史上最強のニンジャ、ついにストリートに降臨!
量産二輪車初の過給エンジンが生み出す、強烈なパワーと加速性能を引っさげて、いよいよニンジャH2が日本の公道を走り出す! 過激なスペックやスタイリングがクローズアップされているが、実際乗ってどうなのか? スゴい走りは噂通りなのか? 早速試乗チェックだ。
強烈パワーとしなやかな車体を持つ「ホンモノの怪物」!!
H2は減速時やラフなスロットルオフの時、「パシュッ」と鳴く。スーパーチャージャーの駆動ギアのバックラッシュ音らしいが、まるでターボ車のブローオフバルブが減圧した時のような音だ。だが、H2にはそんなバルブはない。このエンジンは、どう扱ってもサージングが起きないよう、ガス量、点火系などが徹底的に造り込まれている。
後付けではなく、最初から過給器ありきで開発された「過給エンジン」なのだ。だからリニアな応答をするし、微細なパワーコントロールもしやすい。そのエンジンドライバビリティをサポートする電脳アシスト群も充実しているため、ほとんど過給器を意識しなくていい使い勝手になっている。ほとんど、というのは、少しだけスロットル開度に対してパワーが安定するまでに微妙なラグがあるから。これは過給圧が上がるまでのラグと言うより、過給によって力が上乗せさせるのを穏やかな変化になるよう制御するためと思われる、緩慢なラグだ。特に4000回転辺りまではそれを感じる。
しかし、5000回転から上はリニアというか、程よくダイレクト。ピークパワー発生回転の1万回転を越えて、1万4000回転のレッドゾーン手前までは恐ろしく忠実なピックアップで、力を増大させ続ける。この特殊なエンジンフィール、その力量感はとにかく「強烈」の一言だ。
そんなパワーを携えたH2だが、そのハンドリングを含めた操縦感覚がかなり面白い。このH2、強烈なパワーを使っても音を上げないシャシーを持っている。そして、同じカワサキでも、巨大なボディのZX-14Rよりもずっと強力な旋回性も発揮できるし、身のこなしも軽い。でも、スーパースポーツのZX-10Rのように、クイックな動きをカッチリとしたハンドリングタッチで遂行できるか、と言われるとちょっと違う。
H2の足回りはバネがしなやかで、たぶんストローク量も多い。スタンダードセッティングのダンパーもかなりソフト目だ。だから、加減速時のピッチングも大きいし、何より乗っていて快適で、人に優しい動きをする。まったくSSチックではないのだ。でもメガスポーツのようにドシッとはしていない。いたって身軽なロードスポーツだ。
このトレリスフレームは、エンジンを強度メンバーとしているため、高い剛性を得られる。一方で、パイプ部では的確にねじれ特性と剛性力を調整できる。このシャシーの威力と、新しいKYB製の前後ショックの滑らかな作動性が見事にバランスしているのだろう。これほどしなやかなタッチで応答するのに、ぶれないシャシーはそうそうない。トラクションコントロールの作動も滑らかで、その異常な速さを見事にオブラートに包んでくれる。このH2は、これで街中から峠道、ツーリングまで平和にこなすのだ。まさしく「ホンモノの怪物」だ。
撮影:南孝幸、赤松孝
カワサキ ニンジャH2の基本情報、スペック
寸法・重量
全長/全幅/全高mm 2085/770/1125
ホイールベースmm 1455
最低地上高mm 130
シート高mm 825
キャスター度 24.5度
トレールmm 103
車両重量 kg 238
エンジン・性能
種類 水冷4スト並列4気筒
弁形式 DOHC4バルブ
内径×行程mm 76×55
総排気量cc 998
圧縮比 8.5
最高出力kW/rpm 147.2(200PS)/10000
最大トルクN・m/rpm 154.5(14.3kg-m)/10000
燃料供給方式 電子制御燃料噴射
点火/始動方式 フルトランジスタ/セル
燃料タンク容量L 17
過給器 遠心式スーパーチャージャー
サスペンション
前 テレスコピック
後 スイングアーム
ブレーキ
前 φ330mmダブルディスク
後 φ250mmディスク
タイヤ
前 120/70ZR17
後 200/55ZR17
価格
標準現金価格 270万円