スポーツツアラーとしての個性が色濃かったサンダーエース
レーシングマシンのような750㏄スーパースポーツが注目を集めるようになった1980年代半ば、リッタークラスのスーパースポーツも登場するようになる。ヤマハも1987年、FZ750の後継でレーサーさながらのフルカウルを備えたFZR750に加え、同時開発された兄貴分というべきFZR1000をデビューさせた。FZR1000はデザインや車体の構成などはFZR750と瓜ふたつ。水冷直4エンジンは排気量989㏄から135PSという、当時としては驚異的なパワーをマークしていた。しかし現代のリッタースーパースポーツとは異なり、車体は大柄でタンデムを重視したシートも備え、安定志向のハンドリングというジェントルでスポーツツアラー的な性格を与えられていた。1989年のモデルチェンジで排気量アップ、EXUPも採用。1991年には倒立フォーク装着など改良は続いたが、その走りは基本的に変わらなかった。
このFZR1000の後を継ぐ新たなフラッグシップモデルとして、1995年にデビューしたのがYZF1000Rサンダーエースだった。すでに1993年から750㏄スーパースポーツがYZF750となっていたのに合わせて車名を変更しただけでなく、そのデルタボックスフレームもYZF750のディメンションをベースに新設計したものへと変更、足まわりはφ48㎜正立フロントフォーク、新設計のスイングアームをチョイス。そこに搭載されている1002㏄水冷直4エンジンはFRZ1000がベースだが、クランクマスを22%軽量化するなど各部に大幅に手を加えられ、キャブやEXUPも新しくなって最高出力も145PSにまでパワーアップ。車重も198㎏と軽くなってスペック上はさらに過激になり、スタイリングも空力特性を追求しYZF750Rと同等の優れたCdA値を備えるものになった。もちろん動力性能も向上し、ハンドリングは軽快になったのだが、それでもやはりレーシーなスーパースポーツではなく、FZR1000のように快適で扱いやすい高速スポーツツアラーとして人気を集めることになる。当時直接のライバルとなったのはCBR1100XXやZZR1100だった。
それでもサンダーエースは、ヤマハの最高峰モデルとして多くのライダーたちから注目を集める存在ではあったが、1998年にはスーパースポーツの歴史を変えた名車・YZF-R1が登場し、最高峰の座もR1に奪われてしまう。しかしヨーロッパなどでツアラーとしての根強い支持もあってカタログから消えることはなく、最終的に2003年まで販売は続いていた。
YAMAHA YZF1000R ThunderAce[1996] SPECIFICATIONS
エンジン型式 水冷4ストロークDOHC5バルブ並列4気筒
総排気量 1002㏄
内径×工程 75.5×56㎜
圧縮比 11.5:1
最高出力 145PS/10000rpm
最大トルク 11㎏-m/8500rpm
燃料供給方式 キャブレター[BDSR38]
変速機型式 常時噛み合い式5速リターン
全長 2085㎜
全幅 740㎜
全高 1175㎜
軸間距離 1430㎜
シート高 790㎜
乾燥重量 198㎏
燃料タンク容量 20L
タイヤサイズ(前) 120/70ZR17
タイヤサイズ(後) 180/55ZR17
当時価格 輸出車