走行フィールだけでなく走る姿も味わい深い1台
オマージュしたのは、60年代終わり頃のレーシングマシンだろうか? 70年代の耐久レーサーのニオイもする…。RnineT「レーサー」は、そんなクラシカルなレーサーテイストをみなぎらせている。
圧巻なのは、大きなヘッドライトのロケットカウル。実用性はあまりなく、べったりとバイクに伏せて、一生懸命にスクリーンに潜れば、きっと最高速が少し変わる程度。でも、この強い前傾姿勢のレーサーに跨がり、コーナリングしている姿は、まさしく、子供の頃にバイク雑誌に出ていた写真に心踊らせた「耐久レーサー」の姿だった。
ライディングポジションは古い欧州のスーパースポーツを彷彿させる強前傾。意識して前の方に座って腰をいたわらないと腰痛持ちには辛い。でも、ルックス同様、走る際の雰囲気にも念入りな演出がなされている。
マフラーから吐き出されるサウンドは、意外に音量のある、歯切れのいい弾けるような音質。110PSを発揮するエンジンは決して非力じゃない。のんびりした吹けの中にも勇ましさを垣間見せ、破壊力のあるトルクを発揮する。そして、ハンドリングは素直で従順なもの。そのスタイルと特異なライポジだけで判断して、外観の演出だけで走りを忘れたバイクなどと揶揄するのは間違いだ。
100㎞/h以下では、特にその低重心が生み出す、軽快な身のこなしが全てのライディングをイージーにしてくれている。それよりも速度が上がっていくと、フロントまわりに独特の粘りが生まれてロングランを楽にしてくれている。
足回りは同じファミリーのスクランブラーなどと同じレイアウトの正立フォークを採用している。このフォークが剛性的に車体と相性がいいようで、乗り心地がよく、路面からの衝撃を車体全体でバランスよく受け止めるのだ。同時に追加されたファミリーの「ピュア」もこのレイアウトを採用しており、総じて倒立フォーク採用のSTDよりハンドリングのバランスがいい。特にこのレーサーは、シングルシートに合わせてひとり乗り用のセッティングを施されたかのように、乗り心地とスタビリティがしっとりとしていた。
このレーサーは、乗っているときのフィーリング以外でも、昔を知るライダーの心に訴えかけてくる。人が乗っている姿も美しいのだ。歯切れのいい排気音で、左右にシリンダーを生やした低い車体がフルバンクで接近してくる姿を見ると、古い映像で聴いた、直管メガホンマフラーの音が頭の中に響くのだ。そうそう、こんな感じ、と。
このレーサーの演出はかなり大胆だ。ライポジに小さなシングルシート、それにファッション性重視のハーフカウルなど。しかし、走って愉しいし、走っている姿を見ても、古いライダーに何かを思い出させてくれたりする。徹底した演出が不思議な愉しさを味合わせてくれる1台だ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2105×770×1125mm
ホイールベース 1490mm
最低地上高 NA
シート高/車両重量 805mm/218kg
エンジン形式 空油冷4ストDOHC4バルブ水平対向2気筒
総排気量 1169cc
ボア×ストローク/圧縮比 101×73mm/12.0
最高出力 110PS/7750rpm
最大トルク 11.8kg-m/6000rpm
燃料供給方式量 FI
燃料タンク容量 17L
キャスター角/トレール 63.6度/103.9mm
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320mmダブルディスク・φ265mmディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
DETAIL
RIDING POSITION
シートストッパーをホントに使おうとすると、腰が痛くなるほどの前傾姿勢になる。ハンドルが遠いのとシッティングポイントが後ろ過ぎる、その両方だ。それをごまかすには前の方に座る事だ。でも、峠道を走るとき、腰を引いてのライポジになっていた。
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