かつては「MFJランキング表彰式」と呼ばれていたシーズンエンドパーティが行われました。これはMFJが統括する日本のモータースポーツの上位入賞者を表彰するもの。
MFJ統括のモータースポーツは、ロードレース/モトクロス/トライアルを筆頭に、スーパーモト/エンデューロ/スノーモビルの6種目で、今シーズンは各カテゴリーの上位ランカーとともに、世界選手権参戦功労賞、海外参戦功労賞に、自由民主党モータースポーツ振興議員連盟会長杯、東京中日スポーツ賞、さらにエンデューロ特別賞に、チャイルドクロスの地方選手権チャンピオンを表彰するモトクロス特別賞も設定されました。
チャイルドクロスの表彰はよかったですね、ちびっ子たちがひょいひよい壇上に上がって、モトクロスIA1チャンピオンのジェイ・ウィルソンがプレゼンターになってメダルをかけてもらっている姿が、本当に素敵でした。
各カテゴリーの表彰者は以下のとおりです。
今シーズンの特徴のひとつに「日本から世界へ」というテーマが見え隠れしていたように思います。モトクロスでは、この数シーズン、ヤマハファクトリーチームから参戦、参戦初年度の2022年にIA2タイトルを、そして23-24年にIA1タイトルを獲ったジェイ・ウィルソンの存在がありますね。
「今シーズンはシーズンを戦うだけでなく、マシンを開発したり、日本の若いライダーと海外でトレーニングもしました。今年は全日本のレベルも上がって、実際に勝てないレースも増えました」とはジェイ。これは、ジェイというオーストラリアンが、日本のモトクロスのレベルを上げてきている証拠なんだと思います。これは昨シーズンまでヤマハに在籍してIA2を、そして今シーズンはGASGASで戦ったスペイン人ライダー、ビクトル・アロンソの存在もしかり。
トライアルでは、IAスーパークラスで12年連続チャンピオンという途方もない大記録を成し遂げた小川友幸が、終盤3戦にスポット参戦した藤波貴久に敗れるというシーンもありました。藤波は、いうまでもなく歴史上、日本人唯一のトライアルワールドチャンピオンになったライダー。ここでも、世界という大きな壁が立ちふさがりました。
さらにロードレースでは、開幕前からJSB1000クラスの話題をさらった、TEAM KAGAYAMAのドゥカティ・パニガーレV4Rの日本投入も挙げられる。このパニガーレV4Rは、なんと23年にワールドスーパーバイクチャンピオンとなった、アルバロ・バウティスタのマシンそのまま。なんとスーパーバイクの世界チャンピオンマシンが日本のレースに初めて姿を現したのです。
このマシンをライディングしたのは、Astemoホンダから移籍してきた水野涼。ミニバイク時代からホンダのマシンしか乗ったことがないという水野が、自分のライダー人生をかけて加賀山就臣監督のもとへ、そしてドゥカティマシンにスイッチしたのです。
日本初登場のドゥカティワークスマシンは、開幕するやトップグループに割って入り、開幕戦・鈴鹿2&4から連続して表彰台に登壇する活躍を見せ、鈴鹿8耐明けのもてぎ大会で、ついに初優勝。さらに水野+ドゥカティは最終戦の2レースでも優勝、これも日本のレースに海外の新風が吹き込んだ印象的なシーンでした。
そして全日本ロードレースからは、その水野+ドゥカティの挑戦を退けた岡本裕生が、25年からワールドスーパースポーツ600クラスへの参戦を表明しました。さらにST1000クラスで全6戦中5勝を挙げた國井勇輝も、世界選手権Moto2クラスへの参戦を表明。ふたりの日本チャンピオンが、世界の舞台に飛び出してく、記念すべきシーズンになったように思います。
さらにJP250クラス・国際ライセンスクラスを制した久川鉄平も、ヤマハスカラシップを獲得して、bLUcRU YZF-R3カップ参戦権を獲得。ヨーロッパのレースに挑戦。アジアタレントカップでは三谷然がチャンピオンとなり、「Road to MotoGP」ファーストステップとしても知られるFIM MoniGPでも、各国代表のライダーによるワールドシリーズで、国立和玖が優勝し、世界への扉が開いた1年でもありました。
そして、このアワードには出席できなかったものの、世界選手権Moto2のワールドチャンピオンに小椋藍の存在も、日本と世界との距離感を詰めてくれたシーズンでした。
「僕は自分が速いライダーだなんて思ったことはないし、ずっと努力してきて、Moto2の世界チャンピオンというところまでたどり着いた。いま日本を走っている若いライダー、アジアタレントカップを走っているライダーも、自分にもできる、と思って頑張ってくれたらうれしい」とはワールドタイトル獲得後の、小椋のコメント。
全日本モトクロスのライダーは打倒!ジェイ!を、全日本ロードレースのライダーは、岡本、國井に続いて世界へ飛び出す夢を持ち続けようぜ!
写真・文責/中村浩史