走りの魅力はそのままに、優しさを磨いた日本専用車
今年登場した新生ストリートトリプルは、675をベースにフレームを新作し、765㏄へ排気量をアップ。同時に吸排気系も一新し、電装系を含むトラコンなどの各種ライディングアシスト群も充実させている。
先鋒となった最上級グレード・RSのハイグレードでタフな足回りは感激もの。加えて675から大幅に増強された低中速のトルクも、走る場所を選ばないイージーさと強力な瞬発力を発揮。ミドルサイズにリッタークラスのスポーツネイキッドなみの動力性能…という印象だった。
今回登場した「R」はそんな新生ストリートトリプル765シリーズの中堅モデル。魅力的な価格のスタンダードスポーツ「S」と「RS」の中間になる。中間グレードともなると、独自の魅力のアピールは難しくなる。どうせならイチバン安いものを、いいものを、と考えるライダーも多いからだ。そこで、トライアンフジャパンはローダウンという「独自の魅力」を追加してきた。
エンジンの基本構成は全て同じだが、このRはRSに対し、エンジンのマッピングが違い、よりフラットな特性でより高回転域まで伸びる118馬力仕様。RSに比べると、サスもフロントのBPFの減衰アジャスターが片側になったり、リアサスがオーリンズに対してショーワになる。この前後サスは短く設定され、RSとホイールトラベル量で比べると、フロントで20㎜、リヤで33㎜ほど少なく、シート形状も違う。これらでシート高を45㎜も低く設定してみせたのだ。
小柄なライダーに門戸を開いた事は大きな魅力。ただ、ストリートトリプルの身上である走りがどうなったのかは気になるところ。しかし、街中、高速道路、峠道、雨の中とさんざん走って、気になったのはたったふたつだった。ひとつは、不意に大きなギャップを乗り越えたとき、ローダウンゆえ、少しだけ突き上げられる力が強いこと。もっともローダウン仕様だと言われなければ気にならないレベルだ。もうひとつは、ギャップの多いコーナーでリーンさせていくとき、RSに比べギャップの影響を受けやすいこと。ただ、これもRSと比べての話。基本的には乗り心地が非常に良く、よく動く足回りだ。
エンジンは特に低中速域での応答がどの走行モードでもRSより滑らかで、加えてよく粘る。パワーバンドは9000〜1万2000回転で、RSと比べれば荒っぽさが丸められているものの、唸りを上げて勇ましく吹ける力強いパワーに変わりはない。RS同様、このクラスのスポーツネイキッドの中では紳士的で極めて扱いやすいのが魅力だ。
このバイクはミドルスポーツのサイズやシートの高さに不安を感じるライダーには最適なモデルで、十分にその役目を果たしている。興味があるなら、ぜひ一度試乗することをお勧めする。愉しいぞ。
全長×全幅×全高 2045×735×1060㎜
ホイールベース 1410㎜
最低地上高 NA
シート高 780㎜
車両重量 166㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量 765㏄
ボア×ストローク 78×53.4㎜
圧縮比 12.65
最高出力 118PS/12000rpm
最大トルク 7.85㎏-m/9400rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 17.4ℓ
キャスター角/トレール 24.9度/105.6㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ310㎜ダブルディスク・φ220㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
DETAIL
カラーTFT採用の大型液晶メーターは、使用状況や好みに合わせた、3種類のデザインテーマを用意。体格に応じて角度調整も可能で、明るさに応じて表示も自動反転する。
RIDING POSITION(身長:176㎝ 体重:65㎏)
シートは低く、足を出せばヒザに大きなゆとりが生まれるが、この身長だと乗車時にはヒザの曲がりが少しキツく感じる。太ももの太いライダーだと足着き時にシートの角を硬く感じるかもしれないが、高さは低い。車高も低い分、バンク角もやや浅め。
国友愛佳(身長163㎝)の足つきチェック!
45㎜のローダウンは、前後サスペンションのスプリング長の変更とシートの肉厚調整などで実現したもので、リンク比などはそのまま。またがってみると、数値以上に足着き性が向上しているのがわかる。小柄なライダーにとってこの差は大きい。