最後に厳しくアラ探し
ソロとタンデムでのツーリングユース検証はしっかりできたけど、何かまだ気付いていないこともありそう。そこで最終日は重箱の隅をつつくようなインプレを取るべく、通勤や撮影で走り慣れている道を適当に走り回った。
特に自宅からオートバイ編集部までの首都高5号、6号線と湾岸線はインプレ取りで走っているから、比較対象は100台以上。 もちろんCB1300SF/SB/STやCB1100、ZRX1200ダエグ、VFR1200F、FZ-1、K1300GT、1400GTR、FJR1300ほかのネイキッドやスポーツツアラー系バイクでも走行済み。
すっかり体に馴染んだバンディットだけど、最後は心を鬼にしてアラ捜しだ!
装備充実でもっとツアラー適性を!
このバンディット1250F、とにかく乗っていて快適で疲れない。ベーシックロードスポーツモデルとしては素晴らしくバランスのとれた仕上がり。だけど、ツアラーと見ると細かな不満もいくつか出てくる。
まず欲しいのが小物入れ。携帯電話やデジカメ、サングラスなどは、すぐ取り出せる場所に入れときたい。せっかくフルカウルを装着したんだから、カウルの上側とかメーターパネル回りに蓋付きポケットを付けて欲しかった。後付け用品で対処するのも自分で加工するのも難しいから、メーカー側
で仕上げてもらいたい部分だ。
それから、ハンドルを左に切ったときにしか使えないハンドルロックも残念。駐車環境は多様なんだから、どちらに切ってもロックできるようにして欲しい。
スーパースポーツモデル的なメーターは不似合い?
バンディット1250FのメーターはGSX-R系のものを流用している。このオートバイに限らず、スピードをデジタルで表示する車種が増えているけど、個人的にはどうも馴染めない。
数字を読み取るより、針の位置で大まかな見当をつけるほうが楽で安全。ツアラー志向のモデルなら、なおさらではなかろうか。
メーター表示の不満はもう一つ。メーター右下に時計・オドメーター・トリップ1・トリップ2が表示できるけど、切り替えにメーター左側のボタンを押す必要がある。走行中はハンドルから手を放したくないから、ハンドル左右のスイッチ部に切り替えスイッチが欲しい。じゃなければ、2つの内容を同時に表示するとか。時計とトリップは常時表示されていたほうが絶対に便利なはずだ。
逆にうれしい装備がギア段数を表示してくれるインジケーター。クルージング中、トップに入っているか確認するためにシフトペダルをかき上げる操作から解放されるのがいい。
ユニークなのは、ガソリン残量が5.5Lになって警告灯が点いた時点からの走行距離を表示する“リザーブトリップ”という機能。それまでの燃費を見れば残り何km走れるか見当が付くし、給油すれば
自動的にリセットされる。任意の回転数で点灯させてシフトアップタイミングを報せてくれる機能もあるけど、バンディットの性格だとありがたさを感じる機会は少なそう。新車購入後の慣らし運転や、省燃費運転で役立つ程度かな。
そうそう、メーターとは関係ないけど、センタースタンドが標準装備されているのは何かと便利。整備や掃除もグッと楽になる。
トータル燃費はオーバー18km/L!
ツーリングでは航続距離も重要だ。一日に何度も給油するのは面倒だし、地方の高速道路はガソリンスタンド自体が少ないから、早めの給油を心掛けないとガス欠しそうでヒヤヒヤするから、最低でも1タンクで300km、欲を言えば400kmは走ってほしい。
今回の試乗は高速道路70%、一般道20%、市街地10%といった配分。燃費は最高22.4km/L(ソロ・100km/hアベレージの高速道路)、最低が13.85km/L(ソロ・都内の渋滞路)。
全走行の平均は18.05km/hで、航続距離はざっと340km以上になる。満タンスタート、途中1回給油で東京から岡山や青森県の八戸あたりまで届く計算。これならツアラーとしても満足だ。
テスト中はハイオクとレギュラーをほぼ交互に入れてみたけど、フィーリングも燃費も変わらなかった。ECM(コンピューター)が燃料の濃さや噴射量、点火タイミングを調整してるんだろうな。ということでレギュラーで充分。なんたって財布に優しいからね。
結論:「恋人」じゃなく「親友」になるバイク
正直言って、最初に見たときは「今一つ、華がないな」と思ったんだけど、1週間乗っていて、それこそがバンディット1250Fの魅力だと判った。自己の存在を主張せず、ひたすらライダーに従順。バラじゃなくてタンポポのような、ステーキじゃなくてお茶漬けのようなオートバイなのだ。
長く付き合うほどに愛着がわくこと間違いなし。この仕上がりでこの価格は絶対にお買い得。ゆったりツーリングを楽しみたい人には自信を持ってお勧めする。
初めて“1週間インプレ”をやってみたけど、なるほど、距離を走らないと判らないことも数多くあった。勉強になりました。
問題は腹黒執事の福助めが、次回にどんなバイクを用意してくるか。個人的希望はポジションもエンジン特性もぬるいツアラー系が楽でいいんだけど……。オートバイweb読者からのリクエストも受け付けます!
(本日の走行約440km なんだか走り足りない気さえしている太田安治)