個性抜群のスタイルと爽快な走りが光る
スウェーデン語で「白い矢」を意味するヴィットピレン。ハスクバーナ社が1955年に発売し、そのシンプルなパッケージングと運動性能が高く評価された「シルバーピレン」を現代風に再現したストリートスポーツとして世界中で注目されている1台だ。
今回試乗したのは排気量375㏄のヴィットピレン401。日本国内では普通二輪免許で乗れる、流行のカフェレーサースタイルのモデル。車体から離れて景色と一緒に眺めても、近寄って様々な角度から観察しても実に個性的で、日本車はもちろん、ヨーロッパ車の中にあっても強烈な存在感を漂わせる。独特のデザインでスケール感が掴みにくいが、実際のサイズは250㏄ロードスポーツ車程度。車重も155㎏なので軽々と取り回せる。シート高は835㎜とリッタークラスのバイク並み。このクラスのモデルにしては着座位置が高いので慣れは必要になるが、コンパクトで軽い車体のおかげで、乗っていて不安に思うようなことはなかった。
着座位置の高さと低くセットされたセパレートハンドルで前傾度は深いが、ハンドルの絞り角と垂れ角が少ないので入力しやすく、腹筋と背筋を使ってハンドルに掛かる体重を減らしてやればヒラヒラと舞うように切り返せるし、ハンドルからフロントタイヤのグリップ状態がはっきり伝わってくるのでタイヤの能力を安心して引き出せる。
長いスイングアームを含めたリア回りの剛性は若干弱めの設定で、適度なしなりによってリアタイヤのトラクションを感じやすく、旋回性も良好。腰を引いて頭を下げ、スロットルオンでの二次旋回を意識すれば、まさに人車一体のコーナリングを楽しめる。ショートストローク設定の単気筒エンジンは低回転で粘るタイプではなく、6000〜1万回転で弾けるようなパンチ力が魅力。1速ならスロットルワークだけでフロントが高々と浮き上がる力強さを備えている。反面、6速・3500回転以下ではギクシャクするが、60㎞/hを超えると振動が減り、高速道路クルージングも苦にならない。
誰もが振り返るスタイリングがヴィットピレンの大きな魅力なのは間違いないが、洒落たストリートコミューターというだけでは勿体ない。ミニサーキットやワインディングで爽快に走りを楽しんだ後、コーヒーでも飲みながら愛車を眺めて悦に入る、といった付き合い方も似合いそうだ。
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 NA
ホイールベース 1335㎜
シート高 835㎜
車両重量 155kg
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量 373㏄
ボア×ストローク/圧縮比 89×60㎜/12.6
最高出力 42PS/9000rpm
最大トルク 3.8㎏-m/6750rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 約9.5L
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ320㎜ディスク・φ230㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 110/70R17・150/60R17
DETAIL
RIDING POSITION(身長:176㎝・体重:62㎏)
低く手前側にセットされたハンドルによってフロントフォークの延長線上よりも前に頭が位置する独特のポジション。シートが高いので足着き性は良くないが、車重が軽いので不安はない。
PHOTO:森 浩輔、赤松 孝
ハスクバーナ 公式サイト