文:山口銀次郎、鈴木広一郎/写真:鈴木広一郎/協力:ヨシムラジャパン
インプレッション(ミスター・バイクBG編集部 山口銀次郎)
ズッシリと腹に響く重低音と、心地良い抜けの良さが同居する排気音は、ストレートタイプマフラーでありながら車検対応の音量に抑えるといった妙義が光る。4本出しノーマルマフラーから集合マフラーにするだけで、車体に及ぼす影響は大きく軽快さが増している。しかも、装着されているのはチタン製なので、その軽快感の貢献度は高いはずだ。当然、その恩恵を感じることが出来た……はずだと思いたい。
物理的に軽量化を果たし、軽快感を増しただけではなく、その車体姿勢の影響も大きいだろう。ストリートでの使用を想定した車体姿勢は、高過ぎず低過ぎない程良い車高とし、クッション性豊かでありつつ締まったショック設定で、多少飛ばしても音を上げない強靭さも持ち合わせている。

フロント19インチホイールとリア18インチホイールの組み合わせで、素直さや軽快さ、そしてクセのなさが光る新ステムが良い仕事をしていると言わざるを得ない。正直、フロントホイールをインチダウンした様な、低速から中速の軽快な向き替えを可能にするハンドリングは新鮮すぎた! 切れ込む様なクセもなく、19インチの安定感もあるのが驚きだ。
エンジンは極めて低回転域から高回転域まで、息継ぎやチカラの発生の谷もなく、美しく調教されたTMR-MJNキャブレターが印象的だ。街乗りから峠のワインディング、高速道路等々どんなシチュエーションにおいても扱いやすく、製造から50年以上経過したモデルに乗っているという認識は早々に吹き飛んでいた。

最高出力100PS付近と聞いてはいたものの、低回転域からトルクフルなセッティングによりクセなく、また淀みなく最高出力を発揮する回転域まで吹け上がるので、データを遥かに凌ぐパフォーマンスの様に感じた。実際には、上がるフロントに気を使わなければならいほどである。
流石、流石である。ヨシムラが現代の技術を駆使し仕上げたZ1であると、試乗中はニヤニヤが止まらず、贅沢な気分に浸りきっていた。そして、今後リリースされるZ1パーツ展開も楽しみであり、各モーターサイクルショーが終わっても目が離せない!
深紅のヨシムラコンプリート

POPことヨシムラの創始者、吉村秀雄がエキゾーストパイプを連結し、排気脈動を利用してパワーを増大させる「集合管」を世界で初めて開発した。 ヨシムラ集合のデビューは、1971年のオンタリオ250マイルレース。マシンはCB750フォアだった。あれから幾年もの歳月が流れ、数々のレース戦歴とドラマがヨシムラ・ブランドの地位を築いた。ヨシムラパーツの機能と精度は、世界中のプロショップとライダーにとって羨望の的であり続けている。
そして今春の大阪モーターサイクルショーで正式発表された、新製品を装着したヨシムラZ1改。77年78年とウエス・クーリーが駆りデイトナで活躍した深紅のカラーをオマージュし、ファンには堪らない。
注目は手曲げチタンストレートサイクロン。一見、スチールの4イン1だが、実際はチタンの4‐2‐1仕様だ。伝統の手曲げサイクロンのチタン仕様と言って差し支えない。錆びない最強のZ1ヨシムラ手曲げがここに誕生した。
エンジンはヨシムラがフルOHし、1104ccのステージ1カム、ヨシムラミクニMJNφ38 。各部には厳選した既存のパーツを使用するが、増大したパワーとマフラーの軽量化に合わせて、何とオリジナルステムを製作。オフセットは52.3mm、3種類を試作し、適正なオフセット量を導きだした。痒い所に手が届く、新開発パーツにも注目だ。

TMR-MJN38キャブレターは、スロットルポジションセンサー(TPS)付き。エアフィルターは真円ではなく、表面積が広く吸気効率を高められるオーバル形状を採用。ちなみにエンジンはフルOHし各部バランス取り。圧縮比を10:1としポートも加工。 最高出力はコントロールしやすさを狙った105PS近辺。

集合部をほぼ車体のセンターに 位置させることで、深いバンク角でもマフラーを擦る可能性は低い。4in1のルックスだが、実はエキパイの1番と2番、3番 と 4 番を集合し(つまり 180 度集合)、それをセンターパイプで覆っている。セパレーターで仕切る方が製作は簡単だが、性能を追求した結果採用した非常に凝った作り。総重量はスチー ル製よりも大幅に軽い。

耐久レースマシンでのノウハウを採り入れ、フランジは装着したままでスプリングを外せばエキパイを抜くことが出来る! オイル交換が容易に。

エキパイは最も高温になる排気口側からテーパー状に拡がるコニカルヘッダーを採用。この部分も理想とする排気脈動を追求した結果採用。

エンドパイプには、凸状のヨシムラ文字をプレス成形。量産品のエンドパイプ差込部は後方寄りになる予定で、メンテナンス性を考慮したものに。

集合部のエンジン側は路面側に対し角度を変えており、クリアランスが真っ直ぐに見えるようにしている。量産品の集合部はスプリングなしの仕様になる予定。

販売予定のカーボン製パワーフィルター仕様サイドカバーは、オーバル形状のパワーフィルターに合わせて設計。純正形状のものを切る必要がない。

こちらも参考出品として製作されたステムエンブレム。英字のヨシムラロゴが入る。「ぜひ製品化を」の声を沢山届けてほしい。

ハンドルバーエンドHighLineはヨシ ムラらしく赤と黒の配色。既に製品化されており、17,600円(税込)。

ヨシムラのロゴが入るリフレクターカバー。今のところ参考出品としての製作だが、ぜひ製品化してほしい箇所のひとつだ。

アルミエンジンカバーは24,200円(税込)。ちなみに現車のスピード/タコメーターはMOTO GADGET製で、ケースは削り出し製作。

削り出しオイルフィルターカバー(手曲げマフラーに付属)は、ボルト装着部分が出っ張っている純正に対しフラット。絶妙なクリアランスに貢献。

Z1は集合マフラーにするとサイドスタンドを畳んだ際フレーム側に当たる。それを解消するための削り出しサイドスタンドストッパー(販売予定)。

現車はマルチテンプメーターを装着。この位置にヨシムラのPRO-GRESS3 A/Fメーターを装着できる。マフラーにはA/Fセンサー装着ボスがあり。

フューエルタンク上には、故ウェス・クーリーのサインとゆかりのゼッケン番号34が描かれている。「クーリーに乗ってもらいたかっ たですね」というヨシムラ開発陣の一言が、新ヨシムラZ1への思いを物語る。

販売予定のZ1フォークブラケットキット。フロント19インチホイールでの理想的なハ ンドリングを追求する過程で、ステムのオフセット量は50mm、52.5mm、55mmの 3タイプを製作し実走テストした上で決定した。ブラケットは縦剛性や捩り剛性を解析した上で設計。ここにもレーシングマシン開発での技術が生かされている。ハンドルポストは硬質ラバーを介したフローティングマウントで、微振動を吸収する設計。