シャープなルックスに変身したがスパイスの効いた面白さは健在!
この新型MT-09は良くも悪くもと言っていいのか、初期型から連綿と続くアクの強い走りのDNAをそのまま受け継いでいる。外観デザインはLEDのツインライトになったり、サイクルリアフェンダーなどを採用して、ルックスはずっとシャープになった。
また、ライディングアシスト系も変更。スリッパークラッチや、アップ側のオートシフターなども搭載。それに何より、フロントフォークの変更が嬉しい。峠道をふつうのライダーが楽しむのには、これまでのMT-09の足回りはソフト過ぎたが、今回からフォークに圧側減衰の調整が追加されたのだ。
これを調整すれば、兄弟モデル・XSR900なみのスタビリティ、落ち着きも実現できる。ただし、標準セッティング値はこれまでとほぼ同じ。間違いなく、わかって乗らないと思い通りに乗りこなせないバイクだ。
標準セッティングでは極めてソフトなサスはどこでも快適な乗り心地を実現する。街中からツーリングの相棒、峠道でのオモチャと、どんな道でも相性には問題はない。ただ、このセッティング値のままのソフトな足は、波状に荒れた路面や大きなギャップなどを乗り越えると簡単に滑ったりもする。
また、加減速時には大きなピッチングなども生み出す。何も考えなくても常に確実に路面を捉えてくれる、高級なSSの走りに憧れるライダーにとってはいかにもまどろっこしく、ヤボったい挙動だ。
だが、このバイクのこうした挙動は「操作タイミングのわかりやすさ」を把握しやすく、これに合わせてスロットルワークをすれば体重の入れ替えがとてもしやすい。このリズムを無視して操作すればダダをこねるが、ちょっと操作のテンポを合わせてやれば、車体の軽さ、機動のシャープさを活かして、400クラス並みの機敏なフットワークが発揮できるのだ。冒頭でも書いたが、この新型の圧側減衰調整機構の追加で、その調整幅はかなり広くなっているのだ。
フォークやリアショックのイニシャルを強めてやると、誠実で裏切らない、よく路面を捉える足回りに変身する。ココがこれまでのモデルと違う。MT-09の特徴であり魅力でもある、エアークッションの上を走ってるようなソフトな走行感覚は普通のバイクの乗り心地に変わってしまうが、その代わり、かなりスポーティなペースで峠道を遊んでも簡単には破綻しなくなる。
MT-09はもともとかなり元気のいいバイクだったが、パワーはこの2017年モデルで116PSになった。低回転域でよく粘り、中域からは腰のあるトルクで勢い良く吹けるエンジンで、その力量感たるや、まるっきりリッタースポーツである。ビッグネイキッドの中でもトップクラスの瞬発力を発揮するのだ。しかもこのパワードライバビリティがすぐれているのも大きな魅力だ。
スタンダード、A、Bの3段階のドライブモードも引き続き搭載されるが、基本的にどのモードでも滑らかな応答をしつつ、スロットルの開閉速度にはしっかりとダイレクトに応える。つまり力の立ち上がり方がとにかく力強いが、スロツトルの開け方でどうにでも応答させる事ができる。
こうした瞬発力を手玉に取って、このバイクをビッグモタードバイクのように操れる猛者もいるが、普通に街中でアシ替わりに使おうと思っているライダーにもフレンドリーな一面もあるのだ。
新型MT-09はパワーやキレのいいハンドリングを活かして、どんな使い方にも適応するが、しっかりその魅力と「上手な使い方」をわかって乗る事も求められる。相変わらず、スパイスの利いた面白いバイクだと思う。
RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:68㎏)
シート高はさほど高くないが、サスが柔らかいので跨がるとかなりシートが沈んで低くなる。それにシートとタンクの接合部が非常にスリムで、これも足着き性を向上させている。足の出しやすさや車体の軽さで、ネイキッドではもっとも取り回しやすいバイクの一台だ。
COLOR VARIATIONS
2017年 MT-09 ABS 主要諸元
全長×全幅×全高 2075×815×1120㎜
ホイールベース 1440㎜
最低地上高 135㎜
シート高 820㎜
車両重量 193㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量 845㏄
ボア×ストローク 78×59㎜
圧縮比 11.5:1
最高出力 116PS/10000rpm
最大トルク 8.9㎏-m/8500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 14ℓ
キャスター角/トレール 25°/103㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ298㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17