文:石神邦比古/写真:森 浩輔
「ガス欠」を未然に防ぐ方法は? 覚えておくと便利な3つの知識を紹介
久々のツーリングに気分は上々。つぎの目的地のことで頭がいっぱいなあなたは、メーターの表示を気にも留めず、意気揚々とバイクを走らせていました。
しばらくすると、急にバイクが失速。アクセルを開けても元気がありません。まさか故障? そんなハズ……と、ふと燃料計に目をやった時、そこで初めて気がつきます。
(燃料が)ゼロだ……
こんなとき、あなたならどうしますか?
バイクの重量は、乗っている排気量にもよりますが、原付なら70~80kgくらい、大型バイクであれば200kgを超える車両も少なくはないでしょう。
そんなバイクを押して歩くのは至難の業です。数百メートル先に営業中のガソリンスタンドがあれば何とか頑張れるかもしれませんが、近くにスタンドがなかったら? 目の前が勾配のきつい坂だったら? 考えたくはありませんよね。
楽しいツーリングのはずだったのに……と後悔しないためには、まず第一に「ガス欠に陥らない」ということが大切です。以下では「ガス欠」を未然に防ぐために、覚えておいたほうが良いポイントを3つ紹介します。
ポイント1.自分のバイクの「航続可能距離」を把握しよう!
「航続可能距離」ってナニ?
「航続可能距離」とは、「ガソリンを満タンにしてから走り出した場合、だいたいどのくらいの距離を走行することができるのか」という大まかな距離のことを指します。
これを把握しておけば、目的地までの距離に応じて必要最低限の給油回数を事前に調べることができるのです。さらに、「燃料を入れてから何km走ったか」を、メーターのトリップ機能を使って確認すれば、燃料不足に陥る前に「ガソリンの入れ時」を知ることができるのです。
「航続可能距離」の算出方法
この距離は、「1Lのガソリンで何km走るのか」=「燃料消費率(WMTCモード値)」と「ガソリン満タンで何L入るのか」=「燃料タンク容量」のふたつの値の積で求めることができます。
ちょこっと疑問
燃料消費率の「WMTCモード値」ってナニ?
「WMTCモード値」とは、発進や加速、停止などを含めた公道での使用に近い測定方法で算出された燃料消費率です。ですから、実燃費に近い燃料消費率を知りたい場合には、目安として「WMTCモード値」を参考にするのがおすすめです。
※WMTCモード値については、日本自動車工業会ホームページもご参照ください。
以下では、例としてスズキのアドベンチャーモデル「Vストローム250」の航続距離を算出してみました。
1.「燃料消費率(WMTCモード値)」と「燃料タンク容量」を確認
メーカーの公式サイト、または自身のバイクの取り扱い説明書などに記載されている、車両の主要諸元(スペック)を参照します。今回は、スズキ二輪の公式サイトから「Vストローム250」の主要諸元を確認しました。
画像の赤枠が「燃料消費率(WMTCモード値)」、青枠が「燃料タンク容量」です。「Vストローム250」の場合、「燃料消費率(WMTCモード値)」は32.1km/L、「燃料タンク容量」は 17Lとなります。
2.航続可能距離を算出
先に紹介したとおり、航続可能距離は以下の式で求めることができます。
燃料消費率(WMTCモード値)[km/L] × 燃料タンク容量 [L] =航続可能距離
これに1で紹介した「Vストローム250」のふたつの値を当てはめて計算すると、32.1km/h×17L=545.7kmとなります。つまり、「Vストローム250」が1度の満タン給油で走れる距離は、おおよそ540km前後であるということがわかります。
ただし、今回求めた航続可能距離は、あくまでもメーカーが目安として掲載している「燃料消費率(WMTCモード値)」を参考に算出したものです。
実際のところ、バイクの状態や走り方、交通状況などによって燃料消費率は変化するので、見積もった航続可能距離にとどくより前に、給油のタイミングをつくっておきましょう。
\こんな方法もある!/
「実測燃費」で航続可能距離を算出
事前に「燃料消費率(WMTCモード値)」を調べなくとも、実際に自身が走行して割り出した燃料消費率を使って航続可能距離を算出する方法もあります。この方法なら、先に紹介した「WMTCモード値」を用いて計算した値よりも、実際の航続可能距離に近い値を求めることができますよ!
1.実測燃費を求める
燃料消費率は以下の式で求めることができます。
走行距離 [km] ÷ ガソリンの消費量 [L] =燃料消費率 [km/L]
このとき、「走行距離」はガソリン満タンの状態から給油地点までの距離を用いると便利です。ガソリンの消費量は、ガソリン満タンの時から何L消費したか、つまり、スタンドでの給油量を当てはめればOKです。
〈例〉ガソリン満タン17Lの状態から200kmの距離を走行し、8L給油して再び満タンになった。
→200km ÷ 8L=25km/L→ 燃料消費率は25km/L
2.航続可能距離の式に数値を当てはめる
燃料消費率[km/L] × タンク容量[L] = 航続可能距離 [km]ですから、実測燃費25km/Lとタンク容量17Lをあてはめ計算すると、25km/L×17L=425kmとなり、実際の航続可能距離は約425kmであることがわかります。
ポイント2.愛車の燃料計の見方を調べておこう!
