと思い知らされた。くうう。このおもちゃのようにふりまわせるYZ250FX、悪いわけがないのだがフルパワーを乗りこなせないことに納得はいかない。頑張って1年かけてフルパワーでタイムを出せるようになろう。そうしよう。
モードボタンをこんなに何度も押すとは…
というわけで、この試乗会のあと、同じく長野で開催されたJNCCエコーバレーのFUN GPに参戦することにした。なにげにYZ250FXの世界初レースデビューだったそうで、僕なんかで良かったんですか? というもったいないお話しである。参戦するごとにエントリーするクラスをひとつずつ下げていったら、いつのまにか入門クラスのFUN-D常連になってしまっていた。こういうビギナーさんの多いクラスは早めに卒業して迷惑にならないように、とか考えていたのだが、どうも生涯Dクラスの予感がする。
エコーバレーはJNCCでも屈指のゲレンデ全開コースだ。ふかふかの路面を上っては下らされ、上っては下らされ、時折ウッズでもがくセクションもあるが、基本的には全面的に全開である。誰だって全開だ。だって全開にしないと進まない(上らない)んだもの。そんな路面状況であることはよくわかっていたのだけれど、こういうグリップのいい路面でYZ250FXのセッティングをどうしたらいいのか、いまいちわからなかった。こんな簡単なセッティングすらわからないのに、どうやってYZ450FXの4×4マップをいじっていたのか、自分でもよくわからない。悩んだあげく、マップ1にフルパワー&トラコンオフと、マップ2に最弱&2番目に強いトラコンを入れた。ゲレンデはたぶんフルパワーのほうが上るんじゃないかと思ったからだ。マップを変えたくなったら変えられるように、一応スマホも持って走ることにした(この時点で真剣さが足りないことがわかりますね)。
スタートはみごとに雰囲気に飲まれて後続集団。JNCCだってモトクロスだってスタートこそ命なのは知ってるのに、いざフラッグが降られるとスロットルの開けが及び腰になる。じわじわ順位を上げていけるほどうまくないのに。コースは少し水分を含んでいて、フルグリップというわけではなかったけれど、ゲレンデでトラコンを使うほどではなかった。スリッパリーな場所で何度かトラコンをいれたマップ2にしてみたが、回転数がなかなか上がらないことに恐怖を感じる。長いゲレンデは勢いが必要なので早めにタイヤを高速で回しておきたいのに、トラコンが効いてなかなか回転数が上がらないのだ。これはトラコンをもう少し弱くすればちょうどよくスピードを保って上っていくのかも知れないな、と走りながら思った。慣れればそんなことは思わないかも知れないが、トラコン自体はとても優秀なのでマップ3くらいまで記憶できてレース中に試せればいいな、とも感じた。
一方、つるつるに滑るウッズ区間では、トラコンのセッティングがぴったりはまった。モードを弱めに振ったことで臆せずスロットル操作ができる。僕は丸太をフロントを上げながらクリアしたりは出来ないので、そういうことをしたいライダーならもう一つか二つレスポンスのいいパワフルなモードにした方がいいかもしれない。ともかく、このモードの切り替えがしっかり効くので、レース中に何度もモード切り替えボタンを押していた。ヨンゴーでは何をしてもヨンゴーだったのでほとんど触れることがなかったのに。インジケーターランプを見ているほどビギナーには余裕がないので、このモード切り替え時に音がピッと鳴ったりしたら確認しやすくていいのにな、とも思った。そのくらいモード切替が有効なのだ。かなりYZ250FXの面白さにはまっている証拠である。
結果、FUN GP総合175/244位、FUN GP Dクラス34/74位。クラス内、一応真ん中より上の結果だったので、本当にDクラスが最適なんだなと思った。心底がっかりした。がんばろう。