ライトウェイトの醍醐味を楽しめる快活ミドルDUKE!
デュークファミリーの中核を担う、ミドルモデルが690。軽量でコンパクトな車体にイキのいいLC4シングルユニットを組み合わせ、ライトウエイトスポーツの見本のような仕上がりが光るモデルだ。2016年モデルではエンジンをはじめ各部を一新。その実力のほどを早速試乗チェックしてみよう!
ビッグシングルの概念を変える爽快な吹けは特筆モノ!
オートバイの魅力を語るとき、「突っ走る」とか「走り抜ける」という表現が使われることが多いが、690DUKEにピタリと当てはまるフレーズは「駆け回る」だ。ただ速いということではない。ライダーの操作に対する反応が忠実で、前後タイヤのグリップ状態も手足と腰からしっかり伝わってくるから、まるでオートバイを介さずに自分の体だけで走っている感覚。大丈夫かな? という不安がなく、峠道のタイトなターンをクリアすることがひたすらに楽しい。
その面白さを生んでいるのは第一に軽さ。乾燥重量が150㎏を切っているから、装備重量でも160㎏そこそこ。2気筒250㏄モデルと同等以下の数値で、軽快なハンドリングや取り回しやすさの核になっている。
もう一つのポイントがパワー。SOHC単気筒693㏄というカタログスペックから、大きなピストンの質量を感じさせながらドコドコ回るエンジン、というイメージを持つ人も多いだろうが、DUKEのエンジンは驚くほど軽く鋭いフィーリング。前モデルも同じ傾向の特性で、フル加速中にうっかりレブリミッターを効かせてしまうほどだったが、新型はさらに1000回転ほど多く回るようになり、タコメーターに注意を払う必要がない。実効パワーバンドが広くなったことでシフトチェンジの頻度が減って街乗りがスムーズになり、連続コーナーでの走りやすさも格段に上がっている。しかも70馬力を軽く超えているのだから、軽い車重との組み合わせで充分過ぎる加速力を発揮するのは当然だ。
もう少し具体的に記しておくと、4000回転あたりまではシングルらしい鼓動感と歯切れのいい排気音が楽しめ、パワーの盛り上がりを感じるのは6000回転を超えたあたり。そこから8000回転程度までが最もエキサイティングな反応で、そのままパワーの落ち込みなく回って約9000回転でレブリミッターが作動する。繰り返すが、ビッグシングル特有の重ったるさは微塵もない。これほど爽快な単気筒エンジンは初めてだ。
ハンドリングもパワーを存分に使い切れる味付け。車体剛性が低中速コーナーに合っていて、SSのような硬さやネイキッドのような頼りなさがない。攻め込むとステアリングヘッド回りに僅かな捩れを感じるが、これが旋回性と接地性を生んでいる。
今回、スタンダードと「R」を乗り換えながら走ってみたが、Rは車体姿勢が少し「リア上がり」になっていることで初期旋回力とフルバンクからスロットルを開けて行ったときの安定感が明らかに高い。ハイグリップタイヤに換えてサーキットを攻めたい人にはRがお勧めだが、スタンダードでも何ら不足はないので、ストリートやツーリングをメインに楽しむならスタンダードがいいと思う。
新型690DUKEはミドルスポーツの概念を変える存在。KTMの思想と技術力、そして勢いを思い知らされた。 (太田安治)
RIDING POSITION
ライダーが車体のほぼ中央に位置するポジション。上体に余裕があることで体重移動を含めた操作が積極的に行え、車体が暴れたときのコントロールもしやすい。足着き性は標準的だが、サスペンションが異なる写真の「R」はシート高も少し高くなっている。
■主要諸元
全長×全幅×全高 2186×843×1165㎜
ホイールベース 1466±15㎜
シート高 835[865]㎜
車両重量 約148.5 [147.5]㎏ (燃料含まず)
エンジン形式 水冷4ストOHC4バルブ単気筒
総排気量 692.7㏄
ボア×ストローク 105×79.7㎜
圧縮比 12.7
最高出力 73 [75]HP/8000rpm
最大トルク 7.55㎏-m/6500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 約14ℓ
キャスター角/トレール 63.5度/NA
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320㎜ディスク・φ240㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70R17・160/60R17
写真/南 孝幸、森 浩輔
※今回の記事はオートバイ2016年8月号より(↓)