扱いやすさに加えて刺激的なパワーも増強!
スピードトリプルはトライアンフのスポーツネイキッドの元祖と言うべきモデル。近年はコンパクトでハイポテンシャルな弟分・ストリートトリプルシリーズのモデルチェンジが続いた感があるが、スピードトリプルも車体や足まわりの改良、エンジンのパワーアップを実施して、着実に進化し続けてきた。
こうした進化でキレのいい走りも身につけたが、基本的にスピードトリプルは扱いやすさが光るモデル。ストリートトリプルにはない、巨大なトルクが生み出すダッシュを魅力としてきており、最新スポーツNKたちのような、刺激的なパワー感という「スパイス」の点ではやや物足りない感もあった。
今回の新型スピードトリプルRSは、ライドバイワイヤーの採用をはじめ、エンジンドライバビリティに関わる制御系を完全電子制御化。あらゆるパーツが見直され、最高出力は10PSアップの150PS、もうライバルに引けは取らないスペックとなった。足回りは前後ともオーリンズ、タイヤはピレリのセミレーシングを履く。
これまで通り、ハンドリングは非常に素直。誰でも穏やかな気分で街中から峠道まで楽しめる。しかしこの新型、「本気」になったときの運動性がこれまでとはまるで違う。サスセッティングによって動的な状態での姿勢が変わったのだろう、従来モデルよりはるかに強力な旋回性能…寝かし込んでからの向きの変わり方が強烈になっているのだ。
パワーモード切り換えやトラクションコントロールなどのライディングアシストもフル装備された。「スポーツ」モードでもサーキット用の「トラック」モードでも非常に扱いやすく、応答が優しくリニアなパワーを発揮する。5000回転も回せば、このクラスではかなり深めのバンク角を活かした走りができるし、タイトな峠道でもパワーバンドの7500〜1万1000回転あたりを駆使できる。感激するほど扱いやすく、車体もそれによく応えてくれる。タイヤもサスも、荒れた路面にスゴく強いのがまたいい。加えて乗り心地も快適だ。
新型スピードトリプルRSは、CB1000RやMT-10などがライバル。個性的なルックスや使い勝手の良さ、動力性能の高さに加えて、上質で高級な足回りが光っている。もう以前のように「穏やかな走りが魅力…」とは紹介できない、元気な走りのスーパーネイキッドである。 (宮崎 敬一郎)
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 NA×775×1070㎜
ホイールベース 1445㎜
最低地上高/シート高 NA/825㎜
車両重量 189㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量 1050㏄
ボア×ストローク/圧縮比 79×71.4㎜/12.9
最高出力 150PS/10500rpm
最大トルク 11.9㎏-m/7150rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 15.5L
キャスター角/トレール量 22.9度/91.3㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前 φ320㎜ダブルディスク
後 φ255㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・190/55ZR17
DETAIL
RIDING POSITION(身長:176㎝・体重:68㎏)
足着きはこのクラスの中では平均的。車体が軽く、支えるのが楽なのも魅力。もっと高めのハンドルが付いていればより快適ではあるが、スポーツランを考えるとこのあたりがいい妥協点だろう。