まろやかに上質に進化したオトナのツアラー!
2018年型のCB1300スーパーボルドールはカラーリングとスタイルが微妙に変わり、新しい排ガス規制・EURO4対応になった。新規制に適合させたのに合わせ、最高出力は9PS上がって、110PS/7250rpmになっている。これだけ見ると劇的なパワーアップだ。さらにバックトルクリミッターが付き、しかも操作が軽いクラッチになっている。フレームではパニアケースが取り付けやすくなっていたり、と実用性に関わる細々とした改良もされている。
ベースになっている「SF」を含め、このシリーズは今や日本のビッグバイクのスタンダード。不動のベストセラーだ。もはや「熟成を重ねる段階」と言ってもいいだろう。今回も多くのパートに手が入っているにもかかわららず、ルックスを含めて従来からの基本的なキャラクターを変えてこなかった。
高い人気があるがゆえ、変えたくても変えられないのか、ホンダの叡智を結集して、あえて「不変の中での進化」を狙っているのか…このバイクはこんな調子で、懸命に苛酷な騒音規制に挑んだり、排ガス規制に対処したりして進化を続けてきている。
ただし、今回は1割ほどパワーもアップした。これは近年まれにみる一大事! さぞかし…と思って試乗してみたが、不思議なことに、そんな力強さはまるで感じない。
もともとが極低回転域から強力なトルクがあるエンジンだ。3000回転あたりまでは、ラフに扱うとドンツキに感じるほど敏感なレスポンスだったが、今回それがが収まって「まろやか」にレスポンスする。4000回転以上回したときに、初めてトルクの盛り上がり方が力強いな、と感じるが、圧倒的に強力、というわけではない。
たぶん測定すれば明確に違うのだろうが、体感はしづらい。4000回転以上は同じようにリニアだが、旧型のパワーカーブをなぞるようにトルクを増強されている感じ。一緒に走れば、知らないうちに旧型より前に出る、といった差になるだろう。ちなみに6速・100㎞/hは3000回転強。これくらいの回転域からでもダッシュ力は猛烈。リッターSSなども目じゃない瞬発力だ。
あと、新型はスポーツペースではなく、ノンビリ走っているときの体重を入れてからの旋回性が良くなっている。微妙ではあるが、少し安定感も増しており、体重移動を掛けるまではこれまでよりどっしりしている。
どこから見ても上質な仕上げを施された、迫力いっぱいの造形。大きく、手強そうな車体は走り出すと素直で身軽。想像するよりずっと軽い動きで身を翻す。極低回転からトルクみなぎるエンジンは、そんな車体をどんな場所でも意のままにダッシュさせ、強烈な速さも気楽に生み出してしまう。コイツは高級な「オトナのツーリングスポーツ」であり、これぞビッグバイクといった力、音、手応えを楽しめるバイクだ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2200×825×1205㎜
ホイールベース 1520㎜
最低地上高 125㎜
シート高 780㎜
車両重量 274kg
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 1284cc
ボア×ストローク 78×67.2㎜
圧縮比 9.6
最高出力 110PS/7250rpm
最大トルク 12.0kg-m/5500rpm
燃料供給方式 PGM-FI
燃料タンク容量 21L
キャスター角/トレール 25度/99㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ310㎜ダブルディスク・φ256㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
DETAIL
RIDING POSITION(身長:176㎝、体重:68㎏)
SFよりハンドルが大きく、高さも立ち上がっているので、上体は結果的に前傾度をより抑えたものになる。楽だがホールド性も良好だ。小さなスクリーンだが街乗りペースでは乗り手の胸元、高速域では普通姿勢でもヘルメットの下半分あたりを走行風から守る。