【KAWASAKI VERSYS-X 250 ABS】250アドベン チャー・ワールド【250 ADVENTURE BEST SELECTION】(2017年)
Kawasaki VERSYS-X 250(2017)
文:宮崎敬一郎
この記事は2019年3月2日に公開されたものを再構成した記事です。
もはや250の枠を超えたひとクラス上の走り!
今年になって、にわかに活気づいている250ccの「アドベンチャー」バイクたち。つい先日に登場したCRF250ラリーもそんな一台だし、先駆け的な存在としては林道スタンダードモデルのセローをベースとしたツーリングセローもある。また、この後にはVストローム250も控えているのだ。
今回初試乗したヴェルシス-X250は、言わずと知れたニンジャ250譲りのパラツインエンジンを搭載するモデル。フレームは新設計で、そのルックスはベースモデルがわからないほど違っている。アップライトなカウルにスクリーン、ハンドルなどで車格を大きく見せているが、前後のサスもストローク量が増えており、車高も高い。400ネイキッドと並べても少し大きく見えるほどだ。
快適でゆったりとした走りが欲しいなら、これくらいのサイズは必要! と言わんばかりに割り切っている。シートは硬めで高さもあり、身長170㎝ほどのライダーがふつうに足を出せばカカトが浮く。いわゆる「当たり前の250」とは少し違う造り込みだ。
そんなヴェルシスだが、走り出しから実に快適。フロントは19インチと、オンでもオフでもこなせるサイズ設定としているが、タイヤはオンロード色の強いもの。ノイズも少なく、接地感や節度は純血のオンモデルといってもいい。また、この車格とマスが生み出す高速巡航性能は400クラスに匹敵。しっとりした安定感や、なかば強引に車線変更したりした時の、何事もなかったかのような収束性は、まさにひとクラス上の感覚だ。
エンジンからの振動もかなり少ない。100㎞/h・6速での回転数は7800回転と高いが、フィーリングは滑らかそのもの。1万回転以上まで引っ張ってもあまりストレスを感じない。高速巡航では、さすがに大柄な250ゆえ、33PSといえどワクワクするほどの力量ではないが、シングルエンジンが主流の250アドベンチャーだけでなく、このクラスのスタンダードスポーツなどよりも快適に、滑らかに加速する。これらの威力は絶大で、巡航速度も高めに設定できる。
様々な道路条件に対応できるツーリングスポーツをアドベンチャーと言うなら、このクラスのモデルは、排気量の小ささから、どうしても的を絞ったエリアに活路を見いだすような造り方になりがちだ。むしろ、小ささや軽さを利して、酷路での走破性に光るものを見いだすモデルもいる。しかし、このヴェルシスーX250は、大型アドベンチャーと同じような快適さやクルージング性能を魅力としていて、それが大いに光っている。
しかも、オンロード寄りのタイヤを履いていながら、フラットダートや荒れたダートくらいならそれなりに走れる走破性も備えている。かなり荒れたところまで足を踏み入れてみたが、簡単にサスが底着きするようなこともなかった。タフに使える頼もしい走りも魅力の1台だ。
クラスを超えた安定性と快適性!
現在唯一ツインエンジンを搭載(※)する、最後発のクォーター・アドベンチャー。このクラスでは車格的、力量的に難しいとされている大型モデルなみの「落ち着きのある走り」を高速巡航時や路面の荒れた道での安定性に反映している。サスペンションの味付けやタイヤチョイスはオンロード指向が強く、実際の性格的にもオンロード指向の強いデュアルパーパスモデルだ。
だが、ミドルクラス、ビッグアドベンチャーなどにあるような、フラットダート以外の道は走らない方がいい、というオフロードを拒絶するようなタイプのバイクではない。250にしては大柄だが、十分に人の力や体格で抑えられるサイズだし、足回りもそこそこ荒れた林道を走破できるくらいのストロークを備えている。荒れた、滑りやすい舗装路ぐらいは楽勝の走破性を持っており、少しくらい凸凹した林道くらいであれば、バイクをいたわりながら走破させる事が可能なタフさもしっかりとある。
こういったタイプのモデルの価値は、速い遅いやハンドリングの軽い重い、身のこなしが機敏か鈍重か、などと言った物差しでははかれない。上手く使いこなせて、どんなところまで「冒険」できるか、快適な移動ができるか、といった能力こそが外せないポイントだと思っている。そういった点では、安定性や快適性はひとクラス上のミドル並み。それでいてオフまで走れる万能優等生だ。
文:宮崎敬一郎
webオートバイ公開日:2019年3月2日
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※現在はスズキ『Vストローム250』も並列2気筒エンジンを搭載。