長時間エンデューロで武器になる乗りやすさの進化
ハのモトクロス用競技モデルの証。しかし、今回紹介するモデルは、FXと後ろに続く。そう、これはモトクロッサーでありながら、モトクロス用バイクではない。ターゲットはクロスカントリー用のレーシングバイクだ。
クロスカントリーとはアメリカで人気のレースで、様々なオフロードエリアを長時間走る競技。日本でいうエンデューロだ。そのレース用に、YZをベースにアレンジしたモデル。スプリントマシンをエンデュランス用にしたものだと思っていい。
そのYZ450FXがフルモデルチェンジした。狙いはズバリ、乗りやすさの追求だ。
長距離系のレースでも、いまやレース内容はスプリント的になっている。それはオンロードもオフロードも同じ。だからマシンはパワフルさを求められるが、それだけではライダーが長時間のライディングに耐えられないから、乗りやすさも重要になる。
今回フルモデルチェンジした450FXは、フレーム、サスペンション、全てが乗りやすい方向になっていた。内に秘めるパワーと強度はそのままに、雰囲気を柔らかくすることで、その力を意識させないようになっている。だから、ライダーがそのパワーに振り回され「にくい」。もっとも、そう感じるのは、450㏄のモトクロッサーに乗り慣れた人だけかもしれない。 ただ、インターフェースも含めて、その間口を広げているのは確か。セルが標準装備になって、リスタートが容易になったのはとてもユーザーフレンドリーだ。
さらに、スマホからエンジン特性を変更できるアプリ「パワーチューナー」で、より簡単にセッティングできるようになった。もともと、FXは2タイプのエンジン特性をコンデイションに合わせて選べるが、これを使えばもっと高回転域をパワフルに、などの細かい変更も簡単。
しかも、その変更幅はかなり広く、うまくいじればオリジナルセッティングもできる。それも簡単に。こういうアイテムは公道向けのオートバイではそうそう見ない。レーサーだからこそ、と言えるものだ。
YZ450FXは「本物」のレーサーなので、乗るにはある程度の技量は必要かもしれないが、身構えるほどじゃじゃ馬ではない。パワーチューナーを駆使して、うまく「飼い慣らす」のも面白いと思う
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2175×825×1270㎜
ホイールベース 1480㎜
シート高 955㎜
最低地上高 320㎜
車両重量 116㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
総排気量 449㏄
ボア×ストローク 97×60.8㎜
圧縮比 12.8
最高出力 NA
最大トルク NA
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 8.2L
キャスター角/トレール 27度10分/116㎜
変速機形式 5速リターン
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 80/100-21・120/90-18
DETAIL
撮影/柴田直行