あなたは愛車のメーターの表示が、どのような意味を表しているのかご存じでしょうか。
現在、ほとんどのバイクには、ガソリン残量がぱっと見てわかるよう、メーターに燃料計が表示されています。その燃料計の表示は、ガソリン残量がある一定のラインを下回ると、通常(燃料がある状態)とは異なる表示に切り替わり、ライダーに給油を促してくれる場合が多いです。
ただ、この給油を促す表示は車種によってばらばらです。以下に、代表的な燃料計の表示の変化パターンをいくつか挙げてみました。
燃料計の表示の変化
・表示がチカチカと点滅
・表示が切り替わり、残りの燃料の量(L)を表示
・表示が切り替わり、残りの燃料でおおよそ走行できる距離(km)を表示
先にも記載しましたが、これらのほかにも給油を促す燃料計の表示は多数あります。
メーターの表示とその意味については、車両の取り扱い説明書に記載されていますので、愛車の燃料表示がどのようなものか、燃料が少なくなるとどのように教えてくれるのかを、あらかじめ知っておきましょう。
※ホンダのバイクの場合は公式のwebサイト「Motopub」から調べることもできます。
\知っトク情報/
燃料計の表示が変わった後も約50kmなら走れる⁉
給油のサインが出た場合は、焦らず、なるべくエンジンの回転数を上げずに走行しましょう。
日本で発売されているバイクについては、燃料計の表示が給油を促す表示に変化した場合でも、その状態から約50kmほど走行できるように設計されています。これは、国内の高速道路における給油可能なサービスエリアの間隔が概ね50km以下に設定されているからです(※給油可能地点同士の距離が50kmを超える区間も存在します)
ただし、これは燃料消費の少ない運転をした場合の数値です。ですから、アクセルを開けすぎたり、発進と停止を繰り返したりと、個人の運転の仕方によっては50kmも走らずに止まってしまう場合があるので注意しましょう。
ポイント3.ガソリンスタンドをチェックしておこう!
航続可能距離がわかっていて、メーターの表示の意味をしっかり理解していても、とどのつまり給油できなければ意味がありません。ツーリングなどで事前に目的地が決まっている場合はもちろん、遠方に出かける時にはガソリンが少なくなる前に、必ずガソリンスタンドを調べておくようにしましょう。
調べる時に大切なのがガソリンスタンドの「営業時間」です。都市部では24時間営業の店舗も多いですが、郊外では営業時間が9時〜18時、なんていう場合もザラにあります。
リサーチしておいたは良いけれど、夜中で営業していなかった……なんて事態に陥らないよう、あらかじめスタンドの場所と営業時間の両方をチェックしておきましょう。
万が一「ガス欠」になった場合の対処法
ここまで「ガス欠」を未然に防ぐための方法を紹介しましたが、もし「ガス欠」に陥ってしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。そんな事態に対処するための手順を紹介します。
1.交通の邪魔にならない場所にバイクを寄せる
「ガス欠」=走行のために必要な燃料が足りない状態ですから、バイクは停止して動きません。ですから、道路上で「ガス欠」になってしまった場合は、まずバイクから降りて、交通の妨げにならない安全な場所までバイクを押して移動しましょう。
※「ガス欠」に限らず、走行中にトラブルに見舞われた場合は二次災害を防ぐため、道路の端などの安全な場所に移動しましょう。
2.ロードサービスに連絡
冒頭にも触れましたが、ガソリンスタンドが目の前にある場合を除いて、自分でバイクを押してスタンドに向かうのは現実的ではありません。自身の疲弊による転倒や、歩行者との接触リスクも高まり、ほかのトラブルを招きかねないので、周囲の邪魔にならない場所にバイクを止めてロードサービスに連絡をしましょう。
JAFは、会員・非会員関係なく24時間いつでもロードサービスが受けられますし、会員であればガソリン代を除いて無料でサービスが受けられます。そのほか、自身の加入している任意保険にロードサービスが付帯している場合もありますので、あらかじめ調べておくのがおすすめです。
そのほかの対処法
近くに有人のガソリンスタンドがあり、かつ携行缶を貸してもらえる場合であれば、徒歩でスタンドまで行って携行缶にガソリンを入れて貰う方法があります。ただ、スタンドに向かう間バイクを置いておいても問題のない場所に車両を停める必要がありますし、店舗によっては携行缶を貸してもらえない場合も多いです。
そのほかの方法としては、「バイクを可能な限り傾けて、燃料が送れないか試す」「携行缶を持っている人に連絡して燃料を補給する」「トラックなどでガソリンスタンドまでレッカーしてもらう」などが挙げられます。
ただし、これらの方法は不確実ですし、場合によっては自分の不注意で誰かに迷惑をかけることになるので、潔くロードサービスに連絡するのが「ガス欠」に陥ったときに取るべき最善策だと言えるでしょう。
文:石神邦比古/写真:森 浩輔