絶妙バランスと、心憎い気配りを感じる演出
400㏄という排気量区分は日本の免許制度による括り。70年代以降は大きな存在感を示していたが、96年の免許制度改正と00年台から急速に強化された排出ガスと騒音規制を受けてラインアップが激減した。
そんな逆風が吹き続ける中、地道な改良を重ねて規制をクリアし、多くのファンに愛されているのがCB400スーパーフォアだ。17年10月に登場した新型はFIのスロットルボディーとマフラーの変更で3馬力アップし、サスペンションセッティングも変更。とはいえ落ち着いたルックスはそのままで「変わっていない」ことに安心感を覚える。
走り出してすぐに気づくのは排気音の変化。前モデルは静粛性と引き換えにくぐもった音質だったが、新型は4気筒の集合マフラーらしい図太くて張りのあるサウンドで、つい空吹かししたくなってしまうほどだ。
エンジンはパワー/トルク共にアップしているが、市街地でその差を感じることはできなかった。しかし高回転域ではレッドゾーンに向かう回転上昇に勢いが付き、1万3500回転でリミッターが作動するまで一気に吹け上がる。スロットルを開けて戻してまた開けて、という操作に対するレスポンスも自然になった。新型がパワフルというより、前モデルまでの「足かせ」が外れて本来の性能を取り戻したような印象。排気音が少し大きくなったことで体感的な速さも増している。
このCBは1気筒当たりの作動バルブ数を回転数に応じて2本/4本に切り替える『ハイパーVテックRevo』を採用していて、1〜5速の場合、6300〜6750回転の間でスロットル開度に応じて切り替わりポイントが可変する。作動音やショックは一切なく、加速力が急変するわけでもないが、注意していれば排気音がにわかに元気になることで気が付くはず。6速では6750回転で切り替わるが、この回転数ではちょうど100㎞/h程度。高速道路のクルージングでは2バルブ作動で穏やかに反応し、追い越し時は4バルブ作動に切り替わって鋭く車速を増すように設定されているのが心憎いところ。
個人的にCB最大の魅力はハンドリングだと思っている。どんなペースでも前後タイヤの接地感がしっかり感じられ、一定の手応えのまま素直に旋回してフルバンク中の安定性も抜群。渋滞路だろうが路面の荒れた峠道だろうが、雨の高速道路だろうが安心して走れるハンドリングは、操るライダーの技量を問わず、安全にも寄与する。
それでいて、サーキットで走らせても弱アンダーステア傾向を保つので攻め込みやすい。前後サスペンションにプリロード調整機構を備えているので、自分の体重や走り方に合わせればさらに人車一体感が増す。
トータルバランスの良さは世界でもトップレベル。大型車オーナーも一度乗ってみるといい。オートバイの楽しさと排気量は関係ないことを実感させられるはずだ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2080×745×1080㎜
ホイールベース 1410㎜
最低地上高 130㎜
シート高 755㎜
車両重量 199(ABSは201)kg
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 399cc
ボア×ストローク 55×42㎜
圧縮比 11.3
最高出力 56PS/11000rpm
最大トルク 4.0kg-m/9500rpm
燃料供給方式 PGM-FI
燃料タンク容量 18L
キャスター角/トレール 25度5分/90㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ296㎜ダブルディスク・φ240㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/60ZR17・160/60ZR17
DETAIL
RIDING POSITION
写真で見るとハンドルが低めに感じるが、グリップ位置がライダー寄りなので上半身の自由度が大きく、街乗りが楽でスポーツライディングでも無理のない姿勢が取れる。シート形状の工夫と張り出しのないサイドカバー形状で足着き性は250クラスと大差ない。
400ccスポーツほか、各カテゴリーのライバル比較ガイドを収録!