妥協のない開発姿勢が高品質な製品を生み出す
ライダーにとって、重要な装備品であるヘルメット。
国内外、数多くのメーカーから発売されているが、その中でも最近注目が高まっているブランドが「Kabuto」である。軽量・コンパクトな帽体でありながら十分な安全性を確保し、コストパフォーマンスにも優れているとなれば、それも納得のいくところ。実際に街中で被っているユーザーを見ることも多いし、バイク用品販売店での売り場面積も増加しているようだ。また近年ではレーシングライダーや、サーキット走行を趣味で楽しむライダーの中にも、Kabutoのヘルメットを好んで使う人が増えてきている。超高速域で走るライダーたちに選ばれるということは、信頼性の高さを物語っているということでもある。そこでKabuto製ヘルメットの魅力をメーカーの開発者と、ヘビーユーザーであるレーシングライダーの言葉から探っていきたい。
ヘルメットに求められる要素は安全性や重量、使い勝手のよさ、デザイン性の高さ、コストパフォーマンスなどいくつもある。Kabutoはそれぞれの問題に対して真摯に取り組んでいるのだ。
「よくカブトのヘルメットは軽いと言われますが、それにはちゃんとした理由があります」と、語るのは、開発課課長の南 裕之さん。
「軽くする理由はライダーにかかる負担を軽減することですが、それは“安全”を追求した結果でもあるのです」
ヘルメットの一番の目的は、言うまでもなく「ライダーの頭部を守ること」である。それに必要な安全性能を確保するため、Kabutoではさまざまなトライを行なっている。まずは原材料。ヘルメットの大部分は樹脂であるが、単に樹脂と言っても種類は膨大。その中からヘルメットの場所によって使う樹脂を吟味している。言わば「適材適所」である。
「ヘルメットの安全性を確保するには単に硬いだけではダメなんです」
南さんいわく、衝撃を吸収するためにはしなやかさも必要なのだという。そのためコンピューターシミュレーションで強度を計算し、実際に形状になったものに対して衝撃吸収テストを行うなど二重三重の検証を行ない製品化していく。もちろん今までに蓄積されてきた多くの経験値やデータもそこに注がれている。
またKabutoは新しいことに対しても積極的だ。樹脂の世界は年々新しい素材が生み出されている。そこで登場した新しい材料をテストし、製品に活かせないかを常に検証しているという。
「実は形状も安全性に寄与しています。シェル表面に折り返したようなリブを設けると、強度を高めることができるのです」
シェルの形状を工夫することで安全性能を追求しているのだ。Kabuto製のヘルメットが独特のフォルムを持つ理由のひとつは安全性の向上のためでもあったのだ。
そして製品が完成すれば開発が終わりということではない。使用したユーザーの声や体験もデータとして蓄積され次の製品開発に活かされていく。そして極限状態で使用するプロライダーへのサポートもその一環である。
鈴鹿8時間耐久ロードレースに、BMW S1000RRで「BMWモトラッド 39チーム」から参戦した
酒井大作選手も熱心なKabutoユーザーの1人だ。
「僕はKabutoに絶大な信頼を寄せています。その理由は多くの経験に基づくもの。サーキットで転倒したときにヘルメットが衝撃をしなやかに吸収してくれるから頭が守られるんです。過去に大きな転倒を喫したことがあるんですが、その時の衝撃があまりに強烈で、後にヘルメットを見た関係者が“スネル規格の試験以上の衝撃だ”というほど。期せずして、生身でかなりの衝撃吸収テストをしてしまいました(笑)。それでも僕の頭にはダメージがなかった。退院して一番最初にKabutoにお礼に行きましたよ」
「僕にも家族がいますが、これらの経験から一般のライダーにもKabutoのヘルメットを勧めています。若者でもリターンライダーでも、バイクで走るときに怪我なく帰らなければいけないのは、ライダー全員に共通しているテーマですから。Kabutoのヘルメットは国内で開発していて、僕らライダーの意見もしっかりと聞いてくれ、すぐに製品に反映してくれる。安心、安全を十分に満たしていることを肌で感じています」
「レースで起きたことはエンドユーザーにも起きうることだと考えています。僕らの意見をすぐにフィードバックしてくれるKabutoのヘルメットは、(他メーカーと比べても)一歩先を行っていると思います。僕はツーリングに行くときもKabutoです。サーキットから一般道まですべてのライダーに自信を持ってお勧めできます」
信頼性の高さは国内にとどまらず、海外まで届いている。それを話してくれたのは鈴鹿8時間耐久レースで酒井大作選手のパートナーであるアレクサンダー・カドリン選手だ。オーストラリア出身の彼はKabutoのヘルメットに対し「軽くてフィット感が良い。シールドも見やすく、非常に使い勝手が良い」と高く評価する。
「新型が出るたびに良くなっているのを実感している」という彼の実家は、オーストラリアでバイクショップを営んでいる。そこでもKabutoのヘルメットを販売していて、着実にファンを増やしているのだという。
「我々は常にライダー目線で開発しています。トップライダーのシビアな意見はもちろん一般ユーザーの声も聞き、困りごとを解決するようにしています」
開発を担当している南さんは自信を持って語る。
Kabuto製ヘルメットには、特徴的なデザインに秘められた技術的な理由など、まだまだ魅力が秘められている。後半戦では同じく鈴鹿8耐を戦った秋吉耕佑 選手(au・Teluru MotoUP Racing Team)、浦本修充 選手(Team KAGAYAMA U.S.A.)、岡村光矩 選手(KRP SANYOKOGYO&RS-ITOH)の声を聞きながら、その本質に迫っていこう。
※「鈴鹿8耐での装着ライダーも増加中!「Kabuto」のヘルメットは何が違う? (後編)」へ続く
撮影/柴田直行