ハイレベルに仕上がった足回りが安心感を生み出す

MTー09はかなりアクの強いスタンダードスポーツだ。唸るように回る3気筒エンジンは、滑らかさと爆発的な瞬発力を併せ持つ。スペックでいうと最高出力116PSほどだが、常にトルクの乗った腰のあるパワーだ。

画像: 最高出力:116PS/10000rpm 最大トルク:8.9㎏-m/8500rpm 価格:111万2400円 発売:2018年3月20 www.yamaha-motor.co.jp

最高出力:116PS/10000rpm
最大トルク:8.9㎏-m/8500rpm
価格:111万2400円
発売:2018年3月20

www.yamaha-motor.co.jp

3種類から選べる「Dモード」は、穏やかなレスポンスタッチの「STD」のほか、使い勝手のいい、リニアで柔軟なバワーを発揮する「B」もあるし、レスポンスとパワーの立ち上がり方が敏感な「A」を選択すればとんでもないじゃじゃ馬にもなる。

画像: コンパクトな液晶メーターの基本デザインはスタンダードと共通。スタンダードが通常の液晶なのに対し、SPでは反転液晶が採用された。

コンパクトな液晶メーターの基本デザインはスタンダードと共通。スタンダードが通常の液晶なのに対し、SPでは反転液晶が採用された。

車体は非常にスリムで軽いのが特徴。シートは高めだが足着きはいいし、取り回しは400ラスを扱っているような軽さだ。

画像: シート、タンクサイドの造形はヒトの身体にぴったりと添うもの。ヒザにゆとりがあって上体も起きたポジションで楽だが、シート前があまりに狭いためか、減速時などで腰が前に滑り気味。 身長:176㎝体重:68㎏

シート、タンクサイドの造形はヒトの身体にぴったりと添うもの。ヒザにゆとりがあって上体も起きたポジションで楽だが、シート前があまりに狭いためか、減速時などで腰が前に滑り気味。
身長:176㎝体重:68㎏

スタンダードの足回りは良くも悪くも個性的な味付けで、バネも減衰力も非常にソフト。ストリートから高速道路まで、乗り心地はかなりいいが、スポーティなペースでコーナリングするときにはピッチングが大きくなる。それを使ってモタードバイク的なドリフトライディングに持ち込めればいいが、一般ライダーにとっては荒れた路面でトラクションが抜けやすい足回りとなってしまう。しかも、そう感じるようになるのは、かなりペースを上げてから。万能スタンダードバイクだが、内側には強烈な乱暴者の顔を隠し持っている。まるでジキルとハイドだ。

そこで今回取り上げるこのSPの登場だ。主な違いはサスペンション。フロントにはKYBのフルアジャスタブルフォーク。リアにはリザーバータンク付きフルアジャスタブルのオーリンズをおごっている。また、他にもクイックシフターや、一部装備に手直しも受けている。

画像: SPのリアサスはオーリンズ製に変更。減衰力は伸側30段階・圧側20段階という細かいセッティングが可能なものとなっている。

SPのリアサスはオーリンズ製に変更。減衰力は伸側30段階・圧側20段階という細かいセッティングが可能なものとなっている。

走ってみた感触は全くの別物だった。もう、スタンダードの、雲の上を走るようなソフトな乗り心地ではない。路面からの衝撃を確実にハンドルやシートに伝える感じ。コーナリング中の接地力もスゴい。バンク中、車体が跳ねてしまうほどの荒れに遭遇しても、SPは滑らない。波状に荒れた路面でもしぶとくへばりつく。もともと強力な旋回性を持つが、旋回力の立ち上がりがダイレクトになっており、ハンドリングもキレる。

乗り心地の硬さはイニシャル調整でかなり低減できるし、イニシャルを抜いてもスタンダードのように滑ることはない。やはりサスそのものの動きが違う。スポーティな走りを楽しみたいライダーだけではなく、一般ライダーでも、このSPは魅力的だし、なにより安心だと思う。

                              (宮崎 敬一郎)

SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高 2075×815×1120㎜
ホイールベース 1440㎜
最低地上高 135㎜
シート高 820㎜
車両重量 193㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量 845㏄
ボア×ストローク 78×59㎜
圧縮比/最高出力 11.5/116PS/10000rpm
最大トルク 8.9㎏-m/8500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 14L
キャスター角/トレール 25度/103㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ298㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17

DETAIL

画像: クロスプレーンコンセプトに基づいて開発された845㏄水冷並列3気筒エンジン。3気筒らしいフィーリングと力強さは初代から受け継がれる。

クロスプレーンコンセプトに基づいて開発された845㏄水冷並列3気筒エンジン。3気筒らしいフィーリングと力強さは初代から受け継がれる。

画像: SP専用のKYB製倒立フォークは、圧側減衰力が高速・低速を独立して調整可能。トップキャップには車名がレーザー刻印される。

SP専用のKYB製倒立フォークは、圧側減衰力が高速・低速を独立して調整可能。トップキャップには車名がレーザー刻印される。

画像: シフト操作を検知するとエンジンを制御して駆動トルクを瞬間的に抜き、シフトアップをサポートするクイックシフターは引き続き採用。

シフト操作を検知するとエンジンを制御して駆動トルクを瞬間的に抜き、シフトアップをサポートするクイックシフターは引き続き採用。

画像: フローティング風懸架のLED4灯ヘッドランプを採用した、個性的で軽快なデザインのフロントマスクは引き続き採用されている。

フローティング風懸架のLED4灯ヘッドランプを採用した、個性的で軽快なデザインのフロントマスクは引き続き採用されている。

画像: SP専用シートは、上質な表皮とダブルステッチがスポーティな雰囲気。クッション形状を見直して優れたフィット性も実現した。

SP専用シートは、上質な表皮とダブルステッチがスポーティな雰囲気。クッション形状を見直して優れたフィット性も実現した。

画像: 軽快感あふれるテールカウル最後部のコンパクトなLEDテールランプ。立体感のあるデザインで、上から見ると「M」字形状になっている。

軽快感あふれるテールカウル最後部のコンパクトなLEDテールランプ。立体感のあるデザインで、上から見ると「M」字形状になっている。

THE FUTURE OF MT-09

MT-09の登場以降、その派生モデルとして、ヘリテイジスポーツのXSR900や、アドベンチャーツアラーのトレーサー900が登場してきた。そして今年、発売される予定のニューモデル“ナイケン”もそうだ。2015年の東京モーターショー、3輪ならではの優れた安定性と2輪的な運動性能を両立させる、トリシティにも採用されたLMW機構を採用した3輪スポーツモデルコンセプト・MWT-9として誕生。昨年の東京モーターショーではナイケンとして、市販予定と発表され世界から注目されたのは記憶に新しい。そんな新世代モデルの心臓に、MT-09系の水冷並列3気筒が収まっていることでも分かるように、今やMT-09ファミリーはヤマハを支える大きな柱なのだ。

画像: NIKEN(2018) 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 847㏄ 115PS/10000rpm 8.9㎏-m/8500rpm 263㎏ / 18L / 820㎜ 120/70R15・190/55R17

NIKEN(2018)
水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
847㏄
115PS/10000rpm
8.9㎏-m/8500rpm
263㎏ / 18L / 820㎜
120/70R15・190/55R17

YAMAHA 公式サイト

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