史上初のオートバイによる北極点・南極点到達、チョモランマ(エベレスト)世界最高高度6005m達成、パリ・ダカールラリー二輪部門への日本人初挑戦など、これまで数々の挑戦を成し遂げてきた風間深志氏が挑戦する初めての日本一周ツーリングもついに最終章に突入。第18回では、出雲から丹後路へ向かいます

神話の出雲から雨の丹後路(たんごじ)へ。 大自然と人情に触れる旅

日本一周ツーリング最終章、2日目の幕開け。出雲大社を擁する神話の地、歴史と文化が息づく出雲から国道9号線で北へ向かう。宍道(しんじ)湖をかすめ松江へ、そして米子から鳥取まで、古の神話の世界をたどる。雨が心配だったが幸いにも薄曇りの空。気温は朝で23℃、日中は27℃もあるが、このところの真夏の暑さから比べればまったくマシだ。

鳥取砂丘の脇の道を褐色の砂の斜面を見ながら走っていると……突如アフリカツインが雄叫びを上げた様な気がした。このマシンの真骨頂はこんな地球規模のダイナミックな場所を突っ走ることなのだ。「ま、今は我慢しろよ!」と心の内でマシンをなだめる。今日は山陰の田舎道を走るのだ。

午後、ジオパークセンターのおじさんに本日のゴール地である豊岡までのおすすめのルートを教えてもらい、その通りに走ることに。

「但馬(たじま)アルペンルート」と名付けられているルートとのことだが、じつに山陰らしい、長閑な山村の風景が広がり、山里を流れる澄み切った小川のせせらぎが聞こえる。そしてそこに暮らす素朴な人々の姿……。高低差のある緩やかなワインディングをゆったりと走りながら、心から癒された一日だった。何かと急ぎ足になりがちな日本一周ツーリングだが、やっぱり旅はゆったりとした時間のなかで、訪れた土地を五感で感じることが醍醐味なのだ。

到着した湯村温泉の「足湯」は最高だった。

そして豊岡では、山間に建てられている「植村直己冒険館」の展示を見学。何だか植村さんは幸せだなと感じた。

翌日は雨である。全国各地で集中豪雨の被害が出ており、日本一周中のバイク野郎にも

容赦のない雨の洗礼。雨粒が地面を叩きつける音を聞きながら、カッパの襟首を強く締め、気の重い出発となった。これまでの遠征でもそうだったが、こんなときに思うことは「行くのが運命だから……」しかない。

さりとて、気象や天候を相手に「気合い」だけでは勝てない。雨天用の装備で最大限の対処をする。カッパは2セット、ゴム長靴、ゴム手袋、襟首に巻くタオルで完全武装した。

雨の日のライディングは、前方の視界が最大の課題となる。車とは違ってワイパーが無いので、ヘルメットのシールドにへばり付く水滴はグラブで拭きながら走る。酷い時にはシールドを上げて裸眼で走らないと視界が確保できないこともある。バイクは過酷な乗り物なのだ。

もっとも、そんなバイクだからこそ旅先で地元民に優しく接してもらえることもある。

京都府宮津市にある日本三景の一つ、天橋立で、海に浮かぶ松並木をバックに写真を撮っていると、通りかかった軽四輪に乗るおじさんがわざわざ車を停め「シャッター押そうか?」と言ってくれた。

 「どこから来たの?」

「東京です、日本一周中なんです」

「ほう、何時からやってるの?」

「去年の10月に始めて……」

と、話が延々と続く。四輪で観光していたら、まず無いことだろう。 

雨天走行のコツはデンと腹を据え、ゆっくり慎重かつ丁寧に走ることである。そうすればむしろ楽しくもなってくるし、雨の日ならではの色々な出会いや発見もある。

京都府北部に位置する丹後半島の突端、「経ヶ岬(きょうがみさき)」では、誰も居ないひっそりと静かな広場で、1頭の子鹿が出迎えてくれた。まるで怖がらず、辺りの気配と一体化しており、何だか自然と関わりあえたような幸せな気分になれた。他にも霧に包まれた美しい沿岸の風景や、雲間の三方五湖(みかたごこ)も眺めるなど、雨の日ならではの魅力を存分に味わう一日となった。

画像1: 風間深志73歳、人生初の日本一周ツーリングへ Vol.18 最終章 出雲〜丹後路編
画像2: 風間深志73歳、人生初の日本一周ツーリングへ Vol.18 最終章 出雲〜丹後路編

画像1: 神話の出雲から雨の丹後路(たんごじ)へ。 大自然と人情に触れる旅
画像2: 神話の出雲から雨の丹後路(たんごじ)へ。 大自然と人情に触れる旅
画像3: 神話の出雲から雨の丹後路(たんごじ)へ。 大自然と人情に触れる旅
画像4: 神話の出雲から雨の丹後路(たんごじ)へ。 大自然と人情に触れる旅
画像5: 神話の出雲から雨の丹後路(たんごじ)へ。 大自然と人情に触れる旅

画像3: 風間深志73歳、人生初の日本一周ツーリングへ Vol.18 最終章 出雲〜丹後路編
画像4: 風間深志73歳、人生初の日本一周ツーリングへ Vol.18 最終章 出雲〜丹後路編
画像5: 風間深志73歳、人生初の日本一周ツーリングへ Vol.18 最終章 出雲〜丹後路編

This article is a sponsored article by
''.