シンプルながら素性のよさで、侮れないフットワークを披露
4気筒エンジンを搭載するS1000シリーズが存在感を増しているとはいえ、BMWと聞けば「ボクサー」と呼ばれる水平対向2気筒のエンジンレイアウトを90年以上も守り続けているRシリーズを連想するライダーは多いだろう。現在のRシリーズはアドベンチャーのGSを筆頭に、ツアラータイプやスポーツタイプなど幅広く人気を得ているが、中でも独自のファン層を生んでいるのがRnineTからスタートしたヘリテイジシリーズ。このピュアはオートバイ本来のシンプルなスタイルを取り戻すべく、RnineTをベースに余分な装備を徹底的に削ぎ落した最新のバリエーションモデルだ。
1200㏄の大型モデルだが、ネイキッドスタイルに加えてリア回りもすっきりしているので威圧感はない。跨ってみるとアドベンチャーモデル並みに幅の広いハンドルバーに戸惑うが、それも最初だけ。グリップ、シート、ステップはネイキッドモデルとして標準的な位置関係で、上体も下半身もリラックスした姿勢が取れる。目の前には小ぶりなメーターが1個あるだけで視界を妨げるものはなく、車体を抑え込みやすい幅広ハンドル、低回転域から粘り、常用回転域でユルユルと回るエンジン特性、左1本出しのマフラーから響く粒感のある排気サウンドが市街地走行を楽しく、快適に演出してくれる。解放感、風、振動、音、それらが混じりあって広がる世界にゆったりと浸れるのだ。
ただし、上半身に受ける風圧が大きいので長時間の高速クルージングは得意ではない。音と振動という要素も含め、快適速度域は100㎞/h程度といったところか。
ストリートを流すような走りがピュアのキャラクターに合っていることは間違いないが、ワインディングでの運動性にも驚かされた。211㎏という車重に低重心エンジン、さらにはステアリングダンパーも装備しているのでステアスピードは穏やかだが、幅広ハンドルゆえに上体の動きと力を効率的に伝えられ、強引にねじ伏せるような寝かし方をすれば素早く向きが変わる。
RnineTとは異なる正立フォークも強引な操作力を適度に逃がしてくれるので、神経質さを感じさせないハンドリングだ。ステップ位置が低いため深いバンク角ではバンクセンサーやペダルの先端が接地するが、その状態でも安定感はずば抜けているし、スロットルを開けた際の二次旋回も素直。これは標準装着タイヤ・BSのT30evoの特性も効いているのだろう。
峠道の路面状況やRの大きさによっては、スーパースポーツよりもはるかに扱いやすく、結構なペースで駆け回れる。何の飾り気もない、シンプルなネイキッドが電子制御満載の最新スーパースポーツを追い回せるというのも痛快な話。市街地での快適さと峠道での面白さを備え、ボクサーエンジンの味を堪能できるピュア。まさに車名どおりのキャラクターだ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2105×870×1040mm
ホイールベース 1490mm
最低地上高 NA
シート高/車両重量 775mm/216kg
エンジン形式 空油冷4ストDOHC4バルブ水平対向2気筒
総排気量 1169cc
ボア×ストローク/圧縮比 101×73mm/12.0
最高出力 110PS/7750rpm
最大トルク 11.8kg-m/6000rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 17L
キャスター角/トレール 62.4度/111mm
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320mmダブルディスク・φ265mmディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
価格:167万円
DETAIL
RIDING POSITION(身長:176㎝、体重:60㎏)
最初はハンドル幅の広さに戸惑うが、この幅がハンドリングの自在性と安定性を生むことを実感するにつれて気にならなくなる。シート高は775㎜という低さで、ステップまわりがスリムで足を真っすぐ下せるため足着き性は大型モデルとは思えないほど良好。
問い合わせ:BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL.0120-269-437