残るタイトルひとつ、JSB1000!
2024年の全日本ロードレースが終わりました。前戦・岡山大会でST1000=國井勇輝(SDGチームハルクプロ)、ST600=阿部恵斗(スクアドラTIGREタイラプロモート)、JP250インタークラス=久川鉄平(bLUcRU Webikeチームノリック)がタイトルを決め、この最終戦でJP250ナショナルクラス=森山浬(bLUcRU Webikeチームノリック)、J-GP3クラス=尾野弘樹(P.MU 7Cゲイルスピード)がチャンピオンとなって、残るタイトルは最高峰クラス、JSB1000のみ!
きのう土曜日のレース1で、中須賀克行と岡本裕生というヤマハファクトリーレーシングの2人が同ポイントとなり、最終戦のレース2で先着したほうがチャンピオン、という局面でのJSB1000、24年シーズンファイナルの戦いでした。
レースで先手を取ったのは、この日もポールポジションからのスタートだった岡本。中須賀、野左根航汰(AstemoホンダドリームSIR)、水野涼(DUCATIチームカガヤマ)と、昨日のレース1でもトップ争いを演じた顔ぶれが先頭に立ってレースがスタートし、昨日の抜きつ抜かれつの展開とは違って、岡本が最初から逃げる展開。かわすまでもなく、中須賀、野左根、水野も、岡本を逃がすまいと等間隔での周回がスタート。トップの4台と5番手の高橋巧(日本郵便ホンダドリームTP)まで、少しの差ができて、4台によるトップ争いになっていきます。
この4台に、徐々に間隔ができ始めて、つまり岡本が逃げ始める展開となっての5周目には、岡本が中須賀を1秒近く離し始め、水野は野左根をかわして3番手に浮上。岡本→中須賀→水野→野左根という順になっていきます。6周目には水野が中須賀をかわして岡本→水野→中須賀→野左根の順に。中須賀のペースが上がらず、4番手の野左根に差を詰められ、絶対王者ピンチ!というレース中盤。トップ争いはジリジリと岡本に水野が迫り、少し間をあけて中須賀と野左根との3番手争いという形になっていきます。
すると10周目、逆バンクで中冨真一(RSN)と星野知也(TONE RT SYNCEDGE4413
BMW)が転倒。この車両処理のためにコースにはセーフティカーが介入し、レースはペース走行へ。つまり、ここで各車両の間隔はゼロになるのです!
セーフティカーが介入して、転倒車両の撤去のために約3ラップ。ホンダNSXセーフティカーの後方には、岡本、水野、中須賀、野左根がつけ、その5秒以上後方にいた高橋も、そのまた後ろにいた日浦大治朗(ホンダドリームRT桜井ホンダ)、名越哲平(SDGホンダレーシング)、渥美心(ヨシムラSERT MOTUL)、関口太郎(SANMEIチームTARO プラスワン)、清成龍一(TOHOレーシング)も追いついての大集団。多少の差はあるものの、コース上に残っている10数台が、すべてひとつの集団になっていく感じとなりました。
セーフティカーがコース上にいた約3ラップ、徐行を強いられたライダーたちは、一度温まったタイヤをなるべく冷やさないよう、ホームストレート上で大胆にローリング。残り3周でセーフティカーが退去し、レースは岡本→水野→中須賀→野左根のトップ4の順位のまま、残り3周の超スプリントレースで勝敗が決することとなってしまいました!
そして!セーフティカーが退去してわずか10数秒後! 1コーナー進入で水野がトップに浮上し、その後方に中須賀! がしかし、中須賀は止まり切れずにフロントを切れ込ませて転倒! 1コーナーに上がった盛大な砂煙とともに、中須賀の13回目のJSBチャンピオンの夢が消えてしまいました。
レースはそのまま、すぐに岡本と野左根が水野をかわし、一時はついに野左根がトップに浮上! しかし、それを岡本も水野も許さず、その周のバックストレートで水野が岡本と野左根を豪快に2台抜き! 野左根もクロスラインで抜き返しますが、その後のシケインで、またも水野が鼻先をねじ込んでトップに立つと、ホームストレートでビタビタにスリップにつけても、NIPPOコーナーでも真横に並びかけるアタックを見せても野左根は水野をかわせずに水野が逃げ始め、岡本も2番手の野左根に並びかけるものの前に出るには至らず、水野→野左根→岡本の順でフィニッシュ! 中須賀が転倒ノーポイントに終わったことで、岡本がJSBクラス3年目にして、とうとうチャンピオンの座をつかみ取りました。
レースは水野が昨日のレース1に続いて2連勝し、今シーズン3勝目。2位に今シーズン初表彰台の野左根が入り、岡本は3位でチャンピオン決定! 中須賀の転倒の瞬間に、チャンピオンはほぼ手中に収まったものの、野左根を抜きにかかったファイトは素晴らしかった!
4位に高橋、5位と6位に渥美、日浦とスポット参戦勢が続き、名越、関口、9位にスポット参戦の亀井雄大(チームAGRAS with NOJIMA.NFT)、10位は佐野優人(KRP 三陽工業 RS-ITOH)が入ったレースとなりました。
抜きつ抜かれつのレースで同ポイントとなって最終戦を迎えた展開といい、岡本が逃げ切ったかな、と思われたときにセーフティカーが介入したことといい、そしてセーフティカー退去とともに中須賀が砂塵に消えてしまった転倒といい、ここまでドラマいるかね!というものすごい最終戦っでした。
中須賀は、自他共に認める、全ライダーの中でもいちばんタイヤのマネジメントに長けたライダーです。その中須賀が勝負に行ったあの瞬間、みんな同じくタイヤが冷えた中で、ここがチャンスと踏んでのスパートで転倒を招いてしまいましたが、おそらく中須賀は、敗れて悔いなし!の心境でしょう。
最終戦でダブルウィンを達成した水野は、ドゥカティに乗って1年目で3勝、チャンピオンこそ獲れませんでしたが、ヤマハファクトリーチームを破り、シーズンを通して全日本ロードレースを盛り上げました。水野とドゥカティ・パニガーレV4Rが全日本に殴り込んできてくれなかったら、きっと今シーズンもヤマハファクトリーチームの1-2フィニッシュが続く圧勝劇が繰り返されたことでしょう。
最終戦で初表彰台に登壇した野左根は、今シーズンから日本のレースに復帰し、マシンも長年乗りなれたヤマハからホンダにスイッチ、チームも新たにした戦いの中で、ようやくひとつ結果を残せたレースとなりました。ここまで野左根は、トップグループにはいるものの、レース序盤こそトップグループにいながら、終盤には離されてゴール、という展開が続き、開幕戦もてぎ大会で4位/5位となると、最終戦のレース1までなんと7戦連続の4位! 最後の最後でやりました!
そしてJSB1000の新チャンピオン岡本は、菅生大会のレース2から先輩・中須賀を破り、ポイントランキングでも最終戦レース1で追いつき、レース2できっちり勝ち切りました。「今年は、本当に成長できた」と本人が言うように、中須賀を破ったという勲章は、フロックでもなんでもなく、岡本の実力。今年の岡本の成長と強くなった走りは、誰もが認めることでしょう。
これで、2024年の全日本ロードレースは終了しました。このあと、いろいろとライダーコメントを聞きまくってきているので、徐々に公開していきます!
写真・文責/中村浩史